1話
新しく連載を始めました。よろしくお願いします。
パティシエ→シェフに変更します
「きゃぁぁぁ!」
屋敷に一つの悲鳴が響き渡る――
「んぅ……ここは……」
瞼を開けた瞬間視界に飛び込んできたのは、金糸の刺繍が施された天蓋だった。光沢を帯びた布地は淡い光を受けて、宝石のように輝いている。ベッド脇にはテディベアがあり、広々とした部屋の中には繊細な彫刻が施された家具が並んでいる。
「お嬢様、目を覚まされましたか⁉︎ 奥様たちを呼んで参ります‼︎」
そういうとお仕着せを着た女性が部屋を出ていく。数分すると複数の足音が聞こえてきた。
「ソフィア、大丈夫⁉︎ あなた階段から足を滑らせて落ちてしまったのよ‼︎」
白金色の髪で水色の瞳をした綺麗な女性が私の顔を覗き込んだ。
「ソフィア、僕がわかるかい? お兄様だよ⁉︎」
もう1人、白金色の髪で翠色の瞳をした少年が同じように顔を覗き込んだ。
「……ぅぅう、み、ず」
「水だね! ソフィアこれを‼︎」
「……んっ、ありがとう、ございます。ところでここは、どこでしょう?」
「……そ、そんな。記憶喪失…‥? 私はお母様よ?」
「う、うそだ! ソフィア、お兄様だよ⁉︎」
「も、申し訳、ありません……っうっ!」
「「ソフィア‼︎」」
私は意識を失い、真っ暗闇に吸い込まれた。
私は…………セツカ、そう、小鳥遊 雪佳、23歳。フレンチレストランでシェフとして働いていたわ。
…………では、ここはどこなの――――
さまざまな映像を見せられた私は思い出した。そう、ここはアナ恋の世界なのね。正式名称は『あなたに恋した私と愛を育んでください‼︎』というやつで、世界中で大ヒットし、アニメ化や映画化、舞台にもなった超人気作の乙女ゲーム。
忙しい日々を送る私でもやり込み要素が多くてハマっていたゲームだった。乙女ゲームなのにヒロインを育てなきゃレベルが低くて敵にやられるし、かと言って攻略対象と過ごさなきゃ好感度は上がらない、乙女ゲームという名の超上級者向けの育成ゲームだった。それのおかげもあってか女性だけではなく男性もハマっていた人が多いと思う。
それで……私は死んでしまったのかな? ここにいるのが答えだよね……。名前はソフィア・クラウディア、乙女ゲームの悪役令嬢役……。公爵令嬢に生まれ、蝶よ花よと育てられた生粋のお嬢様。ただこの悪役令嬢、ヒロインより人気が高かったのよね、小説やゲームが続編として出るくらい人気だったなぁ。なんでかって? 虐めなんてしないでヒロインに正々堂々と注意をして、真正面からからぶつかっていたからだよ。
悪役令嬢が国外追放された時なんかネット上で暴動が起きてたなぁ。それで急遽運営が続編を宣言したんだよね。でも、これはゲーム上の話……。
現実世界ではどうなっているの? ………なるほどね。
私はこの世界では贈り人という立ち位置らしい。贈り人とは、別世界の知識を持った人達の事で国の発展になくてはならない存在らしい。生まれた時に太ももの内側に四葉のクローバーの痣が浮き出るんだって。でも、世間には大々的に発表はされない、もしかしたら記憶が戻らないかもしれないからね。記憶を思い出した贈り人はその人の持つ知識でその国に貢献し、保護をしてもらうんだって。でも、私は料理かお菓子しか知らないよ?…………。まぁ贈り人は稀に現れるらしいから家族に言っても大丈夫だね。
なんとか、なるよね?
そう結論づけると、今度こそ意識を手放した。




