終わりと始まり
トルクアップルは、魔族の掘っていたトンネルに大量に封印したまま貯蔵されていて、後日、彼らの犠牲になった奴隷たちに手を合わせ、埋葬するのと並行して運び出した。
暗き骸となった奴隷たちと、生命の木の実の明かりにに心を痛めながら、ギルドに帰ったその日は、ユキメは何も喋らなかったし、俺も声は掛けなかった。
依頼に関しては、本当は四人で報酬を貰うべきなのだが、シェニーとシリウスは依頼が忙しいからと辞退したので大量のリンゴの報酬は、俺とユキメで二分することになった。
ポーション屋のおじさんは、アレクという名前で、新鮮なまま封印されているリンゴを見て過去一の出来になるかもしれないと喜んでくれたが、同時に採りすぎて来年の量を心配していた。
封印が解除できるのはユキメだけなので、ポーションを作る間じゅう店にいさせてもらった。ポーションについて説明を受けたが、それはまた後で話すとして、俺は帰り際、報酬と共に依頼をひとつもらった。
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ランクC
種類:山賊討伐
概要:ドワーフの里近くのミスリル鉱山に巣くう賊の
退治。
報酬:300G+ミスリル防具
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俺まだEランクなんだけどなぁ、と思いながらギルドへ帰ると、シェニーがニコニコしながら出迎えてきた。
「もうCランクか!やっぱり見込んだだけあるなぁ」
「は?」
当惑する俺に、バッジを見てみろと彼女はいう。
襟元に着けたバッチには、右下の花びらにCと書かれていた。付け替えた訳でもないのに。
「こいつはミスリルで出来てる。強さを測る術式を組み込んであるんだ、、、お前もしかして知らない?」
確かに座学は悪かったけど、そこまでじゃない。バカにするなと少しふくれる。
ミスリル、この鉱石に他と一線を画する値がつくのはその特異な性質にある。それは精錬すれば術式を刻んでも壊れない異様な耐久力、そして刻んだ術式の通りに形を変えられること、さらにそれでいて鉄とは比べ物になら無いほど軽いことだ。
バッチほどの大きさでもだいぶ値が張るはず。このギルド敷地といい設備といいどっから金出てんだ?
とそんなことを考えていると、依頼紙を見たのかシェニーが問いかける。
「あれ、お前これから任務行くのか?」
「いや、違いますよ。アレクさんから貰ったんです。友達の依頼だって言って」
「ははは、それ事態は嘘じゃねえが。アレクも人が悪い。お前を試したんだ。依頼に足る人間かどうか」
「え?試したって、、、」
「紅茶を出されなかったか?」
「出されましたけど、、、」
「それだ、あいつの最高傑作、天秤薬。制作者は飲んだものの心の善悪を判断できるらしい。本人もなんでそうなるか分からんらしいけどな」
「えぇ?でもなんでそんなことを、、、」
これだ。とシェニーは依頼紙を指差す。
「依頼の相手はドワーフだ。彼らは信義のあるやつとしか付き合わねぇ。だからこれは普通の依頼の形を取っているが個別依頼だよ。認められたんだ。行ってこい」
ユキメもいた方がすぐ終わりそうだな。そう考えて呼びに行こうとするが、止められる。
「あいつはやめとけ。ドワーフは魔族を毛嫌いしてる」
てことは一人で盗賊退治か、、、厄介なことになりそうだ。早く行けというシェニーの言葉に急かされ、俺はせっかく帰ってきたギルドを出るのだった。




