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第4話

 教室に戻っても、遠野の姿は無かった。バッグが消えていたので、一度戻ってはきたらしい。誰もいない教室でしばらく立ち尽くしていた俺は、誰かの足音が聞こえて慌てて駆け出した。

 いや何で慌てる必要がある?慌てる必要……あるな。同級生の女の子を嘘ついて呼び出して、人気の無い場所で押し倒して何かを注射した。言い訳しようのない犯罪者だ。靴を履き替えて学校の外に出てからも、心臓はうるさく鳴り響いていた。どうする?どうしたらいい?今にも誰かが追いかけてきて捕まるかも。もう先生に、警察に話が行ってたら……。遠野の恐怖を形にしたような顔が何度も蘇る。

 俺、なんてことを。完全に一線を越えた。謝って許されるようなことじゃない。こんな薬、貰わなきゃよかった。あんな怪しい女についていくべきじゃなかった。

 ……そうだ、あの女。あの店に行ったら、何かできるんじゃ?何ができるのか分からないけど、何から何まで怪しいあそこなら、こういう時に使える何かがあったりとか。ほとんど駆け出すように通学路を外れて進み、雑居ビルの裏手に入る。昨日あの女と会った路地だ。あいつがいなくても、店に行けば誰かいるはず。何が書いてあるのかよく分からない看板と、地下に下りる階段を探して進むと、駅へと続く広い道に出た。見逃したかと思い引き返すが、路地にはそもそも地下に下りる階段がない。道を間違えたかと思い周りをうろつくこと小1時間。地下に下りる階段を手当たり次第に当たったが、あの味も素っ気もない茶色のドアはどこにもなかった。

「なんでだよ……」

 髪から汗が滴り、シャツがぐっしょり濡れている。暑さのせいなのか、冷や汗なのかもう分からない。ファーストフード店の横の壁に寄り掛かり立ち尽くす俺を気にする様子もなく、次々と楽しそうな人達が通り過ぎていった。

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