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第19話 カスミソウの花言葉

第18話まできました。これからもよろしくお願いします

会議の喧騒が去った夜、別室では違った空気が静かに膨らんでいた。

重厚な扉の向こう、深紅のカーペットが敷かれた室内で、リヴァンド・ベルティアは椅子にもたれ、冷ややかな笑みを浮かべていた。外見には出さぬが、心の中では怒りが燃えている――なぜあんな奴が認められるんだ。得体の知れないやつが。もし他国が奴を殺さないのなら、私が裏で暗躍してでも始末してやる。だが、もし私がやったとバレたら、その時はただじゃ済まない――と、酒を嗜みながら思案していた。

そのときだ。開くはずのない扉が軋んで開き、見知らぬ男が部屋に入ってきた。

「お前は誰だ! 許可なく入るな! 護衛が見張っていたはずだ、なぜ入れる?」

リヴァンドが問い詰めると、男は何も言わずゆっくりと彼の前まで歩み寄り、冷たい低い声で言った。

「――あの少年のことを許せないんだろ? 俺が代わりに殺してきてやろうか?」

リヴァンドは目を細める。

「何? お前がやるのか」

「もちろんだ。俺から持ちかけた話だ。やれと言われればやる」

リヴァンドは心の中で計算した。これなら私の手は汚れない。万が一露見しても、この男一人の責任にできる──と。やがて彼は静かに頷いた。

「よし、わかった。頼む、あいつを殺してきてくれ。望みはなんだ?」

「その依頼を承ったなら、報酬はお前のところの国の幹部にでもしてもらおうか」

こうして、蓮たちの知らぬところで、不穏な存在が蠢き始めていた。

そのころ、僕たちは無事ヴァルセイン帝国へ帰還していた。

「やっと帰ってこれましたね、エレナさん、アンナさん」

と言うと、二人は揃って微笑んだ。

「そうね。今日は色々あったから、よかった」

僕たちはそのままカイルさんの部屋へ案内され、再び集まって話し合った。カイルさんは真剣な表情で口を開く。

「これからのことを決める。まず、この会議で決まったことは後日国民を全員集めて報告する」

「まず決めることは、これから蓮の生活についてだ」

僕は驚いた。

「え! これから僕はどうなるんですか?」

カイルさんは笑いながら肩をすくめた。

「安心しろ。殺したりはしない。お前はこれからこの国の英雄として過ごすことになる。だから、お前を守らないといけないんだ。あの会議でリヴァンドが納得していなかった。いつお前に攻撃してくるか分からん。だから対策を整えておきたい」

改めて“英雄”という称号の重さと重責を実感する。

「とは言っても、お前はどうしたい?」と問われ、僕は素直に言った。

「できれば今まで通り暮らしたいですけど」

カイルさんとエレナさん、そしてアンナさんは笑った。

「お前は本当に欲がないな」

「なら、これからも今まで通り過ごせ。ただし、陰で護衛はつける。これは譲れない」

僕は一つだけ頼みを出した。

「カイルさんが認めた人を一人だけ護衛にしていただいてもいいですか?」

「わかった。一番いい奴をお前の護衛につけよう」

次に外交の話題になり、カイルさんが言った。

「さっき賛成してくれた国たちとの外交を交わしたい。悪いが、英雄であるお前にも協力してほしい」

「わかりました。エレナさん、アンナさんも一緒にお願いできますか?」

「もちろん!」とエレナが笑い、アンナも隣で頷いた。

「私も行きます、蓮」

カイルさんは満足げに頷いた。

「よし、決まった。解散だ。蓮、明日国民を集めて、お前が英雄になったこと、そして魔法が使えない人が魔法を使えるようになることを報告する。必ずアンナと一緒に壇上に立ってくれ」

「わかりました。準備しておきます」

僕が部屋を出ると、カイルさんとエレナさん、アンナさんが残り、穏やかな会話をしていた。

「本当に、なんでも引き受けてくれる優しい人ですね、カイルさん」

「そうだな。あいつは人望が厚い。だからこの国の人に慕われている。英雄っていう称号はいつか彼に似合う」

「あなたがそんなこと言うなんて、よっぽど気に入ってるんですね」

「最初はイケすかねぇ奴だと思っていたが、今はなんとしてでも守ってやりたいと思えるほどだ」

その日の夕暮れ、僕は孤児院へ向かっていた。手には霞み草の花束を持っている。

「ついた」――扉の前で少しためらい、ノックしようとした瞬間、勢いよく扉が開いた。出てきたのは紛れもないアンシャだった。

「えっと、アンシャさん、帰ってきました」

気まずく言うと、アンシャは目に涙を浮かべながら僕に抱きついてきた。

よかった。本当に心配したんですよ。もし本当にあなたが死んだらどうしようって」

彼女の目の下にはクマができていた。眠れていないのだろう。僕は胸が締め付けられるようになり、そっと抱きしめ返した。

「本当にすみません。けどこうやって帰ってこれたのもあなたのおかげです。」

驚いたアンシャさんに、僕は続けて言った。

「これ帰ってきてから買ったんです。名前は霞み草っていう花で綺麗ですよね。僕はとても大好きです。花言葉もとても大好きです。花言葉は感謝、そして幸福という意味があります。僕はあなたに出会えてよかったです。だってアンシャさんの頼みがなかったら、おそらく僕はこの場にいなかったと思います。ありがとうございました」

アンシャさんは目を潤ませ、しばらく言葉を詰まらせた後、にっこりと笑った。

「……本当に、蓮さんらしいですね」

僕は少し照れながら冗談を言った。

「これで、許してもらえますか?」

アンシャさんはいたずらっぽく笑って答えた。

「じゃあ、今度アルシエル王国に連れて行ってくれたら、許します」

「わかりました。今度の休みにでも行きましょう」

孤児院を後にし、帰路につく。アンシャといると心が落ち着くが、どこか胸がドキドキしている自分に気づく。――この気持ちは、何だろう。

アンシャさん安心して良かったですね次も是非みてください

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