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真の炎魔法


部屋を出る。モートに最初に案内されたのは鍛冶場だった。石造りのそこには金床と鎚、両側を粘土で覆った炎の燃えている所(火床と言うらしい)、それと鍛冶道具の置いてある棚だけの簡素な部屋。


二人のドワーフがミスリルを鍛えている。今はそれに火を入れている最中で、1人が火を操り、もう1人がミスリルの具合を確かめている。


「二人とも集中してるから小声で喋るぞ。俺たちが今見てるのはミスリルをより強度のある鋼にする工程だ。ここで術式も刻まれる。この後に武器の形を作っていくんだ」


火からあげ、真っ赤に熱されたミスリルを鎚で叩く。折り返して、叩いてゆく。火花が飛ぶ。


「あれはただ叩いている訳じゃねえ。折り返して叩く、いわば練ってるんだ。この作業で結晶が細かくなり、向きが揃うことでミスリルが硬くなる。それと叩く瞬間をよく見てみろ」


鎚が振るわれる。ミスリルを叩いたその瞬間、何かが現れ、すぐに火花となって消え去った。あれは、、、


「魔方陣、、、」

「そうだ。叩く瞬間に刻みたい術式を魔方陣として埋め込む。結晶を細かくする作業と同時に行うことで術式の吸着にムラをなくし、より強力で安定した魔道具を製作できる。ドワーフにしか出来ない芸当だぜ」


最高級の魔道具が作られている瞬間を目の前に見ながら炎に目を移した俺はふとあることを思い出した。


「なあモート、俺と闘ったときのファイアボールってどれだけの魔力を込めてるんだ?」

「普通のと同じだぞ」

「えー?どう考えても強化されてたように見えたんだけど」

「、、、あー、習わないのかあれ。魔法ってのは人間が思うよりずっとクリエイティブなものなんだ。見せてやるよ。ただし、お前のスキルを教えてくれ」

「えぇ?」

「ただの興味だよ。どうせ教えてもらっても俺にはできないし」

そう言われて鍛冶場を放れ、彼に案内されたのは里の外れにある空き地。


「俺のスキルは別に大したことないよ。魔法を含め、俺が物質と認識したものを魔力を用いてカードに変換する。植物はできるが動物はカード化できない。同じカードは重ねて一つにすることができる。条件としてカード化は触れることでしか発動しない。まだ曖昧だけど、手で触れられる距離で全貌が見えるものでないとカード化は出来ないっぽい。解放は触れなくてもでき、どれだけ離れていても可能だが、解放する物の内容を記憶していなければならない。他の人のものだと明確に分かるものはカード化により多くの魔力がかかる、とか意外と多いんだよなぁ」

「条件ありすぎだろ、、、俺じゃ到底覚えきれねえよ。スキル持ちも大変だな」

「まあね。使ううちに慣れるよ」


俺はジャケットをまさぐる。取り出したのは一枚のカード。黒いあめ玉の様なものが閉じ込められている。


「解放、、、実演するとこんな感じだ」

「なんだ?これ?」


そう。これは今回の任務の前にシェニーさんから託されたもの。


「ちょっとした通信機さ、2つあるから持っていてくれ」


今はまだ使わないが、相手が盗賊となると1人では対処が難しいこともある。その時援軍を呼ぶためにも必要だろう。その旨を話すとモートはすぐに承知してくれた。

次はモートの番だ。


「じゃあ、本当の炎魔法をおしえるぞ。見ての通りだが、これが普通のファイアボールだ」


手のひらサイズの火球がモートから放たれる。特に言うこともないただのファイアボールだ。


「だが少し手を加えるだけで、、、」


ふた回りくらい大きくなった火球が手から浮かび上がる。投げあげたそれをハンマーで打ち込む。威力も中級魔法に迫るほど上がっている。


「すごい、、、!」

「だろ!意外とやり方は簡単なんだ。風のイメージを魔法に組み込むんだ」

「どこが簡単なんだよ」

「魔法式は関数、魔力はインクに例えられるのは学校で習っただろ。もっとも、魔法はその式が現実に影響を持たせるのが重要なんだがな。そのインクを混ぜるんだよ。思考的にはふいごが当てはまりやすいかな。炎魔法以外でも出来はするが、炎が一番分かりやすい」


実践してみる。炎だけでなく風を組み込む。ふいごのように。同じ術式、魔力量でより強く。


「ファイアボール!」


撃ち放つ瞬間、術式が崩れるのを感じた。出現した炎は球の形を成さず、俺の手を燃やす。


「大丈夫かっ?」

「くそっ、熱っちぃっ!」


何とか制御を取り戻しはしたが、それは威力こそ高いがひどく不安定な代物だった。


「なあ、その手、、、」


包帯が焼け落ちてあらわになったのは赤黒い鱗ののようなものに包まれた手だった。火傷をした様子は無く、ただ痛みだけが少し残っている。明らかに人間のものとは違うそれに言葉を失っていると、モートが気を遣ったのか話題を変えた。


「行けそうか?依頼?」

「大丈夫だよ。もう体は動くし。明日にでも行ってくる。てか、そんなに強い魔法が使えるドワーフたちでも苦戦するような人たちなのか?」

「わからない。実は誰も、相手の姿を見た奴が居ねえんだ。姿が見えないのに攻撃される。魔力探知にも引っ掛からない」

「じゃあ、スキルによるものだろうな」

「お館様もそう見た。ドワーフはスキルへの実戦経験に乏しい。スキルへの対応ができる奴が欲しかったんだ」

「そうは言っても相手について分かんないんじゃなぁ、、、あれ?」


どんな仕組みなのか、手の色が戻り、人間の皮膚の硬さくらいに落ち着いている。その後何回か真の炎魔法を試してみたが、2度しか成功せず、手が硬化しただけだった。


結局、硬化についても訳が分からないまま、自分の中に何かいる感触と繋がりがあるのか?くらいしか推測出来なかった。そのまま俺は鉱山へ向かうこととなった。

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