第43話 森を抜けて
心底やる気をなくすけど、マリスが行くと言うのなら私はついて行こうと思う。何しろ留守番とか言われても暇なだけだからな、それなら嫌~な気分にはなるけどその洞窟に行こうじゃないの。
私はマリスの言うことを聞いた。明日出発という事なので今日は身支度でも整えるかと思ったがアイテムボックスの中から取り出すのも……面倒くさっ! と言う気分なので明日汚れそうなブーツでも綺麗にしとこ。
その日はマリスのアトリエ本店の個室を借りて寝ることにした。ベッドの質はジグラードの物と比べるとランクが低いので少し固い、しかし元は日本の貧乏社会人だった私にはこっちの方が合うのかもしれない。
その日はよく眠れた、翌日は早起きをしようと意気込んでいた私だ。
「………起きろ-! もう出発するぞ!」
マジかよ、時間にしてまだ十時過ぎとかそんなんだぞ?まだまだ睡眠タイムだろう。どうやら私の朝早くではマリスの活動時間には対応出来ないらしい。
「あと……二時間くらい寝ません?」
「ふっざけるな! もう私は一人で行くからな!」
マリスはズカズカと部屋から出て行く、置いて行かれるのも困るので渋々起きる。本当にせっかちな師匠を持つと弟子が大変だよあの大きな胸みたいに心も大きな大人の余裕を身に着けて欲しいですな。
取り敢えず着替えたり歯磨きしたりする、マリスの居場所は魔法で分かるのでまあなんとかなるだろう。あっアトリエ本店から出て行った…。
そしてしばらくして私はマリスの後を追った。
転移魔法を発動、マリスと合流する。
「マリスさん、待って下さいよ~」
「フンッ少しは人に合わせた行動を心掛けろ!」
師匠はつれない、プリプリと怒るのも美人だと絵になるもんだなと思う私だ。現在の師匠は以前のクリーム色のシャツに黒マントを羽織り、下はスカートとストッキングにブーツという出で立ちだ。
マリスは錬金術師だ、戦ってる所は見た記憶がないのでよく分からない。武器の類は持ってないしやっぱり錬金術師ギルドの連中のように魔法で戦うスタイルなんだと私は思う。
「ここからその洞窟までどれくらいかかるんですか?」
「この森のモンスターは私がよく掃除してるが、ザザム荒野はそうはいかん、モンスターもかなりの数が棲息しているだろうがまあ洞窟の入口には日が暮れる前には着くはずだ」
「かなり遠いんですね……」
「だから早めに出発したんだよ!」
プリプリ師匠がまたプリプリしだした、面倒なので無視しとこ。
森を進む、確かにモンスターは出ないし気配も殆ど感じないな。このまま森を抜けられそうである。
小一時間程歩くと森を抜けた、しかしその先にはザザム荒野と呼ばれる不毛の大地が広がる。見えるのは道なき荒野だけである、こんな所にも危険なモンスターは潜んでいるのだから困ったもんですな。
「ザザム荒野だ、麻痺毒を持ったモンスターや人間を好んで襲うモンスターも多いから気をつけろよ」
「はい、足手まといにならないように頑張ります」
「………ふっ言うじゃないか」
私達はザザム荒野に足を踏み入れる、無論ゲームみたいに少し歩けば直ぐにモンスターとエンカウントみたいな事は有り得ないが、それなりに一見見晴らしが良い場所なのにどこかで死角になる場所に潜んで不意打ちで襲って来るとかが怖いよな。
「シャアアアッ!」
「っ!?アーク!」
………まあ死角なんて私にはないし、岩陰に潜んだくらいで私に気配を気取られないと考えたこの土色の大きなヘビには私の鉄拳が炸裂だ。頭をぶん殴って吹っ飛ばした、岩壁に頭から激突してブランと身体を垂らすように気絶しているデカいヘビ。
そのヘビモンスターの姿を見てマリスはあ然とする、まあ彼女の前で拳を振るったのは今回が初めてなので仕方ないか。
「はいっこれでお終いですね。マリスさんどうかしましたか?」
「…………いやっお前なんで錬金術師の私に師事とかしてるんだ? 意味が分からないぞ」
そんなのマリスがボインで美人だからに決まってるだろう、ファンタジーな世界のヨーロッパ的な街並みの見知らぬ街で出会うなら、むさ苦しい野郎よりも見目麗しい美女と交流を持ちたいのが漢の性である。
「まあ物理でモンスターの相手をするのも飽きたのでインテリ的な錬金術師にでもジョブチェンジしようかと思いまして」
「私が思うに、飽き性でめんどさがりなお前には錬金術師とか合わないと思うぞ?」
仮にも師匠が弟子になんて言い草だよ。ショックを受けた私である。
「なら今後は非才の私は後ろで見てますね。師匠の錬金術師としての活躍を見て学びたいのでピンチになっても信じて心の中で応援だけしましょう」
「なっ!? ちゃっちゃんと師匠の盾となり剣となれ、このバカ弟子がーーー!」
これ言ってるのが美人錬金術師のマリスじゃなかったら私は普通に引っぱたいてるからね、マジで。




