男は3度死ぬ、生物として、ヒトとして、男として
『I/You can(not) Redo』
「あぁ疲れた!帰ってゲームでもしよ·····」
20XX年 3月26日
どこにでもいるただの微ブラック企業の会社員藤石 賢人は、会社で己に課せられた割と簡単だけどクソ多い業務を何とか終わらせ、帰宅の途についていた。
「はぁ、従兄弟が羨ましい、最近ガールフレンドが出来て、しかも大学生なのに日本各地へ旅行に行きまくってるとか羨ましい····· 俺なんか27になってまだ彼女も居ないしそういう相手だって·····」
この仕事は給料も割と良く、安くて良いマンションも借りれ、最低でも週に1度は確実に休みが貰え、職場内の人間関係も良好だ。
まぁ出世とは無縁でいつまで経っても普通のサラリーマンなんだけどな。
しかも良くも悪くもない仕事だけど仕事量は多く、そのせいでストレスも微妙に蓄積し続け、親族の朗報などで更にストレスが溜まっていた。
今もこうしてストレスのせいで愚痴を漏らしながら自宅へと向かっていた。
「はぁ····· こういうストレスが溜まった時は寝るのが1番だ、あー温泉でも行きてぇ·····」
まぁ温泉なんて年に一度行けたらいい方でそんなの無理だ。
だからさっさと帰って布団に飛び込もうと歩く速度を上げて横断歩道を渡り始めた。
·····が、それは道半ばで中断させられた。
派手に光り輝く電飾に彩られた鉄の塊によって。
◇
ふむ、どうやら俺は道路を横断中にゴテゴテに装飾されたデコトラに跳ねられたようだ。
ん?
今どうなってるんだって?
ははは、右半身の骨が砕けた激痛を感じながら、戦艦の主砲から放たれた砲弾が如く吹き飛ばされている最中さ。
そしてそのままの勢いで道路沿いの店にシュート!
超☆エキサイティンッ!!
「ふぶっ!?ぶはっ!?」
店に飛び込んだ次の瞬間、カラフルな布が俺の顔に····· いや、俺がカラフルな布の束の中に突っ込んだようだ。
だがヒラヒラした軽い布程度では勢いは落ちずにそのまま俺はぶっ飛び、一際大きく分厚い布、多分カーテンの隙間をスポッと通り抜け小さな小部屋の壁に激突してようやく止まった。
それと同時に俺の全身から経験もしたことが無いような激痛が走った。
「かはっ!?いっっッ!!?」
仰向けに倒れた俺の口から血液が吹き出した。
どうやら肺に肋骨が刺さっているようだ。
だが『生きている』、そう、俺は生きていた。
勢いを殺すには弱い大量の布がクッションとなり奇跡的に一命を取り留めたのだ。
「は、はははっ!!いぎでる!」
助かった。
俺は異世界直葬トラックに勝ったんだッ!
「がほっ、ぐぶっ、ごごは、どごだ?」
辺りを見渡すと、どうやらここはひび割れた鏡のある小部屋のようだ。
まぁひび割れを作ったのは多分俺だけど。
だってひび割れの中心にがっつり血ついてるし。
右手は·····動かない、左手は····· なんとか持ち上がったようだ。
そして左手の先に辛うじて付いているバキバキに折れた指に、俺を助けた布切れが引っかかっていた。
「ご、ごれば、パンツ·····?」
なんと指に引っかかっていたのは俺には一生縁が無いと思っていたオシャレな女性用下着だった。
どうやら、俺は女性用下着の店に不可抗力で入店してしまったようだ。
って事は、飛び込んだここは試着室だよな?
そして、カーテンが閉まってたって事は·····
視線を感じ、そちらに向くと、指にかかっているのとよく似た下着を身に着けた女性が居た。
つまり今俺はダイレクト覗き魔って訳だ。
血まみれのド変態って所か?
さて、突然だがここで問題、俺は彼女になんと言うべきか?
謝る?褒める?それとも現実は非情で救急車より早く警察呼ばれちゃう?
正解は·····
「あ、よく似合ってますよ(スマイル)」
「へ、へっ、変態っ!!!」
「あっごめんなさ····· いや、今蹴られるとマジで死、ウボァッッッ!!!?」
俺は女性に挨拶すると、女性は悲鳴をあげて片足を後ろに下げ·····
そして、女性の渾身のキックが瀕死の俺の股間にめり込んだ。
俺は自身が生物的にも社会的にも男としても死んでいくのを感じながら意識を手放し·····
このクソみてぇな人生を終えた。
◇
ここは·····
どこだ·····?
「おめでとうございます!貴方は『第3512450721回天界クソみたいな死に方グランプリ決定戦』で見事優勝を獲得しました!」
·····は?
「いや!だから!『第3512450721回天界クソみたいな死に方グランプリ決て」
いやいやいやいやいやいやいやいや!!!なに!?色々状況が呑み込めないけど!というかなんだよそのクソみたいなグランプリ!!
というかアンタ誰!?状況的にたぶん女神?
「ちーがーいーまーすー!『第3512450721回天界クソみたいな死に方グランプリ決定戦』ですよ!!」
なんだよそのクソみたいなグランプリは·····
「賢人さん!『死に方』が抜け、ブッフォww」
このクソ女神ガァァァアア!!
『死に方』で思い出し笑いしやがったな!!
というか、コイツさりげなく俺の心を読みやがってるな!?
「す、すいませ、ぶふっ!あっいやっ、その、頭にパンんぶっぶふっwwww」
頭に手をやると、ヒラヒラした布が載っている事に気がついた。
うん、さっきの店で売ってた女性モノの下着ですね。
「·····てめーコノヤロウ!!人の不幸を笑って遊ぶとかテメェら神じゃねぇだろ!!悪魔だ!悪魔共め!!」
手に取った下着を地面に投げつけ俺はブチ切れた。
「いやwwwそのっwww私はこの世界で1番偉そうな神でしてwwwあーおっかしwww」
·····もういい、早く成仏させてくれ、俺は生物的にも社会的にも死んで疲れてるんだ、はぁ、来世はこんな事にならない人生が良いな·····
「いや、成仏させてるならとっくに魂の洗濯機にぶち込んで魂を漂白してますよ!そう、まるでトラックに跳ねられて更衣室に飛び込んだ賢人さんみたいに、洗濯機にパンツを投げ込むが如くブフォwwwんぐふっんぶっうははははははは!!!はひッはッヒィwwwやめてください賢人さんwww神を思い出し笑いで殺すなんてwww」
死んでも化けて出てきてお前をブン殴ってやろうか?
「いやwwwもう死んでまずぐぺっ!?」
思い出し笑いで腹が捩れているクソ女神にキレて殴りかかろうとしたが·····
『何やってるんだよこのバカッ!!』
俺の代わりに、好青年って感じの神様がゲラ女神に鉄槌を振り下ろしてくれた。
うわぁ·····
頭にマンガみたいなタンコブが出来て、しかも煙が上がってるぜ·····
ざまぁみろ!!!
『いや、ごめんね?えーっと····· 俺の妻のガイアが、普段は一応マジメなんだけど笑いのツボが浅くて·····』
·····ガイア?妻?ってことはこの可愛らしい好青年はウラヌス?
『おぉ·····よく分かったね、ぼk·····俺はウラヌスだよ』
すげぇ····· いやちょっとだけ神話を調べた事があったので知ってただけなんですが····· ところで、何で俺はここに居るんですか?
『それは本当はガイアが説明するはずだったんだけどね、どうやら君の死に方がツボにどハマりしちゃったみたいなんだ····· だから見兼ねて俺が出てきたんだ、ガイアに代わって俺が謝らせてもらうよ、ごめんなさい賢人さん』
そっすか·····
◇
腹が捩れて会話にならない女神ガイアに代わって出てきたウラヌス様による説明によると
・俺の死に方天界の暇つぶし大会で見事グランプリを、それも近年では最高レベルの評価を得て優勝したのは事実。
・その報酬として転生の権利を与える。
・ちなみにガイアが激推しして優勝したらしい。
・ガイアが散々バカにして申し訳ないので、大地の女神ガイアの名において可能な限りの願いを叶える。(後始末はコイツに押し付けるから無理言って構わないとの事)
という理由だったそうだ。
「じゃあもう一度人生をやり直せるって事ですか?」
『そうだね、でも元の世界には戻せないから異世界に送るよ、そこら辺に関しては好きな条件を言ってくれて構わないけど、どうする?』
へぇ·····
正にテンプレ通りな展開だ。
それも好きな条件をくれるチート物のパターンだ。
でもちゃんと考えないとロクな目に遭わない、漫画・アニメオタクの俺の経験則だ。
·····よし決めた。
「·····1つ目、肉体と立場と男として3回も死んだのでもう死にたくないです、なのでそこら辺は何とかなりませんか?」
『ちょっと待って····· よし、不老不死は無理だけど別の方法でなら可能っぽい、それでもいいかな?』
「死なないなら何でもOKです、あとは異世界転生でスローライフ、のんびりと悠々自適に暮らしたいので移動や能力に困らないように出来ますか?魔法とかも使ってみたいんですが·····」
『ふんふん····· じゃあ魔法に対する適性を付与して魔力も付与しといてあげるね』
「ありがとうございます!じゃああとは身分ですけど、身分はそこそこ高いけど跡継ぎとかそういう面倒事は嫌いなので貴族とかの次男にしてください」
『次男は難しいかな·····よし、こんなのはどう?』
ウラヌス様はそう言うと、3つの選択肢を提示してきた。
候補1
王族の子供、メイドとの子なのでしがらみは少なくお金も沢山あり王宮魔導師から魔法を学べる、しかも存在感を消せるので城からも自由に逃げ出せる。
候補2
伝説の魔導師の家系の貴族の子供、魔法適性は非常に高く裕福で割と好き勝手できる立場の子供。
候補3
鉱業で栄えた小さい町の町長の子供、両親の能力は高くないので追加で転生ボーナスを付ける。
俺はしばし考えをめぐらせ、結論を出した。
「じゃあ3でお願い致します····· あと世界征服とか悪意を持った虐殺とかは絶対にしないので、オマケで馬鹿みたいな量の魔力と、魔法を自由に創ったり操る能力でお願いできます?」
自由に魔法を作って自由に使えるのは魅力的だからな、出来れば必須というレベルで欲しい。
『·····ガイアに色々押し付ければ可能だけど、それでも魔力の数値を上げると体力が····· いや、君なら問題無いかな?それも付けといてあげるよ』
「ありがとうございます!後は特に希望は無いですので、これでお願いします!」
元々鉱物が好きだったので、鉱山近くの町でスローライフ出来るなら万々歳だ。
しかもほぼ無制限の魔法が使えるなんてサイコーだ。
『では、これで向こうの世界に君を····· と、その前に、ステータス管理とか██████████にアクセスしたときのインターフェースを、君が生前やってたゲームのGUIとかコンピュータのOSっぽくしておいたよ、慣れ親しんだ形だったら使いやすいだろうからね、あとステータスとかを見れて検索とか色々な機能を使えるようにしておいたから、是非使ってほしいかな』
うん?なんか一部聞き取れなかったけど何だろうか·····
まぁいいか、後でわかるだろうし。
「おおぉ·····!何から何までありがとうございます!」
『いや、いい、ぼk····· 俺も君の人生が酷····· 死に方が面白····· 可哀想····· いや、えーっと····· 哀れだと同情したからさ、餞別とでも思って欲しいな、じゃあ早速異世界に送るね』
この人もかよ、まぁ、この人はいい神様っぽいし構わないけどさ?
でも笑うのは酷くない?俺の大事な息子が死んだんだぜ?·····まて、そういえばウラヌス様って神話だと俺と同じでアソコを·····
あぁ、だから同情って·····
なんて考えていると、全身が白い光に包まれて崩壊しはじめた。
どうやら転生の時が来たようだ。
心地よい光に包まれ意識が消え始めたとき、口から愚痴が漏れ出た。
「来世は下着店に突っ込んで社会的に死ぬような事がありませんように·····」
すると床で笑い転げていたあのクソ女神がムクリと起き上がったのが視界の端に映り、俺に向けて口角を三日月のように上げたウザい笑みを浮かべながら何か語りかけてきやがった。
「その心配は無いブフォッwwですよww だって賢人さん·····」
·····ん?
「だってタマが蹴り潰されて無くなったから女の子確定ですよ!www 今度は突っ込む·····あっ!色んな意味で突っ込まれる側でブッフォォwww あっそうだ!女の子だからさっき頭に載ってたパンツいります?んひひふふほふへッwwwふひーっほひーっwwwイヒーッwwwお腹痛いッwwwイヒヒィーーッwwww」
そんな反省の『は』もHanselの『H』さえも····· いや下ネタだからHくらいはありそうなことをほざきやがったクソ女神が、俺の足元に件のパンツを投げ込んできやがった。
怒り狂った俺は文句を言おうとしたが、既に体はキラキラと消滅していて声がほとんど出せなかった。
しかし、それでも俺はなんとか言葉を紡ぎ·····
「ふっ····· ガイ·····アさ、まよぉ····· さい、ご·····に、自爆、した····· な、ざまぁ!みやがれ!!!」
『えっ?何を·····』
アイツが何かを言おうとしたが、それを全て聞く前に俺は白い光に覆われてしまった。
白い光に完全に覆われる直前に見えたのは、クソ女神に対して憤怒の顔になったウラヌス様の顔だった。
ご愁傷さま、ガイア様。
後は任せました、ウラヌス様!
さよなら俺の居た世界!初めまして異世界!
そして、俺の意識は薄れて行き·····
·····ん?まて!女の子って!?ちょっ!!
転生直前でヤベェ事に気がついてしまったが、俺の意識は為す術もなくそこで完全に途切れてしまった。
キャラ紹介
【主人公】
旧名:藤石 賢人
転生後の名前:████・█████
年齢:-1歳(死亡時27歳)
性別:女(元男)
所持品:世界を超えた伝説のパンツ(ランク:不明)
名前:ガイア?
ひと言コメント
「あいたたた····· 殴られた····· そこまでやらなくてもいいじゃん」
名前:ウラヌス?
ひと言コメント
「·····やりすぎ、というか僕は賢人さんと違ってまだちゃんと付いてるからね?」
お読みいただき、ありがとうございます
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更新頻度がえげつないですがAI生成ではありません。
ストックが1000話ほどあるのでめちゃくちゃ早いだけです。
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