百火繚乱
、、、この高さから着地できそうな物を持ってきてない。一か八か、詠唱で威力を上げた風魔法で衝撃を和らげるしかないか。
詠唱、人類がまだ到達できない魔法の秘密の一つ。理由は分かっていないが魔法を大幅に強化することができる。
「風よ、万物の根源よ、我、神と風の魔法の創始者アナクシメネスの名においてこの魔法を行使せん」
最高点に到達したのか体が落下し始めるのを感じる。今だ。
「Emergency · H· Wind」
魔力で薄く歪んだ蜃気楼のような風が竜巻の如く回転する上昇気流を生み出す。触れるだけで致命傷となり得るそれに守られながら俺はふんわりと地面に降下する。
風の刃で少しは時間稼ぎが出来るという予測は着地した瞬間に裏切られた。全身に細かい傷はついているものの大したダメージを受けていないモートが横殴りにハンマーを振るう。それに被せるように俺は叫ぶ。
「解放!」
実はカード化したインフェルノを風魔法のと一緒に撒き散らしておいた。空中に現れた魔法陣から照射される豪炎がオールレンジ攻撃となってモートを襲う。
防御に手一杯になっている彼に畳み掛けるべきなのだが、インフェルノの火力のせいで迂闊に近づくことが出来ない。一度飛び退いてさらに大量のカードを構える。
辛くも防ぎきられたが待ち構えるは第二撃。
「百火繚乱、ウィンドチャージ!」
初級のファイアボールから中級、そして上級のインフェルノまで、多種多様、圧倒的な量の炎魔法がカードから顕現する。それらを補佐するように風が渦をまき、火力が上がる。
「へっ!強化してそれかよ!、ファイアボール<マルチショット>!」
迎え撃つモートは初級の連射、だがどう考えても初級魔法ではない大きさの火球が次々と膨れ上がり、真上にトスするように軽く打ち上げたそれらがハンマーで叩き込まれる。
双方の魔法がぶつかり、もうもうと煙がたつ。この機を逃さない。煙幕の中を駆け抜けて肉薄する。
「捉えたぜっ!」
モートが振り抜いたハンマーは虚しく空を切る。隙ができた。さらに近づく。
「解放」
俺のその声と共にモートの後ろから炎の鎖が飛び出し彼を拘束する。対ニネヴェ戦でも使った汎用性の高いそれを、百火繚乱と同時に風でモートの背後に落としたのが、ここで役に立つ。
行ける!そう確信した俺は目の前に飛び込む。が、
嘘だろ、、、
モートは魔法での拘束を無理やり引きちぎるとハンマーを振るう。もうお互い避けられない。
「フレア·マグナム!」
「吹っ飛べっ!」
俺の炎の弾丸と、彼の燃える鉄槌。どちらが先に当たったのかは分からない。体が宙に飛ぶ。ついこの間もそんなことになったな、と皮肉に思いながら、俺は目を閉じた。




