第53話 眠れぬ朝、そして告白
今回53話書きました
翌朝、僕はスッキリした気分で目を覚ました。
時計を見ると、時刻は朝五時。まだ寝られると思い目を閉じたが、どうしても眠れなかった。
仕方なく布団から出てストレッチをしてから、アンシャを起こさないように静かに部屋を出た。
外の空気は少し冷たく、夜明け前の静けさが気持ちよかった。
「たまには運動でもするか」と思い、宿舎を出てランニングを始めた。
普段しないことをすると、気分が変わるものだ。
一時間ほど走ってベンチに座り、休憩していると——。
「わっ!」
「うわぁーっ!?」
背後から突然声がして、思わず飛び上がった。振り返ると、そこにいたのはエレナさんだった。
「エレナさん、脅かさないでくださいよ!」
「いやー、そんなに驚くとは思わなくて、ごめんごめん」
「エレナさんは何をしてたんですか?」
「私はランニング。いつもこの時間くらいからやってるの。蓮は?」
「僕もランニングです。眠れなくて、五時くらいに目が覚めちゃって」
「珍しいね」
「ですよね」
そんな会話をしながら、エレナさんは僕の隣に腰を下ろした。
「ねえ、前から聞こうと思ってたんだけど……蓮って、アンシャのことどう思ってるの?」
いきなり核心を突かれ、少し驚いた。
「アンシャは……大切な人ですね。何があっても守りたいと思える人です」
「……そっか」
「なんでそんなこと聞くんですか?」
「いや、ちょっと気になっただけ」
明らかに様子がおかしい。
「エレナさん、なんか隠してません?」
「い、いや、何にも隠してないよ!?」
慌てて否定する様子に、確信した。
「絶対なんか隠してるでしょ?」
「……やっぱり隠せなかったか。実はね、私……ライガのことが好きなのかも」
「えっ!? ライガのことを!?」
「うん。最近一緒に行動することが多いでしょ? 一緒にいるうちに、なんかドキドキするようになっちゃって」
「あー、それは恋ですね」
「やっぱり?」
「間違いないです」
「それで、僕にアンシャの話を聞いたのは……告白の参考に?」
「うん、そう。蓮がどうやってアンシャに想いを伝えたのか、気になって」
僕は少し笑ってから答えた。
「アンシャのことを好きになったのは、放っておけない人だなって思ったのがきっかけです。顔も可愛いし、花の好みも一緒だし。けど一番大きいのは、僕を守るためにカイルさんに頼みに行ってくれたことですね」
「なるほど、参考になるよ。ありがとう」
「いえいえ。僕も応援してますよ」
そう言って別れ、宿舎へ帰った。
家に帰ると、アンシャがすでに起きて朝ごはんを作っていた。
「おはよう。どこ行ってたの?」
「眠れなくて、ランニングしてたんだ」
「へぇ、珍しいね」
「自分でも思うよ」
そんな他愛もない会話をしていたら——
突然、扉が勢いよく開いた。
「蓮の兄貴!! 助けてくれ!!」
飛び込んできたのはライガだった。
「どうした、落ち着け!」
急いで外に出て、歩きながら話を聞いた。
「いや、さっきエレナに会ったんだけどさ……雰囲気が変で。どうしたのか聞こうとしたら、いきなり襲ってきたんだ! 最初は応戦したけど、力が強すぎて太刀打ちできなかった。だから逃げてきた!」
「……エレナさんが?」
さっき会った時とは明らかに違う。何が起きたんだ?
そう思っていると、背後から殺気が走った。
振り返ると、そこには剣を構えたエレナさんの姿があった。
「エレナさん!?」
「蓮、どいて。今はライガに用があるの」
「退くわけにはいきません!」
「なら——力ずくで!」
剣を振り下ろすエレナ。ライガが飛び出して受け止めた。
「ライガ、五分足止めできる?」
「五分なら、いけます!」
ライガが剣を振るい、僕は魔法の詠唱を始める。
火花が散り、刃がぶつかり合う。時間が止まったような緊張感。
「——チェイン×ディセーブル、混合魔法!」
エレナさんの周囲に鎖が出現し、瞬時に彼女を拘束した。
鎖から白い煙が立ちこめ、やがてその身体を覆う。
煙が晴れた時、エレナさんは静かに地面に倒れた。
僕とライガは急いで彼女を抱え、病院へと運んだ。
数時間後。
ヴァルドリン王による診察の結果、彼女は「強力な精神支配魔法」を受けていたことが分かった。
幸い、僕の魔法でその影響は完全に解除されたらしい。
そして——夜。
病室では、ライガがエレナの手を握ったまま、眠るように寄り添っていた。
やがてエレナが小さく呻き声をあげ、瞳を開く。
「……ライガ?」
「エレナ! 気がついたか!」
状況を説明すると、エレナは青ざめた顔で涙を流した。
「ごめんなさい……私、あなたに剣を向けたのね。しかも蓮にも……」
「お前らしくないな。洗脳されてたんだから、気にすんなよ」
「でも、私は——」
「いい加減にしろ!」
思わず声を荒げた。
「……ごめん。でも俺は、お前を責めてなんかいない。むしろ、無事でよかった」
その言葉に、エレナの瞳からまた涙がこぼれた。
「やっぱり……ライガ、優しくなったね」
「は?」
「昔はもっと怖かったのに。今は、人を守る目をしてる」
「……蓮の兄貴に会ってからだよ。俺でも守れるってこと、背中を預けられる仲間ができたってこと。そして——守りたいって思える人ができた」
「……誰のこと?」
「もちろん、お前だよ。エレナ」
その言葉に、エレナは頬を真っ赤にして俯いた。
「ありがとう……私も、伝えたいことがあるの」
「何だ?」
「私……ライガ、あなたのことが好き。だから、付き合ってほしい」
一瞬、時間が止まった。
「……俺でいいのか?」
「うん。貴方だから、いいの」
ライガはそっと微笑んで、エレナを抱きしめた。
失っていた温もりが、二人の間に戻ってきた。
次回も楽しみに




