意識の奥
目が、、、目が見つめてくる。暗い暗い、なにもない所から俺の方を見る真っ赤な二つの瞳。縦に開いた瞳孔が動く、、、ここは何処だ?
「俺に体を貸せ。根絶やしにしなければならない。誇り高き私を侮辱した罪、必ず償ってもらう」
声が聴こえる。誰だ、、、
突然、暗闇に口が現れる。牙のついた巨大なそれ。
食われる!そう思った時に俺は正気に戻ってきた。
カンテラがぼんやりと照らす室内。俺はベッドに寝かされていた。身体が酷く痛んで起き上がることが出来ない。
壁に俺のジャケットが掛かっている。手に魔力を込めるとカードが滑るように飛んでくる。
解放するとそれはポーション。アレクさんのところから貰ってきたトルクアップルの回復薬だ。リンゴから作ったとは思えないほど苦いそれを飲んでようやく立ち上げる。
部屋には鍵が掛かっていて開けられないのでノックすると、お館様が入ってきた。おそらくミスリルで作られただろう大斧を担いでいて、なぜか所々に包帯が巻かれている。
「お館様、、、でしたっけ」
「うむ。小僧、目は覚めたか?」
その瞬間殺気が飛ぶ。斧が首すじにあてがわれていた。体が痛んでいなくとも避けられなかったと思う。
「本当に戻ったようじゃな」
「、、、何のことです?」
「覚えとらんのか。お前は倒れ込んだあと、急に立ち上がると燃え始めたんじゃよ。それで終わったならただの急性魔力障害なのじゃが、、、」
どうやら話してくれたところによると体に炎を纏ったまま暴れだして、お館様が素手で何とか鎮圧したらしい。そう言われて初めて自分の身に付けているものが服ではなく包帯だと気づいた。
「まぁ、何にせよお前が強いのはわかった。ケガがよくなり次第鉱山へ向かってくれ。ああそれと、わしのことはゲンでよいぞ」
俺のせいで傷ついたのに非難するどころか強いやつと闘えて良かったともとれる顔に苦笑する。
「ありがとうございます、ゲンさん。一応歩けるので、今日は里を見て回りたいんですが」
「いいじゃろ。モート、案内してやれ」
服を着てから、ハンマーを携えたモートと部屋を出る。途端に彼はキラキラした目で尋ねてきた。
「おまえ、やっぱりハーフなんだよな。闘いながら思ってたよ。只者じゃないって」
何を言っているかまるで分からない。そんな俺をよそに彼は話し続ける。
「皮膚を硬質化してるのは鱗のようにも見えたな。何なんだあれ?」
「口を慎めモート、人の秘密じゃ。彼もそう軽く話されては困るじゃろ」
ゲンさんがたしなめる。1人だけ話についていけない。聞こうと思ったのだが、気にしなくていいから、と被せられ話す機会を失ってしまった。
雑談に変わってしまった2人をよそに考える。
炎を纏い、正気を失った俺。硬質化する皮膚。夢に出てきた光景は、妙によく覚えている。
そして今気づいたが、ジャケットだけ残っているのは、あれに耐火の術式が施されているということだろう。つまり母はこの事を知っていたと解釈できる。
夢が深層意識を反映するのなら、俺の意識の奥に巣くうは何者か。疑問を胸に、モートについて里を探索に出るのだった。




