第25話「約束の花屋へ」
25話書きましたがこれからも頑張りますのでよろしくお願いします
あれから数日が経ち、僕は無事に退院することができた。
外の空気を胸いっぱいに吸い込むと、少しずつ日常が戻ってくるような気がした。
退院して最初に向かったのは、もちろんアンシャさんのところだ。
今は孤児院が使えないので、エレナさんの部屋を借りて生活しているらしい。
僕は宿舎に戻ると、エレナさんの部屋の扉をノックした。
「はーい、どうぞ」
優しい声に促されて扉を開けると、次の瞬間――
「おかえりなさい!」
アンシャさんが勢いよく抱きついてきた。
「……ただいま」
笑顔を見せる彼女につられて、僕も自然と笑ってしまう。
「ねぇ、アンシャさん。今から花屋に行きましょう」
「わかりました。準備しますので少し待ってくださいね」
彼女が嬉しそうに支度を始める姿を見て、僕の胸の中にも小さな灯がともる。
そして、僕たちは馴染みの花屋へと向かった。
店の中は、花の香りと静かな音楽に包まれていた。
「前みたいに、私に似合う花を選んでくださいね」
「じゃあ、僕の分もお願いしていいですか?」
そう言いながら、僕たちはそれぞれ花を探し始めた。
僕は悩んでいた。前に似合う花を贈ったばかりだから、今度は違うものを……。
そう考えているうちに、ふと思いついた。
――気持ちを伝える花を贈ろう、と。
少し歩き回って、ようやく見つけたその花を手に取り、ラッピングをお願いした。
ちょうどその時、アンシャさんが戻ってくる。
「見つけましたよ。お花。でも、貴方に似合う花を選ぶのは難しかったので……私の気持ちをプレゼントします」
そう言って、彼女が差し出したのは九本の薔薇だった。
「綺麗でしょ? 花言葉は“いつまでも一緒にいてください”。……私は、貴方にそう思ってほしいから、これを選びました」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
「ありがとうございます。僕も気持ちを込めて、これを贈ります」
僕が渡したのはミムラス。
「花言葉は“笑顔を見せて”です。僕は、貴方が笑ってくれていると嬉しいんです。だから、これを選びました」
「……わかりました」
アンシャさんは少し照れながらも、満面の笑みを見せてくれた。
そのあと、僕たちは近くのベンチに座って、しばらく話をしていた。
穏やかな時間が流れる中、アンシャさんが僕に寄りかかるように抱きついてきた。
「ねぇ、お願いがあるんだけど……いいかな?」
「なんですか?」
「もう“アンシャさん”って呼ぶの、やめてほしいな。ずっとさん付けされてると、なんだか距離を感じちゃう。……私も、蓮って呼ぶから」
少し戸惑った僕を見て、彼女はくすっと笑う。
「言ってくれないと、もう笑ってあげないよーだ」
その表情に負けて、僕は小さく息をついた。
「わかりましたよ、アンシャ。これからも笑ってください。笑顔を見せてください」
「ふふっ、それでよろしい。……よろしくね、蓮」
彼女の笑顔を見ていると、不思議と心が穏やかになる。
――ああ、この笑顔をずっと守っていきたい。
そう思いながら、僕はふと聞いた。
「アンシャ、これいつまでこうしてるの?」
「家に帰るまで……もっと、貴方の温もりを感じていたいの」
「わかりましたよ」
そう言って笑いかけたが、返事がない。
見ると、彼女は僕に抱きついたまま、すやすやと眠っていた。
やれやれ、と苦笑しながら、僕はアンシャをそっとおんぶした。
夕暮れの風が優しく吹き抜ける中、僕は心の中で静かに誓う。
――これからも、この人の笑顔を守っていくんだ。
奪われた記憶。お楽しみに




