似ている
第13話 似ている
呪術、、、!忘れていた、魔族の奥の手。魔法が使えない俺にニネヴェが容赦なく蹴りをいれる。口から血が溢れた。
また爪が甘かった。いつもそうだ、重要な所を忘れて失敗する。学校なら、次は頑張ろうで済んだ。現実は、実戦では、一度でも失敗したら終わりって、分かっていたはずなのに。
「終わりだ。死ね」
ニネヴェが拳を構える。俺に向かって正拳が飛び、、、
ガキィィ!
俺の体には、その拳は届いていない。月の光を浴びて輝く刀。ニネヴェの一撃を受け止めたのは、、
「シェニーさん、、、」
「良く頑張ったなエバン。後は私に任せろ」
彼女の蹴りが命中し、ニネヴェは森の奥へとばされていった。
「おいバカエルフ、気取って後輩の前に出るのはいいが、今日あの日だろう。調子がでないなら変わるぞ」
「別に調子がでねえ訳じゃないが、訳もなく闘いたい日でもないからな。今回は譲ろう」
木陰から出てきたシリウスの言葉にケンカが始まるかと少しヒヤヒヤしたが、案外すんなりとシェニーは戦いを譲る。
ホッとして力が抜け、座り込んだ俺にユキメが抱きついてきた。
「よかった、、、よかったエバンがしななくて」
「ありがとう、あれ?ていうかどこで名前を?」
「そこのエルフのおばさんから、、、」
「お姉さんな。殺すぞ」
冷徹な笑顔にあてられユキメは俺の背へ隠れる。シェニーが俺の耳に口を寄せた。
「、、、私はそんなに老けて見えるか?」
「さあ、その殺気からオーガには見えても老けては見えませんけどね」
ドス!と頭に手刀が落ちた。ちょっとふざけただけなのに本気で手をあげるとはひどい。
「遊んでる場合じゃねぇ。私たちはユキメの誘導にしたがってトンネルを突き止めに行く。魔族の方は任せたぞ、シリウス」
「言われずとも」
俺がユキメを背負い、それをシェニーが護衛する形で進む。小走りに森の中を急ぎながら俺は尋ねる。
「シェニーさん。この人数で突撃するんですか?中には他にも魔族がたくさんいるはずなのに」
「日々の任務に疲れて寝ているメンバーを起こすほど私は偉くない。それに魔族の一小隊程度1人で破れなくては朱雀は名乗れねえ」
その時、俺は確かに殺気を感じ取った。一瞬進むことに躊躇した俺に構わずシェニーは進んでいく。
「前に敵が、、、」
「分かってる。前に10人、左右に魔力を抑えた伏兵が15人ずつだ。この人数なら突破できる。行くぞ!」
「まって!あたしにやらせて!」
ユキメが声をあげる。今度はシェニーまでもが驚いて足を止める。
「あたしのくびわは、なかまのしをかんじとれる。もうみんなは、いない」
「そんな、、、」
「おねがい、エバン、シェニー。くびわをかいじゅして」
「いいよ」
「タメだ。断る」
少し迷った後に俺とシェニーから出た言葉は全く逆だった。
「何でですかっ!」
「分からないかエバン。こいつは魔族なんだぞ。なんなら今連れていることすら反対だ」
「じゃあどうしろって言うんですか」
一呼吸おいて、シェニーは口を開く。
「殺すか置いていけ」
「嫌です!魔族でも、俺を助けてくれた人を殺すなんて非情なことできはしない!」
「バカか。敵だったらどうする。恩を売りこちらを誘い出したとも言えるだろう。こいつ一人なら私だけでも何とかなるが小隊を相手にしながらだと厳しい。それほどまでにこいつの魔力制御の質は高い」
「んなことは分かってますよ!でも、、、」
すがり付くように懇願するエバンを見て、シェニーは不意に、あいつのことを思い出した。言葉まで、似ている。




