第40話 約束の代償
今回40話書きましたが是非読んでください
僕とライガの試合が終わってしばらくして、今度はエレナさんの番になった。
僕とライガは、エレナさんのもとへ向かう。
「エレナさん、頑張ってください」
「うん! 絶対勝って、蓮。決勝で会いましょう」
握手を交わし、エレナさんは入場口へ。反対側からは仮面を被った男が出てきた。
トーナメント表を見ると、名前は単に「J」と書かれている。
「一体どんな戦いをするんだろう……」と僕が呟くと、ライガが教えてくれた。
「あいつ、今回が初出場なのに、ほとんどの相手を能力を使わずに倒してきたらしい。どんな能力か、みんな分からないってさ」
その話を聞いて、胸の奥が重くなる。大丈夫かな、エレナさん――。
両者が武器を構え、審判の声が響く。
「――始め!」
エレナさんは即座に能力を解放して斬りかかる。Jはすべての攻撃を避け続けるが、反撃はできず、序盤はエレナが優勢だった。観客席が立ち上がり、歓声が湧く。エレナさんはそれに応えるように速度を上げ、切り刻む。
しばらくその状態が続いた。だが、ある瞬間が来る。
エレナさんの目が追い切れないほどの速度で斬撃が放たれ、Jは避けた。だが、その避け方で体勢が崩れているのを、エレナさんは見逃さなかった。踏み込んで渾身の一撃を叩き込む。
――攻撃は命中し、Jは地面に倒れ込む。すかさず審判のカウントが始まる。カウントが進み、会場は息を呑む。十に近づいたとき、場内に冷たいオーラが広がった。
やがてJがゆっくりと起き上がる。先ほどとは何かが違っていた。観客の足はすくみ、声も出ない。僕の身体全体に凄まじい悪寒が走る。エレナさんの額にも冷や汗が滲んでいた。
剣を構え、エレナさんが相手に向き直る刹那、ついにJの姿が消えた。次の瞬間、エレナさんの真横に立っていたのだ。驚き、エレナさんは大きく後退して距離を取る。再び剣を構え、突進するが、Jは余裕の表情で避け、続けて蹴りを与えた。
反応が一瞬遅れたエレナさんは強烈な一撃を受け、壁に叩きつけられる。壁には大きな凹みが残った。満身創痍で立ち上がったエレナさんの額からは血が垂れている。それでも彼女は前へ進むが、すべてかわされ、次第にボロボロになっていく。だが、なお笑みを絶やさない。
僕は抑えきれずに叫んでいた。
「もういいよ! エレナさん、降参して! じゃないと、あなた……!」
エレナさんはふらつきながら、それでも必死に言った。
「わたしは……だい、じょうぶ……勝って……蓮と、決勝で戦うんだ……」
その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられ、言葉を失う。アンシャは顔面蒼白、ライガは目に涙を浮かべている。
エレナさんが指輪に手を触れると、以前暴走したときのようにオーラが溢れ出した。彼女の動きは再び常人の目では追えないほどに速くなり、相手へと突き進んで渾身の一撃を放った。砂埃が舞い、視界が遮られる。
しばらくして煙が晴れると、そこに立っていたのはJのみ。エレナさんはその場に倒れていた。審判のカウントは進み、十を迎え、Jの勝利が宣言される。
だがJは退場しようとせず、倒れたエレナさんへと近づき、さらに追い打ちをかけようとした。僕とライガは言葉を交わす前に動いていた。乱入し、僕は剣を構え、Jの首筋に突きつける。
「おい! 決着はついただろう。俺の家族に何をしようってんだ!」
「お前、今何をしようとしているか分かってやってんのか!!」
Jは大声で笑った。
「いやー、失敬失敬。あまりにも面白くてついね」
悪びれる様子もなく、僕は掴みかかろうとするが、ライガが制した。
「蓮の兄貴、今はそれどころじゃない。エレナを運べ。俺がこいつを見る」
その言葉に、僕はすぐエレナさんの元へ駆け寄り、抱き上げた。
「エレナさん! エレナさん!」と呼びかけると、かすかに目が開き、呂律を噛みながら言った。
「れ……ん……約束……守れなくて、ごめん……あとは……おねがい……」
その声を聞いて、胸が張り裂けそうになった。僕はエレナさんを抱え、病院へと走る。医者に見せると、すぐに手術が必要だと言われ、手術室の前で待つことになった。
待合室で、誰かがそっと隣に座り、頭を撫でられた。顔を上げるとアンシャがいた。
「心配だよね。私も信じられないよ、あの騎士団のエレナさんが負けるなんて」
アンシャは僕を抱きしめ、こう続けた。
「今は泣いてもいいよ。私、そばにいるから。あの人たちのしたことは許せないけど、一番許せないのは――あなたが一人で抱え込むことだよ」
僕は声にならない声で泣いた。アンシャは何も言わず、ただ抱きしめてくれた。
しばらくして医師が手術室から出てきた。僕はすぐに駆け寄り、声を震わせて尋ねる。
「どうでしたか?」
医師は静かに言った。
「命に別状はありません。ただ、しばらく入院が必要です」
その言葉を聞いて、僕は大きく胸を撫で下ろした。
帰り道、僕は決意を固めていた。何がなんでもあいつに勝つ。優勝して、エレナさんの分まで――必ず戦い抜くと誓ったのだった。
次回もお楽しみに




