第79話闇を喰らうもの
今回78話書きました
カイルが戦い始めた頃。
カケルとノイルもまた、敵と対峙していた。
「ノイル、わかってるな?」
「もちろん。逆にわかってないとでも?」
互いに短剣を構えたその瞬間――
視界が揺れる。
「ほう。この攻撃を避けるか。面白いな、お前ら」
目の前に突然現れ、拳を振り下ろしてきたその男。
二人は紙一重でかわす。
「いきなり何すんだよ!」
「名前くらい名乗れ!」
「失敬失敬。戦いが待ちきれなくてな。
我が名は――アバドン。お前らを喰らう者だ。」
次の瞬間、視界から消える。
そして、一息の間に二度の打撃。
カケルとノイルは短剣で防いだ。
「速っ!こいつ見た目によらず…!」
「なるほど。お前の能力わかったぞ」
ノイルが睨む。
「移動のとき、空間そのものを“喰ってる”な?」
ククッと笑い、アバドンは顎を触る。
「正解。スキル**〈グラトニー〉**
この世のすべてを喰らう。」
「なんでも…喰えるってわけか」
カケルが魔物の死体を影で実体化させ、突撃させる。
だが――すぐさま跡形もなく飲み込まれた。
「相性最悪だな」
「…ああ。俺達は“生み出す”側だからな」
さらに切りかかる二人。
だが、致命傷にはならない。
「驚いたか?喰ったものを回復に回すこともできる」
「つまり実質、不死身…ってことかよ!!」
ジリ貧。
ノイルが短く息を吐く。
「…やるしかないな」
「おう。決めるぞ!」
二人は魔力を最大まで引き上げ――
「「合体魔法――ブラックホール!!」」
空間が歪み、漆黒の球体が生まれる。
星すら砕く重力。
アバドンは嘲笑した。
「フン。こんなもの――」
だが、勝ち誇った表情が崩れる。
「吸われ…る? なぜだ…!?」
「お前の吸引力じゃ…勝てねぇよ」
重力は容赦なくアバドンを引きずり込む。
「嫌だッ!死にたくない!助け――」
絶叫は闇の中へと消えた。
完全に吸収を確認し、
黒球は静かに収束していく。
「っはぁ…久しぶりに使ったらキツいわ…」
「もうちょい長引いてたらアウトだったな」
そのとき――
「大丈夫ですか?」
振り返ると、イリス王女がいた。
「イリス王女!?どうしてここに?」
「救援に来ました。でも…あなた達が傷だらけで…!」
状況を説明すると、
王女の瞳が意志を宿す。
「ヒーリングフィールド!」
展開した光の領域。
そこへ入った途端、全身の傷がみるみる癒えていく。
「すげぇ…ありがとう!」
「いえ、私にできるのは回復くらいですから」
彼女は微笑んだ。
その笑顔に、二人は救われた気がした。
━━その頃。
蓮の代わりに戦線を支える王達も、激闘の最中にいた。
「くそ、キリがねぇ!」イグニス
「本当だな」セラフィン
「幻術が効かねぇのが厄介だ…!」セリス
だが、彼らの士気は折れない。
「なぁ、ちょっと本気出していいか?」エリサル
「いいどころか出してくれ!」イグニス
「了解~。少し下がってて!」
「アブソリュートフォース!!」
オーラが鎧と刃を形作り、戦神が顕現する。
「フロムアーマ&ブレード!」
一閃。
迫る魔物三体が塵となった。
遠巻きにも圧倒的。
王達は笑うしかなかった。
「魔力で物質を生むなんて…マジで異質だな」
エリサルは、楽しげにその戦場を駆けた。
彼らが拓く道は、すべて蓮へと続いている。
仲間の覚悟が、確実に未来を押し進めていた。
次回も楽しみに




