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第62話 イングラム帝国

 私は転移して逃げたミリステア達の様子を盗み見る事にした。


 二人が転移した場所はザザム荒野から西に六十キロ程移動した山の中にある洞窟を改装したと思わしき場所だった。木製の本棚なイスにテーブル、それに木箱とかが置かれた簡素な秘密基地みたいな場所だ。


 二人はイスに腰掛ける事もなく話をしだした。

「ミリステア様、あの男を生かして良かったのですか?」

「マヤ、この瓶の中の女王とやり合って無傷と言う相手を私達二人でするつもりだったの?」


「ヤツが戦った訳ではないかも知れません」

「それは力を温存する余裕があったという事よ、少なくともマリスの安全を確保していたという言葉に嘘はなかった。つまりそれだけの余裕があったの」


「…………」

「言ったでしょう? 少なくとも目的を達成した後に無駄な戦いを挑むべきではないわ。下手に刺激すればこちらの情報を得られる危険もあるし、分かるわね?」


「ミリステア様の意志に従います」


 上下関係がハッキリしてるな、それにしてもまさか二人だけの組織とかって事はないよね?


「それじゃあ急いで本国へと戻るわよ。ここで必要な物は全て持っていくわ、準備して頂戴」

「はっ!」

 あのマヤってクノイチもどきが何もない木製の本棚の元に向かう、何やら呪文を唱えると本棚が真横にずれた。


 そこには用途不明の様々なマジックアイテムの類いがあった。それを風呂敷に入れて包むクノイチもどき。

 そして仕度が完了するとまたミリステアが転移魔法を発動させた。


 そして更に西に百キロ程移動、そこは深い森の中だ。またもや人目につかないように巧妙に隠された秘密基地みたいな場所にでた。木々とツタに隠されている入口、そこで魔法を発動させると入口付近の木々やツタが独りでに退いた。


 そしてその中に入るとゾロゾロと黒く染めた軽装鎧を装備して顔を黒いマスクで隠した一団がいた。

 その一団のリーダーらしき男が前に出る。


「ミリステア様、お待ちしてました」

「ええっ任務は無事に完了しました。こちらを」

 ミリステアからガラス瓶を受け取った男は中の女王を確認する。


「これが古の女王ホルセシアですか。見た目は完全に小さなコブラですが、確かに途方もない魔力を宿しています。これなら……」


 男の後ろの部下達もどよめきが起こる。

「本当に黄金のヘビだ」

「しかしあの魔力、国を滅ぼしたって話もあながちでまかせではないぞ」

「これだ我らの大義へとまた一歩近付いたぞ!」

「だが油断は出来ないぞ、なにしろまだユストラルのアレが……」

「確かにな、あの国を出し抜くのは至難の業だ」


 男はガラス瓶を懐にしまうと部下達に命令する。

「もうこの地に用はない。イングラム帝国に引き上げるぞ!」


 ほうほうイングラム帝国ね。私が知りたかった君らの所属先を喋ってくれてありがとう。ここまで盗み見ドラゴンをしていたかいがあったよ。

 本来ならここで向こうに転移して連中を締め上げて情報を全て吐き出させてお終いなのだが…。


 ミリステアとその他大勢は転移魔法で姿を消した。私もそれ以上盗み見る事を辞めた。


 私はミリステア達を見逃した、あの調子ならマリスの元に連中がまた来る事はないだろうからだ。

 それに暗躍するイングラム帝国ね。いいよそう言うの嫌いじゃないんだよ、私も目的もなく旅をするのには飽きてきたしな…。


「イングラム帝国か、少し暇つぶしに相手してみるかな?」

 本気で情報を集めると直ぐに終わるし、イングラム帝国と真正面から戦争をしても直ぐにその帝国さんを潰してしまう。


 こちらは暇を持て余して下界に来たドラゴンである。暇つぶしにも工夫をしていこうかと考えるのだよ、今回のハーマストみたいく連中が何か暗躍してる国や街とかないかな? 直でイングラム帝国に乗り込むのと暇つぶしが終わってしまうのでなしの方向でいきたい。


 あの黒い装備の部下達がいたが連中が実はヒソヒソと会話をしていたユストラルとかって国の話を私は聞き逃さなかった。


 次のドラゴンの働き先が見えたな……あっ。

「そう言えば、あのドラプリがなんか言ってたな~~」


 本当にドラゴニアの王族ってさ、私の邪魔をしてばかりというかなんというか…。


 しかしこのストレスもまた久しぶりな代物だ、仕方がないな。ミーネの頼みたいお仕事とやらを受けてみるか、ユストラルって国もそんな直ぐにどうにかなる訳じゃないだろう、そんな風な会話していたしな。


 そんな訳でお楽しみはお預けだ。先ずはあのうるさそうなドラプリの仕事を優先しよう。

 その前にマリスに一件落着したことを話にいくか。


 私はジグラードへと向かった。


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