第83話 絶望へのカウントダウン
今回82話書きました
僕の目の前にもう一人の自分が現れた。
「なん……で?」と驚く僕に、もう一人の僕は余裕の笑みを浮かべて言った。
「そうだよな、驚くよな? 俺はお前だ。だからお前が持っているスキルなんて、たかが知れている。」
「なんで僕がこんなところで世界を滅ぼそうなんてしてるんだよ!」
「お前には分からないさ。」
「なら吐かせるまでだ!!」
切りかかろうとした瞬間──。
「チェイン。」
その一言で、僕の体は鎖に縛られた。足掻いてもびくともしない。
「やめとけ。この魔法の拘束力は、お前が一番よく知っているはずだ。」
振り向きざまにもう一人の僕は言った。
「お前はなぜ命をかける? こんな世界に。」
「そんなの……みんなの笑顔を守るためだ!」
するとそいつは突然、腹を抱えて笑い出した。
「はははははは!! 面白いこと言うな。なら、こいつのことも守ってみろよ。」
手を突き出し、何かを引き寄せるような動作。
こちらへ近づいてくる影を見た瞬間、僕は絶句した。
そこにいたのは──アンシャ。
眠っているのか全く動かない。
「安心しろ。眠らせている。命はまだある。」
「なんでアンシャがここにいるんだよ!」
「簡単な話だ。俺が攫ってきた。なかなか見つけるのに骨が折れたよ。」
「お前アンシャをどうするつもりだ!」
「簡単だ。殺すんだよ。お前の目の前でな。」
「そんなこと……させるわけないだろ!!」
必死に暴れて鎖を解こうとするが、なかなか外れない。
その間にもう一人の僕は剣を抜き、アンシャに刃を向けた。
ヤバい、と本能が叫んだ。
「……チェイン!!」
僕を拘束していた鎖に新たな鎖が絡みつき、外側から引っ張られて空間ができる。
そして──鈍い音と共に鎖が千切れた。
「アンシャに近寄るなぁぁぁ!!!」
怒号をあげて、僕はもう一人の自分に突進した。
―――――
その頃。
カイルは仲間を連れて、蓮が進んだ道を駆けていた。
だが敵が一切いない。
「どういうことだ?」と不審に思いながら進むと、魔物の群れと戦う人々が見えた。
各国の王たちだった。
「お前ら、ここにいないと思ったらこんなところにいたのか!」
「カイルか。遅いぞ、手伝え!」とイグニスが叫ぶ。
「わかったわかった。で、エリサルか? 今にも能力切れそうじゃねぇか。」
「カイル、変わってよ。あとミルバァントも……」
「わかったよ。」
「ではカイル。先にやらせてもらっても?」
「あぁ、お好きにどうぞ。」
ドヴェルが前に出た。
「スキル解放──デッドエンドハイボイス!!」
大きく息を吸い込み、
「スクリーム!! はぎゃーーーーーッ!!」
その声を浴びた広範囲の敵が、一瞬で真っ二つになった。
ライガが驚く。
「すげぇ……どうやってるんだ?」
「あいつは能力を解放すると声量が跳ね上がって、この声を聞いたものの体を切り刻む。」とカイルが説明する。
「全く……あいつ、最初から本気でやれよ。」と他の王たちも言った。
「でも、だいぶ片付いたな。」
気づけば前方の敵はほとんど倒れていた。
「これなら進めるな。」
そう言った瞬間、後ろから再び魔物の大群が迫ってくる。
「くそ……きりがない!」
イグニスたちが前に出た。
「おい、お前ら!」
「私たちはこいつらを足止めする。お前は先にいる“英雄”のところに向かえ!
私たちの力、舐めるなよ!」
その言葉を残し、王たちは敵の群れに突っ込んでいった。
「……分かった。絶対無事でいろよ!」
カイルはみんなを連れて走り抜ける。
見えなくなったころ──。
「よし、行くぞ!!」
イグニスは地面に手を置いた。
「エンペラータイム!!!」
途端、地面が凍り始め、押し寄せる魔物も次々と凍りついていく。
「こんなものじゃないぞ──王の力は!!」
王たちは雄叫びを上げながら敵の群れへ突っ込んでいった。
―――――
同じ頃。
カイルたちは走り続け──。
「見えたぞ! 蓮の魔力だ!!」
その場所に辿り着き、目にした光景は残酷だった。
地面に倒れる血だらけの蓮。
その横で涙を流し、状況を理解できず震えるアンシャ。
そして──その前に立ち、嘲笑う蓮の姿をした"何か"。
物語は、さらなる絶望へと進んでいく。
次回も楽しみに




