第66話 あなた一人の命じゃないから
今回65話書きました
十五カ国共同で“主人”への対抗が決まり、会議は幕を閉じた。
僕たちはすぐにヴァルセインへ戻り、戦力をどう集めるか会議を進めていた。
「このままじゃ数が足りねぇ」
全員が頭を抱えていたその時──。
コンコン、と扉を叩く音。
「入れ」とカイルさんが告げると、俺と同じくらいの年の男の子が入ってきた。
「……お前、カイか?」
ライガが驚いたように立ち上がる。
「はい、ライガさん。お久しぶりです」
カイは深く頭を下げた。
「昔助けてもらった村の者たちが、恩返しをさせてほしいと言っています。
腕の立つ者、ざっと四千人……!
あなたにもらった命です。この世界の未来に賭けさせてください!」
「……最悪死ぬぞ。相手は全てを敵に回す化け物だぞ?」
ライガの問いに、カイは迷いなく言った。
「覚悟なら、とうに決まってます。
あの日、救ってもらえなければ僕はとっくに死んでいた。
今返さずしていつ返すんですか!」
その強い声は、部屋の空気を一瞬で変えた。
僕たちは顔を見合わせ──
「分かった。力を貸してほしい。ただし……命を最優先に動け」
そう伝えると、カイは晴れやかな表情で頭を下げた。
「ありがとうございます!全力で戦います!」
そう言い残し、部屋を出ていった。
「ライガ、いつの間にそんなことしてたの?」
僕が問うと、ライガは頭をかきながら答えた。
「昔な……無性に腹が立ってた時に、魔物に襲われてる村を見かけたんだ。
……気づいたら全滅させてた。それだけだ」
「どおりで帰りが遅いと思ったぜ」
カイルさんが笑う。
「理由を絶対言わなかったが……まさか一人で魔物軍団を相手にしてたとはな」
「礼なんざいらねぇ。どうせなら本番でたっぷり聞かせてくださいよ」
ライガがニッと笑うと、場の空気が一気に明るくなった。
会議が終わり、家に戻るとアンシャが迎えてくれた。
「どうだった?会議」
「実はさ、昔ライガが助けた村が四千人連れて参加してくれるらしいんだ」
「よ、四千人!? そんなに……!」
アンシャの目が大きく見開かれる。
「多分ここからもっと増えるよ」
少し笑って答えたが──
心の奥では不安が渦巻いていた。
装備を整えていると、アンシャが小さくつぶやいた。
「ねえ、本当に行くの?」
「行くよ。みんなの命がかかってるんだ」
アンシャは唇を噛み、涙を堪える。
「言わない方がいいと思ったけど……
やっぱり、死んでほしくない。
ここに残ってほしい……」
その言葉は、胸を締めつけた。
だけど僕は、はっきり伝える。
「アンシャと同じくらい大切な人たちがいる。
その笑顔を守るために、俺は行くんだ」
アンシャは涙をあふれさせながら微笑んだ。
「絶対、生きて帰ってきて。
あなたの命は……もうあなた一人のものじゃないんだから」
「もちろん。必ず帰る」
僕は彼女の手を強く握りしめた。
そう誓ったのだ。
――そして、戦いの幕が上がる。
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次回も楽しみに




