第70話 空っぽ
今回69話書きました
翌朝、僕はカイルさんのところに向かった。
「カイルさん、どうしたんですか?」と聞くと、カイルさんはスピーカーの音量を上げながら言った。
「これを聞け」
スピーカーから聞こえてきたのは、聞き覚えのある声だった。
「どうも、主人の手下でーす。前宣戦布告したもので、今回は責める日の予告をしまーす。今日から数えて10日後にアルシエル、それからオルディア付近から攻めていく。せいぜい準備するんだな。じゃーねぇー」
声は途切れ、部屋には緊張が残った。
「あいつら、随分と余裕そうだな。わざわざ日程まで……」
カイルさんの顔は怒りでこわばっていた。
「なら、この10日でさらに強くなるまでですね」
僕は静かに答えた。
カイルさんの顔が少し和らぐ。
「それでこそ英雄だ。よし、今から強くなる! みんなにも伝達してくる」
そう言うと、カイルさんは部屋を出て行った。
その瞬間、頭の中に声が響いた。
『蓮、今この世界が大変なことになっていますね』
「はい、宣戦布告……まずいです」
『なら、今からあなたに強くなってもらいます。私が修行をつけます』
「え! まじですか?」
『はい、ではいきます』
その瞬間、鐘の音のような響きが頭に鳴り、視界が真っ暗になった。
そして、光が差し込むと目の前の光景は見覚えのないものだった。
『声のする方に沿って歩いて来てください』
声を頼りに進むと、女の人の後ろ姿が見えた。背は僕より高く、背中には六本の神々しい翼が広がっていた。
「貴方は?」
「私は、貴方をこの世界に生き返らせた者、天使ライヤと申します」
「ここはどこですか?」
「ここは貴方の精神世界です。今、現実では気を失っています。長くは滞在できませんが、貴方には今よりさらに強くなってもらいます。敵は非常に強いです」
「わかりました。で、今から何をするんですか?」
「まず、この空間は貴方の心のあり方を映す場所です。真っ白で何もない……貴方は本当に清らかな心の持ち主ですね。貴方を選んだ甲斐がありました」
ライヤは構えを取り、力強く告げた。
「今から私と戦ってもらいます」
「わかりました」
僕も構えた。しかし、異変に気づく。自分のスキルが全く発動せず、バッジも何もない。手ぶらの状態だった。
「え! なんで……?」
戸惑う僕に、ライヤは言った。
「貴方はそれに頼りすぎです。他の力にも頼ってみてください」
その瞬間、ライヤが光の速さで突っ込んできた。
僕は必死で紙一重で交わすが、反撃は届かない。
瞬間、背後を取られ、強烈な衝撃で投げ飛ばされた。
「痛っ……!」
立ち上がろうとすると、ライヤが静かに言う。
「貴方の力、これが全てですか? 貴方は、こんなにも何もない状態なのですね」
意味がわからず、僕は拳を振るう。
だが、全て避けられ、最後には地面に叩きつけられた。
「貴方一人で戦っている間は、私には勝てませんよ」
そう言い残し、ライヤはどこかへ消えた。
僕はひとり、言葉の意味を考えた。
『一人で戦っている間は……』。一体どういうことだ?
その頃、カイルは部屋に戻り、倒れている僕を発見。
急いで病院に運ぶと、検査の結果は異常なし。しかし目は覚めないと言われた。
ライガ、エレナ、アンシャは心配そうに僕を見つめていた。
一方、僕はまだ精神世界にいた。
真っ白で静かな空間を見つめながら、ライヤの言葉を反芻する。
「僕一人で戦っている間は、私に勝てない……? 今は僕しかいないのに……」
まだ、その意味を理解できずに、僕はこの空間を見つめ続けた。
次回も楽しみに




