呪術
第12話 呪術
俺に向かって突き出された腕は空を切る。
幻術魔法「陽炎」ーいかなる戦いにおいても、重要なのは相手を見極めること。本物は、、、
「解放ー炎戟槍雨」
「上かっ!」
バラバラに投げられたカードは炎の矢となり、あたり一帯を火の海に変える。スキルを用いた俺のオリジナル技。
その隙に俺はユキメを背負い全力で逃げ出す。今は戦うより逃げる方が重要。早くギルドに知らせなくては。
「なんで、、、なんでたすけたの?」
背中から声がかかる。ユキメが目を覚ましたようだ。
「まぞくなのに、、、」
「後悔すると思ったから。ここで君を助けなきゃ、ここで死んでも、逃げきれてもきっと後悔する」
「、、、ばか?」
分かってる。そんなことくらい。ユキメを見捨て、ギルドに戻るのが得策。でも、俺にはできない。
「振り落とされるなよ」
そう言ってユキメをひもで体に結び付ける。あいつが来る、気配がする。どこからだ?
前だ。ニネヴェは前から、余裕を持った目で出てくる。
「やれやれ面倒だ。俺もやらなければいけないことがあるのに」
その殺気からは、どうも話が通じる様子ではない。制圧はできなくても、追いかけられないぐらいにしなくては。
ナイフを右手に逆手で持ち、拳を構える。
「来い」
「行くぞ」
速い!目の前まで迫ってきた彼にカウンターを出すが、それは空を切る。上空に飛び上がったニネヴェのかかと落としをギリギリで避ける、、、
避けたつもりだった。掠りもしていないのに衝撃波で吹き飛ばされる。ユキメを庇いながら、何とか立ち上がった。
「魔法使いにしては動きが速い。接近戦にも慣れている様子だ。何者だお前は?」
ニネヴェが探るようにこちらを見る。魔族にはガンドファイター、魔法戦士と呼ばれるソロ向きの役職は無いのだろう。
魔法使いではあるが、戦士として接近戦もこなす。もっともそれぞれは専門職より威力は劣るが。採れる依頼の柔軟性が高く、冒険者の中でもっとも多い役職だ。
「まあいい」
ニネヴェの体が青白く光る。さっきよりさらに動きが速くなる。強化魔法か何かなのだろうか。またも間一髪でかわし、距離をとる。
それを追い、飛び込んでくる彼、、、
「解放!」
ガチャンと音がして、熊罠がニネヴェの片足に食い付く。動きの止まった隙を狙い、解放したインフェルノが周りもろとも焼き尽くす。だが、
「なっ、、、!」
防御魔法を使った痕跡はない。それなのに彼は無傷で立っていた。不敵に笑っている。
一瞬で俺の前に飛び込んでくる。まばたきの間に無数の蹴擊をくらい、俺は宙を舞う。
追いかけてきたニネヴェが俺に馬乗りになり、拳を振り上げ、そこで止まる。怒りと驚きの表情が見えた。
「貴様、ユキメをどこに逃がした!」
「さあね、解放」
360度、あらゆる方向から飛んでくる炎の鎖が、彼を拘束する。
かかと落としを喰らったときにユキメにカードを渡して逃がしたのだ。ここまで完璧な位置に設置してくれるとは思わなかったが。
この戦いは逃げるためのもの。無理してとどめを指す必要もないので、足早に立ち去ろうとする。
だがその時、ニネヴェの気配が変わった。凶暴さを全面に出した笑みが俺を捉える。
「奥の手を出したな。今度は俺の番だ」
ウソやハッタリではない。何が起こっても対処できるよう、全方向に気配を張り巡らす。
「呪術ー魔封じ」
彼をからめとっていた炎は弱くなって消え、自由となった両拳が俺を襲う。防御魔法も使えない。魔力切れが起こったような感覚。
何も出来ず、俺は殴り飛ばされた。




