優勝は誰の手に?
私が差し掛かった最後のL字直線は、全長1.5kmで途中で90度に折れ曲がってゴールへと繋がる、このレースで1番スピードが出せるポイントだ。
今まではカーブとかが多くて時速140kmは出せなかったけど、この直線コースなら!
「エンジン全開!いっくよー!!」
私はハンドルを捻り、魔力を更に流し込んで出力を上げた。
ギュィィィイイイイイイイイインッ!!!
ケッテンクラートの音がエンジン音から魔動音に切り替わった。
エンジンが全力モードに切り替わった証拠だ。
「全!速!前!進ッ!」
ギュルルルァァアアアアッ!!
「うぐっ!!」
ケッテンクラートは一瞬で時速70kmから140kmまで加速し、私の体が慣性で座席に押し付けられる。
けど!そんなことはどうでもいいっ!!
全力で操縦しなきゃコースアウトしてしまうっ!
·····わけないんだけどね?自動操縦あるし。
ほら、そこは雰囲気よ。
「いやー、やっぱり急加速のGはサイコーだなぁ」
前世では飛行機が離陸するときのあの加速が大好きだったし、ジェットコースターもよく乗ってたからねっ☆
·····彼女居なかったから1人でいってたけど。
「って悠長に思い出に浸ってる暇無い!」
モニターの計算によると時速140kmで走行した場合、第1ストレート(800m)なら20秒ほどで通過してしまうと表示されてる。
元々そんなスピードの出ない魔動車や馬を走らせてたコースというだけあって、時速140kmで走るには手狭だ。
っていうか最終カーブがもう目の前にある。
「まぁぁあがれぇぇえええええっ!!」
パシュッ
ガギャンッ!!
私はとっておきのカーブ方法、通称『戦艦ドリフト』をするため、魔法のアンカーを射出して空中に固定した。
そう、先輩と初めてレースした時のアレの再来だ。
私のケッテンクラートはハリボテじゃない、だからカーブくらい曲がりきるなんてら造作もない事のはずだっ!!
·····くる!
ギャインッ!
「ふぎゅっ!?」
ギャリギャリギャリギャリィッ!!!
カーブ直前で魔力の鎖がピンッと伸び切り、これ以上進めなくなった事で、ケッテンクラートの車体とアンカーと鎖により等速円運動が発動してカーブでも最低限の減速で曲がりきった。
しかし、その時の衝撃は凄まじく、私の体はケッテンクラートの操縦席から投げ出され、操縦席の縁で物干し竿に引っ掛けた布団みたいな状態になってしまった。
しかもズルズルとずり落ち始めてる。
うわ怖っ!!時速140kmで動く地面が迫ってくるのめっちゃ怖っ!!
「ふぬぁぁぁぁあああっ!!唸れ私の腹筋ーー!!突っ走れケッテンクラートぉぉおお!」
私は普段から鍛えてた己の腹筋を信じ、全力で海老反り····· あれ?海老反りなら背筋じゃね?
「·····やばぃぃぃいいいいっ!!もみじおろしになっちゃぅぅぅぅうううううっ!!!」
ヤバい、足になんか引っ掛け····· あった!!
私は普通に座ってたら股の間にあるギアハンドルを足で挟んで何とか耐え·····
よし!ギア挟めたっ!!
後は戻って·····
ガコンッ
「·····やべっ」
無事に席に座れたけど。ギアがヤバい所に入った感じしたわ。
《警告》
『6速に切り替わります』
「ふぎゃー!!やっぱりぃぃいいいっ!!」
6速、これは私が悪ふざけで作った裏モードだ。
最高時速は無い、というか速度リミッターをはずした、魔法で無理やり進むモードだ。
魔力さえ流せば音速も超えて『飛べる』モードだ。
そして私は力んでたから·····
っどぉぉぉぉおおおおんっ!!!
「あばばばばばばばばばっ!!?」
その日
私は魔動車で空を飛んだ世界初の女となった
◇
〜時はソフィが直線に差し掛かるちょっと前に戻る〜
『ソフィ選手とサンドラ選手がデットヒートを繰り広げたまま、最後のL字直線に差し掛かりました!』
『『うおぁぁぁぁあああ!!』』
誰も見たことが無いような、異次元の戦いに観客は熱狂していた。
何せ魔動車はついさっきまで世界最高記録が瞬間だが時速35km、平均時速15kmくらいの速度の物だったのだから。
だが、目の前で繰り広げられているのは世界最高記録の倍、なんと時速70kmの激戦だ。
更に、激戦を繰り広げているのは同じチーム、それも魔動車大会でトップクラスの人気を誇る『マグウェル魔法学校 魔動車部』の2台だ。
しかもこの2台は去年から全く姿を変えており、馬車を無理やり改造した車体から、奇妙だが洗練された形状へと変化していた。
『凄い!凄すぎる!!これが魔動車の将来の姿なのだろうか!?これが世界を駆け回る日が来るのか!?』
爆音を轟かせながら拮抗する2台の魔動車は直線コースに差し掛かり·····
『はっ!?加速!加速しています!ソフィ選手が乗るケッテンクラートIIがさらに加速!!』
『『うおおおおおっ!?!?』』
なんと、カーキ色の奇妙な形の魔動車『ケッテンクラートII』が観客人気トップのワイルドキャッツの後継機『ワイルドキャッツ2』を追い抜き、更に加速し始めたではないか。
『そ、速報!学者の計算によると·····はぁ!?時速140km!?計算間違いじゃねぇか?えっマジ!?』
カーキ色の魔動車は前人未到の、足が速いと言われるサラマンダーよりずっと速い、時速140kmで直線を突き進み·····
『あーっと!ソフィ選手、カーブに差し掛かるというのに速度を落としません!このままでは曲がりきれずにコースアウト····· おいソフィ選手!速度を落とせ!その速度でクラッシュすると危な
ガギャンッ!!
ギャインッ!!
ギャリギャリギャリギャリィッ!!!
『ま、曲がったァァァァァアアア!!ソフィ選手曲がり切り····· うわ!?やっぱり無理だった!ソフィ選手の体が外に投げ出されている!救護班!助けに向かえ!!』
何らかの方法でカーブを強制的に曲がりきったソフィとケッテンクラートIIだったが、ソフィが耐えきれずに車体の外に放り出されてしまった
·····が
「ふぬぁぁぁぁあああっ!!唸れ私の腹筋ーー!!突っ走れケッテンクラートぉぉおお!」
しかし、ソフィ選手は速度を落とすとごろか加速していき、本人は全力で海老反りして体を起こして運転席へと戻ろうともがいていた。
「·····やばぃぃぃいいいいっ!!もみじおろしになっちゃぅぅぅぅうううううっ!!!」
が、何かに気がついた顔をした後、意味不明な事を喋りながら大暴れした。
『大丈夫ですかソフィ選手·····おっと!?何かのレバーを足で挟んで起き上がって無事に運転席に戻
ガコンッ
「やべっ」
っどぉぉぉぉおおおおんっ!!!
「あばばばばばばばばばっ!?」
『更に加速ぅぅうう!?!?速い!ソフィ選手!なんと最後の最後で更に加速したー!!』
『『ウォォォォオアアアアアァァァアアアッ!!』』
観客のボルテージが最高潮に達し、ソフィ選手とケッテンクラートIIは大会記録をめちゃくちゃに荒らしながら、時速334kmでゴールラインへと突撃し·····
『ゴォォォォオオオオオオオルッ!!ソフィ選手!なんと大会記録を全て塗り替えトップでゴールしました!凄い!凄すぎるぅぅうう!!!』
『『ーーーーーーーーーーーーーーーッ!!』』
観客席から最早言語化不可能な程の歓声が上がって空気が震えた。
·····が、ソフィ選手の様子がおかしい。
『ソフィ選手?ゴールしましたよ?スピードを下げてくださ····· 止まれぇぇえええ!クラッシュするぞ!』
ソフィ選手の乗るケッテンクラートIIはスピードを落とさず、そのまま直進していた。
そして·····
「みぎゃぁぁぁぁぁああああああっっっ!!?」
『と、翔んだァァァァアアァ!!!!?』
たまたま置かれていたパフォーマンス用のジャンプ台へ突っ込み、ジャンプ台を粉砕しながら空へと飛んで、そのままコースの外へと消えていった。
『··········は?嘘だろおい·····』
『『··········』』
さすがにこれには観客も絶句し、会場が驚くほど静かになった。
「っしゃー!!2位でゴールだぜッ!!·····おい!声援は!?アレには及ばねぇけどオレも大会記録を塗り替える記録だぞ!?おーーい!!反応しろー!!」
『あ、サンドラ選手ゴールです!ってサンドラ選手も速い!3位と大きく差を広げてゴールしました!』
『『うぉおおおおお!!!』』
「やっと反応した·····っしゃあ!!これで総合優勝間違いナシだぜっ!!」
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:12歳
ひと言コメント
《現在行方不明です》
名前:アニー・サンドラ
年齢:16歳
ひと言コメント
「あれ?後輩ちゃんどこいった?」
名前:校長先生
年齢:17歳だけど老けそうになってる
ひと言コメント
《大会本部から呼び出しを食らっています》




