疑問
ジリリリリと、時計が鳴る。まだ太陽の昇っていない空。昨日正式にギルドに加入した俺は、シェニーが行う早朝の見回りに同行することになった。
まだ眠い頭を振りながら寮の入口に向かうと、もうシェニーは待ちくたびれたようにして立っている。
「遅い。七時半までに終わらねえぞ」
「そう言われても、、、学生の時こんな時間に起きたこと無いですよ。それに寄り道しても七時半には終わりそうじゃないですか」
「うるせえ、ここは学校じゃねえんだ。まあ、そんなことはどうでもいい。これはただの見回りじゃない。修行もかねてる」
シェニーいわく、魔力とは不安定なもので、ただ歩くだけでも揺らぐ、と。それをさせずに歩く__要するに魔力制御が今回の修行らしい。すぐに出発したのだが、
「めちゃくちゃ難しくないですかこれ?」
「だから七時半に終わらないって言ったんだよ」
魔力を制御するのに集中力が要り、どうしても足が遅くなってしまう。
「そうだ、何か話でもしようか」
「えぇ?!話までしたら、ホントに足が止まりますよ」
「はは、これも修行さ。私が話したいだけだが。なんでこのギルドに来たんだ?お前のところには関わりがないはずだが」
そうなのか、、、?じゃあなんで父さんは、、、
「俺の父がこのギルドだったんです。名刺を見つけて、ここにしてみようと」
「、、、私たちのギルドは名刺発行なんてないぞ」
「え、じゃあ」
「それに私は100年ほどここにいるが、、、」
「えっ!シェニーさん、何歳ですか?」
「女性に年を聞くな、殺すぞ」
「、、、はい。すいません」
「100年前、このギルドを創ったのは私だ。だが、デューラーという名字のやつはいなかったぞ。」
そんなバカな。じゃあ父さんの部屋に有ったあれはなんだというんだ。もし父さんじゃないとしたら、誰がどうやって、何のために、、、?
何分たっただろうか?見えるのは違う路地だった。
「おい、おーい、随分考え込んでるな」
いつの間にか日もあがり、生ぬるい光が路地に差し込んでいる。
「あっ、いや、まあ、それは気になりますよ」
「わかんねえことを考えてもしょうがないだろ」
そうかもしれないけど考えずにはいられなかった。
その後は街の観光と、大体の道を回った。ギルドの創始者がシェニーだと言うことを追及したかったが、それとなくかわされてしまう。
「さ、後は教会を回って戻るだけだ。道は覚えてるな。私は今日用事がある。じゃあな。」
「は、はい、、、」
ひどく唐突に放り出されてしまった。教会が、八時を告げる鐘を鳴らす。確かに七時半には終わらなかったな。
「エバンさーん!」
カノンの声が聞こえた気がするのだが、姿は見えない。、、、気のせいかな?
「エバンさーん!助けて下さい~」
どこだ?全く見えないが。
「上です、上~」
教会、その壁の装飾にローブが引っかかって宙吊りになっている彼女がいた。
どーしたらそうなる?!
長めのはしごをカードから戻し、三階くらいの高さに吊られている彼女を助け出す。
「なんでこんなことに?」
「教会の鐘を鳴らしたら、、、」
どーしたらそうなる?!
気を取り直し、ついでにあることを思い付いた。
「この教会、図書館ついてない?調べ物がしたくて」
「ありますよ。入って右の扉を開けたところに」
「ありがとう」
図書館の机に、メモ帳と、スキルに関するありったけの魔道書をおく。
·手で掴める、触れるものをカード化することができる。
·カード化には魔力が要るが、解放するときにはほとんど必要がない。
·一度にカード化できる空間の大きさは変えることができる。
·同じ性質を持つカードは重ねることで1つにできる。
これ以外にもスキルに能力がないか、研究しないと。ソフィアのせいで俺もすっかり研究好きになったな、と苦笑する。
さて、始めるか。そう思った矢先に声がかかった。
「エバン君、ギルドに正式加入したんだ、任務の1つくらい受けてきたらどうかな。習慣づけにもなる」
メガネに長身、ロングコートという出で立ちのシリウスが、図書館の入口から顔をだしていた。