第2章一話 新しい日常と、倒れていた少年
今回より2章の連載を始めますこれからもよろしくお願いします
あの戦いから、数ヶ月の月日が流れた。
国としての復興はすでに終わっている。けれど、国民の心に残る不安は、まだ完全には消えていなかった。
だからこそ、王たちは全力でこの状況を打破しようと奮闘している。
兄貴もその一人だ。今はノイルさんと一緒に、あの国をもっと良くするため、日々さまざまな案を出し合っているらしい。
ライガとエレナさんは、騎士団で変わらず頑張っている。
エレナさんは騎士団長に、そしてこの前の功績が認められ、ライガは騎士団長補佐になっていた。
さらにルビが副団長補佐に任命され、みんなでその昇進を喜び合った。
――みんな、それぞれの幸せを、今しっかりと噛みしめている。
そして、僕とアンシャはというと。
ずっと夢だった花屋を、ついに開業することができた。
店はありがたいことに大繁盛で、一人では回らないほどだ。だからアンシャがいつも手伝ってくれている。
それだけじゃない。
僕は今も、何でも屋の仕事を続けている。
でも、あの戦いをきっかけに僕の存在が世界中に知れ渡ってしまい、全国から依頼が絶えなくなってしまった。
だから、できる時に少しずつ、各地を回って手助けをしている。
――もう一人の僕は、今は大人しくしてくれている。
たまに心の中から話しかけてくるけど、本当にごくたまにだ。最近は、ほとんど声を聞いていない。
それでも思う。
僕も、そしてみんなも――今はちゃんと幸せを手に入れることができたんだって。
そんな、ある日のことだった。
店を開けようと、いつものように店の近くまで行くと、
店の目の前に――倒れている子供の姿があった。
慌てて駆け寄ると、気を失っている。
髪は黒く、背丈の小さい男の子だった。
抱き起こそうとした、その時。
ふと、目に入った。
その細い腕には、殴られたような青あざがいくつも残っていて、
服の隙間から覗く肌には――切り刻まれたかのような傷跡が、無数に刻まれていた。
胸の奥が、ひやりと冷たくなる。
この子は、ただ倒れていただけじゃない。
――逃げてきたんだ。
僕はその子を抱きかかえ、急いで家へ走った。
家に着くと、アンシャが驚いた顔で言った。
「どうしたの?」
事情を話し、男の子を見せると、アンシャは血相を変えて言った。
「ベッドに連れて行ってあげて!」
僕は男の子をベッドへ運び、様子を見ようとした。
するとアンシャが、
「私がここで看病するから。蓮はカイルさんを呼んできて」
そう言ってくれた。
僕はすぐに走り、カイルさんの部屋へ向かった。
「どうした?」
そう聞かれたので事情を説明すると、
「わかった。俺も一緒に行こう」
そう言ってくれて、二人で家へ戻った。
部屋に入ると、アンシャが男の子の看病をしていた。
僕たちを見るなり、
「こっちです」
と案内してくれる。
男の子は、呼吸はしているものの、まだ目を覚まさない。
三人で様子を見守っていると――
やがて、その子はゆっくりと目を開いた。
「……ん……」
体を起こし、周囲を見回す。
そして僕たちを見るなり、後ずさりして臨戦態勢を取った。
「大丈夫! 僕たちは君の味方だよ」
そう言って、必死に安全だと伝える。
それでも、まだ警戒は解けない。
そこでアンシャが、僕に目配せをした。
さっき作ってくれたご飯を持ってくる。
それを見た瞬間、
男の子の目が――輝いた。
夢中で食べ始めるその姿を見て、アンシャが優しく聞く。
「おいしい?」
その問いかけに答えるように、
食べ終えた少年は、目に涙を浮かべながら――
「……お……いしい……」
そう、小さく呟いたのだった。
次回も楽しみに




