第42話 祈りの夜、涙の約束
今回42話描きました
カイルたちが後片付けを終えた頃、僕たちは病院へと急いでいた。
到着してすぐ、医師に蓮くんのことを尋ねると――「手術中です」との返事。
手術室前の待合室に案内された。
そこには、ライガくんとアンシャちゃんがいた。
ライガは顔を伏せ、手を組んで祈るようにしていた。
アンシャちゃんは現実を受け止めきれず、蒼白な顔で震えながら、
「嘘……だよね……蓮……」
と何度も繰り返していた。
その姿を見て、僕たちは思った。
――これは、誰も冷静でいられない状況だ。
カイルがゆっくりとライガに声をかけた。
「ライガ……蓮は?」
ライガはかすれた声で答えた。
「まだ手術中です。医師からは……“生きるか死ぬかは半々”って……言われました。」
その言葉に、僕たちの表情が固まった。
空気が一瞬で重くなる。
するとライガは涙をこぼしながら、叫んだ。
「俺のっ……俺のせいだ!!
俺があいつの姑息な手段に気づけてたら!
蓮の兄貴が刺された瞬間、駆けつけられてたら……!
こんなことにはならなかったのに!!」
嗚咽混じりの叫びに、胸が締め付けられる。
そのとき、カイルが静かにライガの隣に座った。
ゆっくりと、優しく語りかける。
「なぁ、ライガ。お前の気持ちは痛いほどわかる。
俺たちも同じだ。もし早く駆けつけていれば――なんて、何度も思った。
でもな、それを自分一人のせいにするな。
仲間だろ? 仲間なら、どんな苦しみも“分け合う”もんだ。」
ライガは目を見開き、涙を拭った。
「……そうですよね。すみません。
まだ……蓮の兄貴は死んでないっすもんね!」
少しだけ、彼の顔に光が戻った。
その様子を見て、僕は精神的に崩れかけているアンシャちゃんのもとへ向かった。
彼女は、さっきと同じように呆然と座り、同じ言葉を繰り返していた。
僕は意を決して、声をかけた。
「あの……アンシャちゃん、大丈夫?」
少しの沈黙のあと、彼女は小さく頷いた。
「……はい。なんとか……」
絞り出すような声だった。
僕は彼女の隣に座り、静かに言った。
「蓮くんは、幸せ者だね。」
「え……?」
「あ、ごめんね。
でもさ、こんなにも心配してくれる人が近くにいるなんて、幸せ者だなって思って。」
アンシャちゃんは少しだけ、微笑んだ。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「実は……私、昔は両親がいたんです。
とても優しい家族で、幸せでした。
でも――それも長くは続きませんでした。
ある日、家に帰ったら……両親は血だらけで倒れていて、近くに魔物がいたんです。
そして私も襲われて……そのとき、目が見えなくなりました。」
「えっ……でも今は見えてるよね?」と僕が聞くと、彼女は静かに頷いた。
「はい。
見えなくなって数年経った19歳のとき、蓮に出会ったんです。
お互いぶつかっちゃって、慌てていた私を近くのベンチに座らせてくれて……
それから少し話をして、私が“目が見えない”ことを話したんです。
そしたら――怒ってくれたんですよ。
私のために。本気で。」
「それからしばらくして、また偶然再会しました。
蓮は何も言わずに、私の目元に手を当てて、静かに離したんです。
その瞬間、視界が――戻りました。」
「……信じられなかった。けど、それは現実でした。
そのとき初めて、彼の顔を見たんです。
全身、傷だらけでした。」
「『何をしたの?』って聞いたら――
彼は“再生魔法”を使ったって言ったんです。
私の視力を戻すために。
そのせいで、自分の体を傷だらけにして。」
「“なんでそこまでしてくれたの”って聞いたら――
『ただ、あなたには笑っていてほしい。それだけだよ』って……」
僕は言葉を失った。
そして彼女は続ける。
「そのとき、私は彼を好きになりました。
そして付き合うことになったんです。
その時に決めたんです――
“絶対に彼のそばにいる”って。
だって彼、何でも抱え込んじゃうから。
メンタルも強いように見えて、本当はすごく繊細なんです。
だから、私がそばにいなきゃって……そう思ってたのに。
今回は、近くにいられなかった……!」
アンシャの声が震える。
僕は、静かに答えた。
「……とても壮絶な人生を歩んできたんだね。
でもさ、それだけ彼のことを知ってるならわかるだろ?
――彼は、こんなところで死ぬような人間じゃない。」
「それくらい、わかってます……!
でも……最悪のことばかり考えちゃって……!」
「大丈夫や。彼なら、無事に帰ってくる。」
「……はい。
そうですね。蓮は、きっと無事に帰ってきます。」
その言葉とともに、アンシャの瞳に光が戻った。
そして――
手術室の扉が、ゆっくりと開いた。
医師が出てきて、深く息をついた。
「彼は……なんとか一命を取り留めました。
ですが、しばらくは目を覚まさないでしょう。」
その言葉を聞いた瞬間、ライガはガッツポーズをとり、
アンシャちゃんは涙を流しながら崩れ落ちた。
僕たちは、ようやく――ほっと胸を撫で下ろした。
今回どうでしたか?次回も楽しみに




