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第27話 恋の芽生え

27話書きました是非読んでください

アルシエルに滞在して数日後。

ようやく兵の準備が整い、僕たちは突き止めた研修所へと向かった。

静かに中へ侵入し、探索を進めていると――

奥の部屋から、不気味な笑い声が聞こえてきた。

そっと覗くと、そこには一人の男がいた。

男は口元を歪め、楽しそうに笑いながら言った。

「――あの女も災難だな。あんな奴と一緒にいるから記憶を奪われるんだよ。無様だよなぁ!」

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなった。

アンシャのことを侮辱された――それだけで、怒りが爆発しそうだった。

僕はライガに目で合図を送る。

次の瞬間、兵たちが一斉に突撃した。

驚いた男は目を見開く。

僕はその隙を逃さず、剣を構えて飛び出した。

「な、なんでお前がここに……!? 場所は分からないようにしておいたはずだ!」

男の叫びを無視して、剣を握り直す。

もう、言葉はいらなかった。

「おいおい、そんな顔してどうした? あの女のことがそんなに大事か?」

男はまた下卑た笑みを浮かべて言った。

「教えてやろうか? あの女は、お前のせいで記憶をなくしたんだよ。

俺が襲ったときなんて、お前の名前ばっか叫んでたぜ? 笑えるだろ!」

その瞬間、何かが弾けた。

気づけば、僕は男の顔面を殴りつけていた。

何度も、何度も。

「もう……喋るな。」

感情のままに拳を振るう。

倒れた男を蹴り飛ばし、最後に叫んだ。

「――チェイン!!」

鎖の魔法が発動し、男の体を拘束する。

だが、もう抵抗する力も残っていないようだった。

「へっ……せめてお前にも、見せてやるよ……“メモリー”!」

そう呟いて、男は意識を失った。

だが次の瞬間、僕の視界が白く染まる。

脳内に、見たこともない光景が流れ込んできた。

――僕に似た少年が、親に殴られている。

何度も、何度も。

息が詰まるほどの恐怖と痛み。

その映像を見た瞬間、僕の意識は闇に飲み込まれた。

***

どれくらい経っただろうか。

まぶたの裏に光を感じ、ゆっくりと目を開けた。

そこには、心配そうに見つめるエレナとライガの姿があった。

「よかった……外傷はないよ。心配したんだよ。」

エレナが安堵の息を漏らす。

「すいません……アンシャは?」

「記憶が戻ったみたいだよ。今、呼んでくる。」

そう言って二人は部屋を出た。

数分後、アンシャが病室に駆け込んできた。

僕を見るなり、まっすぐに近づいてくる。

「……本当に、ごめんなさい。エレナさんから全部聞きました。

それなのに、そんな私のそばにいてくれて……ありがとう。」

そう言って、アンシャは僕に抱きついた。

泣きながら、それでも笑顔を見せてくれた。

「貴方と約束しましたから。――いつまでも一緒にいるって。」

僕は頭を撫でながら言った。

そして、決意を込めて続ける。

「あとでエレナさんとライガも呼んでください。話しておきたいことがあるんです。」

***

全員が集まると、僕はゆっくりと口を開いた。

「僕の本当の名前は――林薫です。

そして、僕はこの世界の住人じゃありません。

一度、死んでから……この世界に来たんです。」

その場の空気が止まった。

「え……? 一度死んでるって……どういうこと?」

エレナの声が震えていた。

僕は静かに、自分の過去を語り出した。

――虐待され続けた幼少期。

逃げ出して、倒れかけた自分を拾ってくれた林夫妻。

花屋を営む優しい夫婦がくれた「家族」という言葉。

母が教えてくれた、カーネーションの花言葉。

“母への愛情”“家族愛”――その言葉が僕の心を救ってくれた。

やがて林家の子として生き、19歳のある日。

トラックに轢かれそうになった女の子を助けようとして……僕は死んだ。

そして、気づけばこの世界にいた。

全てを話し終えたとき、エレナは涙を拭いながら言った。

「やっぱり……貴方は今も昔も変わらない。いつも誰かのために動くのね。」

「この話をしたのは、僕にとって一番大切な人たちだからです。」

「ありがとう、蓮。……あ、もう“薫”って呼んだ方がいい?」

「いえ、これからも“蓮”でお願いします。」

エレナとライガは微笑んで病室を出ていった。

***

静かな部屋で、アンシャが僕を見つめる。

「蓮、大丈夫? 何か考えてるの?」

「……僕は、本当にここにいていいのかなって思って。

正体が分かった。僕はこの世界の人間じゃない。

それに、アンシャを傷つけた奴を……本気で殺そうとしてしまった。

そんな自分が、怖いんです。」

アンシャはそっと僕を抱きしめ、優しく言った。

「ふふ、貴方らしくないですね。

でもね、それは私のために怒ってくれたからでしょ?

素性なんて関係ありません。

貴方は、私たちにとって“蓮”という大切な人なんです。」

そして、少し涙を浮かべながらも微笑んだ。

「辛いときは言ってください。

いつでも、こうして慰めてあげますから。

蓮――貴方にはずっと笑っていてほしい。

だから、どんなときも私がそばにいます。

……だからね、笑って。」

その笑顔を見て、僕も笑った。

「はい。ありがとうございます。」

窓辺に一輪、紫のライラックが飾られていた。

その花言葉は――“恋の芽生え”。

まだ伝えていない想いが、僕の胸の奥で静かに芽吹いていた。

アンシャの記憶が戻り蓮の記憶戻りました良かったです次回もお楽しみに

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