卒業式
「エバン!エバン、起きなさい!卒業式に遅刻してどうするのよ、朝ごはんは作ってあるからとっとと食べて出なさい」
「えぇ?、、うぁ!やべえ、もうこんな時間か!」
だから言ったじゃない、と階段下から聞こえてくる声に、ハイハイとただ相づちを打ちながらもう着ることもない制服に袖を通す。
転がるように階段を下り、スープとサラダを流し込むと、トーストを口に詰め込みながらドアを開ける。
「いってきまーふ」
ふー、何とか間に合いそうだ。学校までの道を急ぎ目に歩く間も、ニヤけが止まらなかった。
「エバン!やけにご機嫌じゃん。そんなに嬉しい?」
目の前で空に浮いた美少女がニヤニヤとこっちを見ている。
「ソフィア!空歩いて登校するのやめなよ、、、目立つし、ここからだとパンツが丸見ゑ」
強烈なかかと落としをくらい俺は地面にめり込む。
「しょうがないだろ、見えちゃったんだから」
「見る方が悪いわよ」
「うっ、それは、、、」
「いいわよ。今日は許してあげるわよ。私も上機嫌だからね」
「は~い、ごめんって。ところで問題、俺は何故上機嫌でしょう?」
「スキル選定試験、と見せかけて親からの自立。そんなところでしょ」
「なんでわかるんだよ」
この国、アトラスでは15で魔法学校を卒業すると同時に親元を離れ、職に就き、一人で暮らせるようになる。あんな煩わしい親といるなんてまっぴらごめんだ。そう思ってきた俺には願ってもない日である。
そしてもうひとつ卒業式には大事なイベントがある。
「ソフィアは、やっぱりスキル選定試験の方が気になるのか?」
「そうだね。この空を歩く能力は昔から気づいてたけど、原理がわかるとまだまだ改良できるでしょ!」
「ハハ、ソフィアはそういうこと研究するの好きだもんな」
「エバンは何かスキルぽいものは、、、」
「今のところ無いんだよなー」
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さて、あまりに眠い。どうして式典ってこんなに眠いのだろう。
「賞状授与。本来なら分けて行われるはずだが今年度は全て同じ生徒のため、一度に行う」
「首席、二級魔法使い証、身体能力、その他4つの賞を卒業生代表、ソフィア·デュノクに与える」
やっぱり俺の幼なじみはバグといっていい。呆れるほどの天才だ。
てか、ダメだこれ、眠すぎる。
「エバン·クロック」
ん?
隣の人に肩を叩かれ、俺は目を覚ます。
「はっ、はい!」
いつの間にか卒業証書授与へと移っていて俺の名前が呼ばれるところだった。
壇上にのぼる。声を殺しながらも腹を抱えて笑っているソフィアのことは気にしないようにした。
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式典は終わり、スキル選定試験が始まる。もっとも試験とは名ばかりで水晶で自分のスキルを見るだけなのだが。