第43話 約束の帰還
今回43話描きました
――あれ? 僕は……どうなったんだ?
意識の底から、そんな疑問が浮かんだ。
手を動かそうとしても、指一本すら動かない。
これは……死んじゃったのか?
そう思った瞬間、頭の中に澄んだ声が響いた。
『あなたは死んでいませんよ。今は昏睡状態にあります。生と死の間に、あなたはいます』
「生と死の間……」僕は呟いた。「じゃあ、まだ死んでないんだ」
『今世は幸せな人生を歩めてよかったですね』
「はい……でも、あなたは一体?」
『起きる前に、少しお話をしませんか?』
「わかりました」
『なぜあなたの過去を知っているか。それは、私があなたをこの世界に転生させたからです。あなたが少女を庇ってトラックに轢かれたのを見ていました。その優しさに感動して、この世界に送りました』
僕は目を見開いた。
「……じゃあ、あなたが」
『そうです。そしてあなたの記憶を消した理由。それは――あなたがとても悲しい過去を背負っていたからです。あのままの記憶では、あなたの優しさが毒になってしまう。だから、愛を知ってほしくて記憶を消したのです』
「なるほど……確かに、そうかもしれません。ありがとうございます」
『あなたには、もう“林薫”としての過去は必要ありません。今のあなたには、あなたを大切に思ってくれる仲間や家族がいます。だから――もう過去の呪縛に囚われないでください。あなたは蓮という新しい人です』
その言葉と共に、まぶしい光が差し込んだ。
僕はゆっくりと目を開けた。
そこは病室だった。
横には眠っているアンシャとライガがいた。
僕が少し動くと、二人ともはっと目を覚ました。
「……蓮!!」
「蓮の兄貴!!」
二人は同時に叫んで、僕に抱きついてきた。
「ただいま、二人とも」
「本当におかえりなさい、蓮!」
「お帰りなさい、蓮の兄貴!」
涙を流しながら笑う二人の顔を見て、胸が熱くなった。
「僕は、どのくらい寝てたの?」
「二週間です。もう傷も塞がったので、退院できますよ」
「ありがとう。……それと、エレナさんは?」
ライガが頷き、「呼んできます!」と部屋を出ていった。
しばらくして、勢いよくドアが開く。
そこにはエレナさんが立っていた。
「蓮!! よかった!!」
そう叫んで僕に駆け寄り、強く抱きしめてくれた。
「ごめんなさい……エレナさんの仇を取るって言ったのに」
「もういいの。そんなことより――無事でよかったの!」
涙を浮かべながら抱きしめる彼女の腕の温かさに、
僕は改めて“生きている”ことを感じた。
数日後。
僕は退院し、カイルさんの元を訪ねた。
「おお、蓮! よかった、本当に助かってよ」
「すみません、そしてありがとうございました」
「いいって。それより話がある」
カイルさんは少し真剣な顔で続けた。
「あのJという男、自爆した。その直前に“彼の方”がこの世界の王になる、と言っていた。心当たりは?」
「……おそらく、あの子供たちを攫った“顔の見えない男”です。戦ったとき、同じ気配を感じました」
その頃――。
とある研究所のような場所では、男の怒号が響いていた。
「おい! あれほど待たせて、まだあの小僧を殺せていないのか!」
「すまないな……だが心配はいらない。もうすぐで、あいつも、この世界も俺のものになる」
怒鳴った男が口を開きかけた瞬間、
その首を掴み上げたのは――“顔の見えない男”だった。
「なっ……何を――」
「用済みだ。今までありがとうな」
そう言い残し、静寂だけが残った。
一方その頃、カイルと僕は次の話をしていた。
「正体不明の敵を倒すために、俺たち十四カ国は同盟を結んだ。お前にも参加してほしい」
「わかりました。日程を教えてください」
その時、兵士が駆け込んできた。
「報告! リヴァンド王が、何者かに殺害されました!」
「……何だと!?」
あの、僕を認めなかった王の名に、場が凍りついた。
「カイルさん。敵はもう、すぐそこまで来てますね」
「ああ……次に動くのは俺たちだ」
僕は頷き、部屋を後にした。
久しぶりの自宅。
ベッドに横になると、静かにドアが開いた。
そこにはアンシャが立っていた。
「アンシャ、ごめんね」
そう言うと、彼女は何も言わずに僕の前に立ち――
ぎゅっと抱きしめてきた。
「本当に心配したんだよ……蓮がいなくなったら、もう私、生きていけない。だから、もっと周りを見て」
「ごめん。わかったよ」
アンシャは涙を拭いながら、少し笑った。
「あなたは知らないと思うけど、私は知ってるよ。
なんでも抱え込むことも、強がってることも、本当は繊細なことも。
だから、自分を偽らないで。何かあったら、私たちを頼って。
……そして、ごめんね。あの時、そばにいてあげられなくて」
「謝らないで。それは仕方なかったよ」
「じゃあ、これからはもっと頼ってね」
「うん、約束する」
その瞬間――唇に柔らかな感触が触れた。
アンシャの顔は真っ赤だった。
「もう、蓮は私のものだからね。どこにも行かないで」
「行かないよ。もう絶対に」
二人で抱きしめ合い、静かに夜は更けていった。
やっと取り戻した平穏を胸に、僕はそっと呟いた。
「――ただいま、僕の世界。」
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蓮復活です次回も楽しみに




