決闘
「ちょっと待ってください、だから俺じゃありません!」
「それは結果が決めることだ」
「なに言ってるんですか!俺はそんな決闘しませんよ!」
「君に選択権はない。立場が違いすぎる」
冷たく言い放つ朱雀に、俺はだんだんと恐怖より怒りを感じてきた。動けないと思っていた殺気も、腹立たしさが跳ね返した。
「っ分かりました。けど俺が勝ったら、謝ってください、俺に対してこんなにも侮辱したこと」
「いいよ。これで条件成立だ。闘技場に移動しようか」
目の前の鉄柵が開いていく。円上の舞台に向かい合う。
「おい、お前の実力では私に勝つことは出来ないだろう。だから条件を変更してやる。一撃だ。一撃でも私に与えられたら、勝ちにしてやろう。そして私は初め10秒回避しかしないでやる」
あまりになめられてるな。まあ、事実な気がするけど。
でも10秒あれば、俺の得意な型に持ち込める。ソフィアでも、初見では裁き切れなかった。覚悟は決まった。後はぶつけるだけだ。
朱雀が口を開く。
「勝は度胸にあらず。また負も策略にあらず。ただ勝者のみ真なり」
「何を、、、?」
「決闘の口上だ。今から10秒猶予をやる。来い!」
殺気がより濃くなる。まるで実態を持つように俺を押し潰しにかかる。
「やるしかない!インフェルノ!」
朱雀の下に魔方陣が展開し、一瞬の光のあと、炎が吹き出す。軽々と避けられてしまうが、予想通りだ。
ある程度フルオート照準である代わり、地面や壁からしか発動出来ず、発動までタイムラグがあり、一度の詠唱も3発までと、使いにくい魔法、、、本来は。
『ちょっと思ったんだけど、そのスキル、魔法もカード化できない?』
ソフィアとの会話が思い出される。
『初級魔法のうち、ファイアボールや、ウォーターボール、ストーンショットとかは、発生に二段階あるの知ってるでしょ?』
『、、、聞いたことない』
『んー、これらの魔法は属性を持つ魔力を手のひらに顕現させ、それを高圧縮した魔力で打ち出すものなの。よくそんなうろ覚えで魔法使えてたわね』
ソフィアに指摘され、苦笑いする。
『でもそれと何の関係が、、、?』
『打ち出すまでは魔力を掴んで、、、』
『あっ!そうか!つまり火、水とかも掴める、、、つまりカード化できるってことか!』
ポケットからカードを大量に取り出す。それをバラバラに投げて、
「解放」
瞬光、そして炎が吹き乱れる。カード化されていたインフェルノは制限を大きく越える16発。
魔法を発動したのは別に今ではなく、前に発動しておいたものをカードに取り込んだだけなので、魔力消費もなければ、弱点となる縛りも消える。
それに合わせ地面から通常のインフェルノを発生。たまらず朱雀が宙に飛び上がる。
待っていた、この時を。
「紅蓮の弓矢!本命はこっちだっ!」
炎の矢が一直線に飛んでゆく。それは空中にいて身動きが取れない彼女を貫く、、、
一瞬だけ、刀を振るって矢の軌道をそらした朱雀が見えた気がした。そしてもう、まばたき一つの後、俺は刀を突きつけられていた。