第41話 血に染まる闘技場
第41話描きました
僕は闘技場に戻ってきた。
しばらくして試合の時間になり、入場口へ向かうとライガが待っていた。
「蓮の兄貴、あいつの口車に乗っちゃダメですよ。いつも通り冷静に物事を考えてください!」
「ありがとう。言ってくるよ。」
そう言って入場し、Jと向かい合った。
審判の声が響く。
「――始め!」
その瞬間、僕は魔法を唱えた。
「スモーク!」
会場一面を煙が覆い尽くす。
Jに切りかかるが、視界を封じられているはずのJは、僕の攻撃を紙一重で避けていく。
煙が晴れ、さらに早い斬撃を放つ――だが、それすらも避けられた。
驚きを隠せなかったが、冷静に考え、僕は閃いた。
二つの魔法を同時に唱える。
「スモーク×チェイン、二種混合魔法――《スモークチェイン》!」
「ウィング×サンダー×ウォーター、三種混合魔法――《風雷水弾》!」
再び煙が会場を包み、そこから風・雷・水の属性を帯びた球体が無数に飛び出す。
しかし、Jはそれをすべて避けてみせた。
……だが、僕は笑った。
手を前に出すと、Jの周囲に鎖が現れる。
「なっ――!」
鎖がJに絡みつき、強烈な衝撃が走った。
Jはもろに攻撃を受け、吹き飛んでいく。
煙が晴れると、Jは地面に倒れていた。
審判のカウントが響く。
――10カウント。僕の勝利だ。
……だが、違和感があった。
手応えがまるでない。
敵を討ったはずなのに、胸の奥で警鐘が鳴っていた。
退場しようとした、その瞬間。
腹部に鋭い痛みが走る。
視線を落とすと、剣が貫通していた。
「……ッ!」
血が口から溢れ、視界が歪む。
倒れながら思う――これは、最初から罠だったのか。
僕が狙いだったのか――。
ライガは驚き、蓮のもとへ駆け出そうとした。
だが足がすくみ、動けない。
そのとき、Jが蓮に近づき、止めを刺そうとする。
「やめろー!!」
ライガの叫びも虚しく、剣が振り下ろされようとした――
その瞬間、赤と青の光が闘技場を貫いた。
光が落ちた先に立っていたのは、カイルとリュシア。
二人の顔は怒りに染まっていた。
「おい! うちの英雄になにしてんだ!!」
「おい! 兄ちゃん、僕たちのヒーローに何してるや!!」
息ぴったりの二人が叫ぶ。
カイルは拳を振り抜いた。
Jはそれを避けるが、地面に当たった拳が砂煙を巻き上げた。
その隙にリュシアが蓮を抱きかかえ、ライガのもとへ駆け寄る。
「ライガくん、ごめんやけど、蓮くんを最速で病院に連れて行って!」
「わかった!」
ライガは蓮を抱え、全力で走り出した。
病院に着くと、医師は顔を青ざめさせ、すぐに手術室へ駆け込んでいった。
――その頃。
闘技場ではカイルとJが対峙していた。
カイルが斬撃を放ち、Jが避け、反撃する。
しかし、カイルには一撃も当たらない。
リュシアが戻ってきて言う。
「どうやった?」
「異質だな。避けた瞬間がわからなかった。」
「もう一つの能力は使うなよ。使うなら予知だけにしとけ。」
「ははっ、なら行かせてもらいますわ。」
ライガは笑い、構えを取る。
《予知》を発動。
Jの動きが見える。
――前蹴りだ。
予知通りに避け、逆に前蹴りを叩き込む。
Jが後退したその瞬間、カイルの斬撃が命中した。
「なぁカイル、こいつ……痛覚ないみたいやな。」
「そうみたいだな。攻撃を受けても怯まねぇ。」
「それに、見てみろ。傷が……再生してる。」
「……なるほどな。」
カイルは剣を捨て、両手を空に上げた。
空が曇り、雷鳴が轟く。
落ちた雷がカイルの拳に収束していく。
「――《雷破弾》!!」
拳自体は避けられた。
だが、拳から放たれた雷の波動がJに直撃し、Jの体が痺れる。
動けなくなったJに向かって、カイルが叫ぶ。
「ヴァルセイン兵! 拘束魔法を!!」
兵士たちが一斉に詠唱し、Jの周囲に鎖が出現。
次の瞬間、Jは拘束された。
暴れるが、次第におとなしくなる。
カイルが近寄り、問いかける。
「お前……何が目的だ!」
「フッ……お前に教える義理はない。だが、一つだけ教えてやろう。
――この世界は、もうすぐ“あの方”のものになる。」
「あの方……? それは誰だ!」
「お前たちには、絶対に敵わない存在だ……」
Jの体に、魔法陣が浮かび上がる。
リュシアが叫んだ。
「カイル!! 離れろ!!」
カイルは全力で後退。
直後、Jの周囲で巨大な爆発が起こった。
爆炎と煙が闘技場を覆い尽くす。
煙が晴れたとき――Jの姿は、もうどこにもなかった。
残されたのは、焦げた地面と、不穏な言葉だけだった。
「“あの方”……一体、誰なんだ?」
闘技場に吹く風が、静かに熱を冷ましていった。
次回も楽しみに




