四天が一人、朱雀
はあっ、はあっ、と荒い息をつく。
やっとのことで行き着いた山頂には、コロッセオを思わせる闘技場を備えた、ギルド「天奏」の拠点があった。
「それで、、結局あなたは、、だれです、、え?」
いない。どこに行った?さっきまではそこにいたのに。
唐突に首筋へ、冷たいものが走ってきた。目線だけを横に向けると、刀が首の横に沿わされている。
「質問に答えろ。何をしに来た?」
後ろから声がかかる。俺をここまで案内してくれた、あのエルフの声だ。
さらに俺は確信する。間違いない、一歩でも動けば殺される。そんな殺気が彼女から漂っている。
「なっ、何をって俺はただ、このギルドに加入するために来たんです。それ以上なにもありません」
ふん、と鼻で笑うような声がする。
「半月ほど前、ある村から、川の水量が少なくなったとの連絡が来た。どうせ誰かが、勝手に水路を引いただの、そう言う話だと思って私は行かなかった。だが、皆くびをかしげて帰ってくる。私が行くと、僅かだが川に魔力が流れていた。」
「その村の名前は何ですか?」
「知らん。わすれた。だがお前の通っていた魔法学校の下流の方だ。魔力が流れるのはおかしいことではないが、魔法を放つときのような揺らぎを宿すものがあった。それがお前と似ている」
いや、そもそも何で俺の学校を知っているんだ。疑いがかけられているのもわからない。まあ、心当たりが無いわけでは無いのだが、、、
「まあ、知らないならいい。受付はあそこだ」
「はっ、、はい」
案外すぐに、殺気から解放される。どっと疲れた脚を引きずり、受付へと向かった。
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「では、エバン·デューラー様、新規、Eランク冒険者として、カードを作成しました。最後に、カードへ魔力を流していただけると、、、朱雀さま!今日もまた帰りが遅いですね」
「心配しなくて大丈夫だよ。私が倒れるなんてことはないから」
この声、、、やっぱりギルドの関係者だとは思っていたけど、、
驚いたように振り向く俺に、彼女はあからさまに嫌そうな顔をする。
人見るだけでわざわざそんな顔せんでも、、、
「失礼しました、エバン様。カードに手をかざして下さい。魔力を流していただけると完成です」
言われたとおりにすると、カードに魔方陣が刻まれてゆく。
「では、これでカードが出来上がりましたので、依頼を請けることが出来ます。請けられる依頼は現在のランクの一つ上までとなっておりますので、気をつけてください」
「ありがとう。でも今日は疲れたから、依頼はまた今度にするよ。、、、あー、そうだ、どこかいい宿はない?実はまだ、見つけてなくて」
受付のひとは少し考えて口を開く。
「そうですね。少し古いですが、ギルドの社宅があります。ギルド会員なら安く泊まれますよ。」
場所を教えてもらい、外に出ようとする、、、が、また、とてつもない殺気に脚をとめられる。
「なっ、何ですか?」
「やっぱりな。お前だろう。水量低下の原因は」
「違いますよ!」
そんな声には耳も貸さず、彼女ー 朱雀は続ける。
「だが、ギルドメンバーを捕まえるのは出来ない、、、決闘するか」
「は?」
「四天が一人朱雀、Eランク冒険者エバンに決闘を申し込む。私が勝ったら、お前はギルド権限を返上し、騎士団に自首しろ」