20話 炎と英雄
こんにちは、読んでくれてありがとうございます!
今回の話は少し長めになっています。
蓮が正式に英雄として認められ、ライガとの出会いと決闘を描く重要な回です。
どうぞ最後までお付き合いください!
そして次の日。
僕は早くに目を覚まし、準備を整え始めた。
支度の途中、部屋の扉が開く。
「おはようございます、エレナさん」
「おはよう、蓮。いよいよ今日だね。……頑張って」
「ありがとうございます。頑張ってきます」
そう言って部屋を出る。
その頃、城の前の広場では、すでに多くの民衆が集められていた。
壇上に立ったカイルさんが、深く息を吸い込み、声を張り上げる。
「どうも、ヴァルセインの国民たち! 今日は集まってくれてありがとう!」
カイルさんの声が響くと、場が静まり返った。
「今日集めたのは、前の国際会議の結果、それから大切な報告があるからだ。
まず――会議時のアンケート協力、感謝する。
先日、国際会議で話し合われた議題は“蓮”についてだった。
お前たちも知っているだろう。この国で“何でも屋”をやっている青年。
そいつは記憶喪失で、素性が全くわからない。
だが――見たことのない魔法を使って、この国のために戦った。
それが他国には、脅威と映ったようでな。
蓮は命を狙われる立場にまでなった。だが、結果として彼は生き残った。
……それは、お前たちのアンケート結果があったからだ。
国王として、心から礼を言わせてくれ」
カイルさんは深々と頭を下げた。
民衆はざわめき、誰もが「その蓮って、そんなにすごいのか?」と囁いた。
「今、そう思ったやつもいるだろう。
――だから、証拠を見せる。」
カイルさんが横に立つアンナに視線を送ると、
アンナが装置を操作し、城の壁に映像が映し出された。
そこには、カイル・イリス・セリナの三人が会議で蓮を庇い、
そして蓮がカイルと互角に戦う姿が映っていた。
会場は息を呑んだ。
沈黙のあと、カイルさんの声が響く。
「見てもらえばわかる通り、蓮は確かな力と優しさを持っている。
だが、今日はそれだけじゃない。アンナからも報告がある」
アンナが前に出て、明るく言う。
「みなさん、こんにちは! エレナの姉、アンナです!
今日はある発表をしにきました!」
そう言って取り出したのは、金属の腕輪のような装置。
「この装置を使うと――“魔法を使えない人”でも魔法を扱えるようになります!」
民衆がどよめく。
信じられないという声があがる中、アンナは笑って言った。
「嘘だと思う人もいますよね? では、実演してみましょう」
そう言うと、彼女は何もない空間に手をかざし――
光とともに一本の剣を出現させた。
歓声が爆発した。
「この装置を完成させるために欠かせなかった人がいます。それが――蓮です!
蓮の魔法をベースに研究を重ね、ついに試作品が完成しました。
つまりこの装置は、蓮なしでは生まれなかったのです!」
大歓声が広場を包み込む。
そしてカイルさんが再び前に出た。
「……そこでだ。これほどの功績を上げた彼を、そのままにしておくのは惜しい。
今日から、蓮に“英雄”の称号を授与する!!
――蓮、前へ!」
名前を呼ばれ、僕は壇上に上がる。
「どうも、皆さん。蓮と申します。
誠心誠意、この国のために尽くします。どうかよろしくお願いします!」
歓声と拍手が一斉に湧き起こった。
「そして、蓮には今後、他国との交流を任せることになる!
さらに、アンナが発表した装置を研究し、
将来的にすべての家庭に行き渡るよう進めていく!!」
その言葉で報告会は締めくくられた。
城内に戻ると、エレナさんが駆け寄ってきた。
「よかったね!」
「はい。とても緊張しましたが、皆さんに認めてもらえて……本当によかったです」
そう笑い合っていたその時――
目の前に、ひとりの青年が立っていた。
淡い赤髪に、炎のような赤い瞳。
まるで燃える焔の化身のような少年。
その背後から、カイルさんが歩み出る。
「蓮、昨日言ったろ。お前につける護衛だ。
俺が一番信頼している部下――ライガ・バーンフィールドだ!」
隣でエレナさんが小声で囁く。
「彼は“炎の貴族”バーンフィールド家の末裔。
でも短気で素行が悪く、カイルさんに叱られてばかりの問題児。
ただし、実力は折り紙付きよ。
ただ――“自分より強い者にしか従わない”っていう、ちょっと厄介な性格だけどね」
その言葉を裏付けるように、ライガがきっぱり言い放った。
「カイルさん、俺はこいつを気に入らねぇ。まだ認めちゃいねぇ!」
「おいおい、そんなこと言うなよ。
そんなに言うなら――決闘で決めればいいじゃねぇか」
カイルさんの言葉に、ライガは口の端を吊り上げる。
「上等だ! 今からお前に決闘を申し込む!」
「……分かりました。案内してください」
僕はそう答え、カイルさんの横を通り過ぎた時、
彼が静かに言った。
「俺を認めさせたみたいに、あいつも認めさせてやれ」
僕は頷き、エレナさんと共に決闘場へ向かう。
場内はすでに人で埋め尽くされていた。
真剣勝負。逃げ道はない。
「始め!」
審判の声が響いた瞬間、ライガが一気に踏み込む。
僕も短剣を二本召喚し、応戦した。
剣と剣が激しくぶつかり合い、金属音が響く。
「へっ、やるじゃねぇか!」
「ありがとうございます」
「なら、これならどうだ!」
ライガの剣が一瞬で炎を纏った。
僕はすぐに距離を取る。
「なるほど、炎魔法が使えるんですね」
「当たりだ!」
「じゃあ、僕も本気を出します!」
短剣に異なる属性魔法を纏わせる。
片方にウォーターとウィンド、もう片方にファイアとサンダー。
観客がどよめいた。
「お前……全属性使えるのか!?」
「はい、そうです!」
僕は魔法を発動させながら叫んだ。
「スモーク!」
辺りが真っ白な煙に包まれ、視界が消える。
魔力感知でライガの位置を捉え、一気に踏み込む。
「ここだ!」
剣を振り抜き、ライガは驚愕の表情で受け止めた。
だが、連撃に押され、ついに膝をつく。
煙が晴れた時、僕の剣先がライガの首筋に向いていた。
「……完敗だ。お前、すげぇな」
「ありがとうございます。でも、あなたの炎もすごかったです」
そう言うと、ライガは笑いながら頭を下げた。
「さっきまでのご無礼、申し訳ございませんでした!
今日から、あなたの護衛として仕えさせてください――蓮の兄貴!」
「……蓮の兄貴?」
「はい! 最初は認められなかった。
でも今日わかった。あんたは強くて、何より“人として立派”だ。
惚れたよ、蓮の兄貴!」
僕は笑って手を差し出した。
「もちろんだよ。これからよろしくな、ライガ」
「おう! 兄貴!」
歓声が沸き上がる中、僕たちは固く握手を交わした。
――この日、僕は本当の意味で“英雄”と呼ばれるようになった。
そして、炎のように熱い仲間を得たのだった。
今回も読んでくれてありがとうございました!
蓮の英雄としての第一歩と、ライガとの出会いを描きました。次回もお楽しみに




