第44話 マリスの戦い
ザザム荒野に入ってから小一時間程経った。
モンスターの襲撃は最初のデカいヘビ以降はないが、油断はしない。私はキョロキョロと辺りを見回してながら移動する。
「アークそろそろ休むぞ。休憩くらい取らないと体力がもたん」
「マリスさんがそう言うなら分かりました」
適当に腰を下ろせる場所を見つけて休憩を取る、もちろん私は疲れてもいないがマリスは違う。こんな足場も悪い荒野を歩き続ければ疲れるだろう、伊達に日頃アトリエに引き篭もりしてる訳じゃない。
マリスがアトリエの外に出るとことか何気に私も初めて見たしな。
そんな事を考えているとマリスが何やらし始める。何かの魔法を発動させて魔法陣を生み出したのだ。
「マリスさん何をしてるんですか?」
「そろそろ私も戦う準備をしておこうと思ってな、これはゴーレムを召喚する魔法だ」
マリスはアトリエに幾つものゴーレムをボディガードとして配置している。種類は基本的に人型だがその戦闘力は私はあまり知らない。
ただそんなの召喚するなら初めから連れて来れば良かったのでは? と疑問に思うけどな。
「ゴーレムの召喚ですか? アトリエから連れて来れば良かったのでは……」
「コイツは森の移動には適さないんだよ、本当はザザム荒野に入る時に召喚するつもりだったがお前がそこそこ活躍したから今まで忘れていたんだ」
それ褒めてる? 褒めてるのそれ? マリスはフフンとお綺麗な顔でイラッとする笑顔をしながらゴーレムを召喚した。
召喚されたゴーレムは人型とは違った、上半身は人型に近いが下半身はゴツゴツしたホイールみたいなのが四つ付いてる。前方にバリケードを付けたオフロードバイクを二台並べて人型の上半身をくっ付けたような感じのヤツだ。
確かにこれは森の中を進めないな、横にも立てにも人間よりも結構デカい。しかしなかなかに見た目強そうな感じじゃないの。
「コイツは開けた場所での機動力と敵への体当たり攻撃はかなり強力だぞ、悪路にも対応出来るように足部分を凝ったゴーレムだ」
「確かに見た目も強そうなゴーレムですね」
こんなん作れるなら体当たり攻撃以外の手段も与えておあげて欲しいな、なんか勿体ないと思う私だ。
まあマリスが満足そうにしてるので何も言わないけど、それから休憩を終えた私達は移動を再開する。ザザム荒野の悪路を四輪ゴーレムは普通に付いてきた。本当によく出来てるゴーレムだな。
何気に私はマリスは錬金術師なんかよりもゴーレムマスターが本職じゃないかと思っている。だって錬金術師の方は何をしてるのかさっぱりだけどゴーレムの方は人間のレベルでも相当高い技術を持っているからだ。
「……………ん?」
モンスターの気配を感知した、私が足を止めるとマリスが低い声で喋る。
「モンスターか? なら今度は私のゴーレムが出るぞ」
「そうですかマリスさんがその気なら止めませんけど……」
「任せろ、バルギャーノの性能を見せてやる」
バルギャーノ? まさかこのゴーレムの名前ですか? 何というか個性的な名前ですな。
マリスが片手を前に出すと四輪ゴーレムのバルギャーノが前に出て行く。
モンスターの気配はするが姿は見えないのでまたどこかに隠れているらしい。
「……………そこだ!」
マリスが魔法を発動した、生み出された火球が私達から少し離れた場所に向けて発射、そして着弾する。地面が吹き飛ばされると同時にその地面が砕け、下の方から大きなクモのモンスターが現れた。
すかさずマリスの指示が飛ぶ。
「行けっバルギャーノ、体当たりだ!」
「────!」
バルギャーノが発進する、四輪の馬力はかなりの物で魔法を喰らって軽くパニックになってるデカキモスパイダーに一気に接近する。
バゴッ! と言う重い音が聞こえた、バルギャーノの渾身の体当たりは人間よりも大きなクモを吹き飛ばした。
バルギャーノを構成する素材が何かは知らないが、恐らく鉄よりも遥かに硬度が上の素材だろう。
あの速度でモンスターに体当たりしても全くヘコんだりしてないからな、鉄ならヘコむよ。
吹き飛ばされたクモは起き上がるとバルギャーノに向けて突進を開始する。意思疎通が出来ないモンスターは基本的に凶暴でありあまり逃げると言う行為をしない、相手が余程の存在でもなければ大抵のヤツにはケンカを売っていくスタイルだ。
ここにマリスや私がいる時点で戦っても勝てはしないのにやる気満々のおバカスパイダーである。
おバカスパイダーはバルギャーノと真正面からぶつかる、今度はお互いに力が拮抗してるのか互角の押し合いをしている。
しかし余裕はないのかあの何本もあるクモ足を全て踏ん張るのに回していた。そしてそこを攻めるのが我が師匠、マリスである。
「くたばれ! オラオラオラーーーーーーッ!」
オラオラオラって……まあいいか、マリスの攻撃魔法が炸裂する。幾つもの火球がおバカスパイダーの横っ腹に直撃した、ダメージを受けたおバカスパイダーはバルギャーノとの力比べに負けてあの四輪で轢かれてしまった。
「よしっ完全勝利! どうだアーク、これが私の実力だ!」
「……………凄いですね」
まあ大したもんだとは思うので褒めておく。




