ドワーフの里
話はエバンに戻る。
あまり遠くまで移動した気はしない。だが、めっきり人の気配が無くなった。そう感じるほど人の手が入っていない鬱蒼な森を抜けた先にドワーフの里はあった。
いきなり開けた俺の視界に入ってきたのは石造りの鍛冶場を備えた家々と石畳の道。奥には岩山がそびえ立っている。恐らくここが鉱山なのだろう。
カン、カンと心地よくリズミカルな音があふれる里。出迎えてくれたのは地面まで付きそうなほど伸びた髭を結わえたドワーフだった。
「お待ちください!お館様自ら出られなくても、、、」
それを追って出てきた二人も、俺の腰ほどの身長。髭が長いのも同じだ。
ドワーフ。亜人族のひとつで小柄な身長が特徴。本質的にはエルフと近いので実は寿命が長い。火と風の魔法を得意とし、金属を鍛えることを生き甲斐とするものが多い。そんな彼らしか精錬できないのがミスリル鉱石で、だからこそ数少ないそれの鉱山にはドワーフの里が形成されることが多い。俺が知っているのはそのくらいだ。
お館様と呼ばれた髭長は胡散臭そうに俺を見る。
「ひょろひょろしたの、お主がアレクの推薦か」
威圧感がすごい。戦士と言われても信じられるくらいだ。
「その程度でCランクなのか、聞いて呆れる。本当ならこんなひ弱はこっちからお断りだがアレクに免じてそれはせん。だが強さを試させてもらう」
と、従者の1人を呼ぶと、
「モート、このわっぱと戦え。タイマンじゃ。仕度をせい」
いきなりとんでもないことを言い出した。だがこれをこなさないと任務はさせないということなのだろう。せっかくここまで来たのに帰るわけにもいかないので、カードを整理し、モートの後に続く。
試合場所は里の道が一所に交差する中心広場(と言ってもそこまで大きい訳ではないのだが)となった。
「試合形式はタイマン、どちらかが倒れるまで行う。はじめっ!」
お館様の掛け声と同時にモートが構えるのは彼と同じくらいの大きさの角ばったハンマー。全面に彫刻があしらわれている。
それを振りかぶろうとした彼の殺気の起こり、それを撃つように俺は動く。解放、の呟きと共に靴で踏みつけるようにして仕込んでおいたカードが実体化し、炎の矢がモートを貫かんと跳ね上がる。
ノーモーションで放たれる魔法。相手の意表を突くのには十分な先制に続けて俺はカードを取り出そうとするが、そうはならなかった。
モートは難なく初撃を弾き飛ばすとそのままの勢いでハンマーを斜めに振り降ろす。そこまでは予測できたのだが、振り下ろしの途中で今までの速度が嘘のように跳ね返り、振り上げるようにして鉄槌が迫る。
避けきれない。防御魔法で直撃は免れたが、衝撃は防げない。俺は空高く飛ばされた。




