第62話 家族の結びつき
今回61話書きました
翌朝。
僕はいつもの時間より早く目を覚まし、支度を始めていた。
――今日は、カケルが正式に王として即位する日だ。
着替えをしていると、アンシャが眠そうな顔で部屋から出てきた。
「もう起きてたの? 何してるの?」
「今日はカケルがベルディアの国王になる日だからね」
「あっ、そうだったね! 私も準備する!」
そう言ってアンシャが慌てて着替えに戻ると、ちょうど扉が開いた。
入ってきたのはライガさんとエレナさんだった。
「二人とも、どうしたの?」
「今日、あいつが王になる日だろ。俺たちも準備してきたんだ」
ほどなくしてアンシャの準備も終わり、僕たち4人はベルディアへテレポートした。
◇◆◇
城の広間には既に多くの人が集まり、活気に満ちていた。
耳を澄ませると、期待に満ちた声が聞こえてくる。
「今日、新しい王様が決まるんだって!」
「今回の王様、俺たちを救ってくれた人らしいぞ」
「どんな人なんだろ?」
そうしているうちに、以前会った側近のおじいさんとカケルが姿を見せた。
途端にざわめきが広まる。
おじいさんが一歩前に出て、よく通る声で告げた。
「皆のもの、聞け!
この方こそ、この国を危機から救ってくださった英雄――カケル様である!
本日この刻より、国王となられる!!」
大歓声が沸いた。
続いてカケルが前に出て、まっすぐ国民たちを見つめる。
「国民のみなさん。
今日から国王になります、カケルと申します。
私の治める国では、誰もが笑って過ごせるように全力を尽くします。
どうか、これからもよろしくお願いします!」
深々と頭を下げる彼に、歓声はさらに大きくなった。
◇◆◇
儀式が終わり、僕たちは王室へ案内された。
玉座には、立派な衣装に身を包んだカケル。
似合いすぎていて、思わず笑ってしまった。
「よ、カケル。似合ってるよ」
「ありがとう蓮。これからもよろしくな」
握手を交わすと、その隣に見慣れた顔が。
「ノイル? なんでここに?」
「今日から“情報屋兼王の護衛役”、そして国家情報管理責任者に任命されました」
「なるほど……! じゃあ、これからもよろしく、ノイルさん」
「はい。若……もとい国王のお友達のためなら、いつでも」
握手を交わした瞬間、ノイルが優しく笑った。
――やっぱり、信用できる人だ。
◇◆◇
「蓮。今からヴァルセインへ行きたい。案内してくれないか?」
「もちろん!」
僕たちは5人でテレポートし、カイル王の王室へ。
「カイル王。改めて、これからもよろしくお願いします。
本日は友好関係を結ばせていただきたく……」
「はっはっは! そんなにかしこまるな!
友好なら大歓迎だ!」
書面へサインを済ませると、
「よし、今日はみんなで飯を食いに行くぞ! もちろん俺の奢りだ!」
「ありがとうございます!!」
向かったのは、カイルさん行きつけの定食屋。
店主のおばあちゃんは、僕たちを見るなり目を丸くした。
「あらまぁ、カイちゃん! 今日は大勢ねぇ」
「全員、俺の仲間なんだ。いつもの頼む!」
「なら今日は私の奢りよ!」
「え、そっ……」
「いいから座りな!」
彼女は嬉しそうにキッチンへ駆けていった。
「昔からお世話になってる人なんだ」
「……お母さんみたいな存在、なんですね」
「まぁ、そんな感じだ」
◇◆◇
料理はどれも最高に美味しくて、酒も進んだ。
カケルは少し酔いが回ってきたのか、静かに呟いた。
「……母さん、父さん。
俺、今……幸せだよ。
まさか一国の王になるなんて思わなかった。
見て欲しかったな――この姿を」
その言葉に、胸がぎゅっと痛んだ。
僕も同じ想いを抱えているから。
「……辛いよな。
僕も思うよ。
この姿、見せたかったって」
カケルは潤んだ瞳で笑った。
「案外似た者同士かもな。俺たち」
「そうかもね。カケル、兄弟いたの?」
「いたよ。お前によく似た弟が。……お前を見てると、思い出す」
「そうなんだ……。
僕は一人っ子だったからな。
兄貴がいたらって思うことはあるよ。
ちょうど――カケルみたいな人が」
「ライガは兄弟じゃないのか?」
「ライガは戦いの中で認め合って、そんな呼び方になっただけさ」
「そっか。――ならさ」
カケルは杯を持ち上げた。
「今日から俺はお前の兄貴だ。どうだ?」
「……いいの? 僕もカケルが兄貴がいい」
「よし。じゃあ今日から兄弟だ!」
カン、と杯が触れ合う。
それは確かに結ばれた証だった。
その横に飾られていた花は――
スイカズラ。
花言葉は、
「家族の結びつき」
だった。
よろしくお願いします




