2話
「んっ……」
「お嬢様‼︎ 今、旦那様たちをお呼びしますね‼︎」
また同じような光景を目にする。お仕着せを着た女性が慌ててドアを開け、家族を呼びに行ってくれるらしい。しばらくすると複数の足音が聞こえてきた。
「ソフィア‼︎ 大丈夫か! 一度目を覚ましてまた意識を失ったと聞いたぞ‼︎」
今度は濡羽鴉のような黒色の髪の毛で翠色の瞳をした美形のお父様が覗き込んでくる。その後ろにはお母様とお兄様が続いた。
「……お、とうさま?」
「そうだ! お父様だ‼︎」
「ソフィア、お母様よ!」
「僕はお兄様だよ!」
「私は、っうぅ!」
「ソフィアゆっくり体を起こして……」
「まだ安静にしてなくてはダメよ……」
「まだ混乱しているのかな……?」
「いいえ、大丈夫です。私、思い出しましたわ……」
「よかった……」
「私は、ソフィア・クラウディア。クラウディア公爵家の長女で今年で6歳ですね?」
「そうよ……思い出せてよかったわ」
「そして……贈り人、ですよね?」
「「「……!」」」
「……そうだ。だけど何もしなくてもいいんだ……」
「そ、そうよ。あなたはこのままでもいいのよ……」
「そうだよ! ソフィアは何も気にしなくていいんだよ!」
「いいえ、私は全てを思い出しました」
「「「……っ!」」」
「私は、お料理やお菓子が作りたいです……」
「別に義務ではないんだよ?」
お父様は困ったように優しく問いかけてくれる、でも……。
「お父様、私は嫌です。この世界の食事は、なんというか独創的なのです‼︎ …………正直、私の好みではありません‼︎ なので作らせて下さい!!!」
そう、この世界の食卓事情は前の世界に比べて随分遅れているのだ……。この世界ではスパイスは高価で高貴な身分の人ほどスパイスをかけている。肉にスパイス、サラダにスパイス、スープもスパイスと身分が上になればになればなるほどスパイスの味しかしないのだ。それと、肉は脂身の部分しか出されないからとても脂っこく、スープも肉の脂が足される為とてももったりとして、重いスープに仕上がっている。
……とにかくこんな食事はもう嫌だ‼︎ 前世を思い出してしまったからにはなんとしても前世の食事をこちらに広めたい‼︎
「……そこまでいうならいいが、くれぐれも怪我だけは注意してくれよ」
「はい、ありがとうございます!」
「ソフィア、無理してはダメよ……」
「そうだよ、病み上がりなんだから」
「もう大丈夫ですよ! よく寝ましたから!」
「でも、1週間は安静にしているんだよ? 1週間後からなら料理を許可するよ」
「……わかりました。では、料理人の方を1人呼んできてはいただけませんか?」
「わかった、料理人を1人寄越そう」
「では、私たちはもういくからね? 絶対に安静にしているのよ?」
「僕も本当はここに居たいけど、勉強があるからもう、行くね?」
「わかりました! 安静にしてます‼︎」
その10分後に部屋の扉がノックされ許可を出す。
「お嬢様、お呼びとお聞きしました。いかがなさいましたか?」
「うん、あのね……作って欲しいものがあるんだ?」
「…………私の料理が気に入りませんか?」
「えっ! そんなことはないよ‼︎ ただ子供の私には少し早いかなって‼︎ だからね、素人ながらに考えてみたんだぁ……。でも、この通り倒れてしまったから自分では作れなくって……だからお願いしたいんだけど……」
「……! お嬢様、もしや贈り人の記憶が……?」
「……実は、そうなの。だから作ってくれない?」
「かしこまりました、このクラウディア公爵家の料理長ガルドが僭越ながらお作りいたします‼︎」
「えっ! 料理長だったの……?」
「はい、若輩者ながら料理長をさせていただいております、ガルドと申します。以後お見知り置きくださいませ!」
「あぁ、うん。よろしくね、ガルド料理長……」
「ところでどんな料理をお作りいたしましょうか?」
「まずは私が説明する通りに作ったパン粥を作って欲しいの……」
「パン粥……ですか? 我々がいつも作っているものではなく?」
「うん、パンとミルクと少しの塩と胡椒を使ったパン粥を作って欲しい。
作り方は鍋に200mlのミルクと塩と胡椒を少々入れて味を整えたら1cm角に切ったパンを入れる。蓋をしてパンがミルクを吸ってふっくらした状態になったら完成よ。簡単なもので申し訳ないけど作ってきてくれないかしら?」
「かしこまりました、ただいまお作りします」




