第59話「偽りの姿で」
今回58話書きました
僕たちは再びオルディアへ戻り、ノイルのもとへ向かっていた。
しばらくして、指定された場所に到着。
中へ入ると、まるで待ち構えていたかのようにノイルが椅子に座っていた。
「待っていましたよ」
不敵な笑みを浮かべながら、こちらへ歩み寄ってくる。
「若、この四人で?」
「そうだ。この四人で、あの国に潜入する」
カケルが答えると、ノイルは頷いて奥の部屋へ手招きした。
ついていくと、更衣室のような部屋が現れる。
「ここは?」
「ここは、潜入に必要な物を取引する場所ですよ。若を含め、ごく一部しか見られません」
どんな準備があるのだろう。そう考えていると――
「では、蓮さん。こちらへ」
ノイルが僕の顔に手をかざし、呪文を唱えた。
「――フューチャーズコピー」
瞬間、白煙が立ち込める。
煙が晴れると、みんなが驚いた顔で僕を見ていた。
「え?どうしたの?」
「蓮……鏡を見てみろ」
鏡に映った人物は――僕ではなかった。
「な、誰!?」
困惑する僕に、ノイルが淡々と言った。
「その人物は私が先日、若のために“始末”しておいた者です。
もちろん、相手側は死んだとは気づいていません」
「え、どういう……?」
「私の能力は
“殺した対象の姿・声・記憶をそのまま他者に与える”能力です」
ゾッとした。
つまり僕は今、もうこの世界にいない人物の姿をしている。
記憶もリンクし、
――僕は蓮ではなく、ロンになっていた。
ノイルは他の三人にも同じ術を施し、全員が別人の姿へと変わった。
続いて、ペンのようなものを手渡してくる。
「これは“自分にしか読めない文字”が書けるペンです。潜入中にご利用を」
そして、床の魔法陣を指差した。
「ここに乗ってください。ベルディア城壁前へ転移します。
安心してください。あなたたちの身体はすでに“あの国の人間”です。気づかれませんよ」
時計は夜の7時。潜入には暗さがちょうどいい。
顔を見合わせ、魔法陣に乗る。
視界が歪み――
気づけば巨大な城壁の目の前だった。
ここから侵入開始だ。
街の記憶も“身体が知っている”。自然に動ける。
僕たちはまず宿へ向かい、明日に備えて眠った。
◆
翌朝。
街の人々に国王のことを聞き込む。
だが返ってくるのは――
「国王は素晴らしい方だ!」
そんな言葉ばかり。
「どうする? このままじゃ埒が明かねぇ」
ライガが唸る。
「仕方ない。今夜、城に忍び込むぞ」
カケルが決断する。
「蓮、お前は透明化のために魔力を温存しておけ」
「わかった」
一度別れ、情報を集めながら歩いていると――
僕は何かにぶつかった。
5〜6歳の小さな女の子。
僕を見るなり、慌てて謝ってきた。
「だ、大丈夫だよ。お嬢ちゃん」
手を掴んで立たせようとした瞬間、僕は息を飲む。
――腕に、無数の切り傷。
殴打された痕さえある。
それに気づいた少女の顔が青ざめる。
「早くしないと……お父さんに……」
怯えきった声。
僕は慌てて手を離した。
「ごめんね」
少女は深く頭を下げ、その場から逃げるように去った。
震えが止まらなかった。
どうしてあんな小さな子を――
怒りが、胸を焼く。
そのとき、肩に誰かの手が置かれた。
ライガだった。
「兄貴……今は我慢です。
俺だって許せない。でも……
この国を変えるためにも、まずは元凶を倒さないと」
深呼吸。
「……ありがとう。落ち着いた」
再び別れ、夜へ。
◆
日が沈み、闇が街を覆ったころ。
城付近に集合した僕たちは、全員に透明化を施す。
「――ステルス」
こうして僕たちは、堂々と城の中へ足を踏み入れた――。
次回も楽しみに




