第39話 モイモンとイプシー
翌日、朝日は既に上っているがウトウトと私はベッドの上でダラダラしていた。
だって眠いのだ、やはり落ち合う時間は朝イチにしなくて正解だったな。
「………お前はいつまで寝ているんだ?」
ヤバイ、マリスが静かに怒っている。
昨日は少しは優しいなとか思ったのに心が狭い巨乳だ、もう少し大人の余裕とか身に着けてくれれば引く手数多のモテ女子だったろうに……。
「今何か失礼な事を思っただろう」
「思ってませんよ」
しかし美人に起こされる朝は悪くない、私は身支度を整えてアトリエを後にした。マリスが『さっさと行かないか!』とせかすからだ。
アトリエの魔法陣からハーマストへと移動し、私は冒険者御用達な武具店や防具店が立ち並ぶ一画へと歩いて移動した。
この辺りは初めて来る、道行くのはやはり武器や防具を身に着けた冒険者と思しき連中である。
まああんな中年野郎達は心底どうでもいい、私はシェル防具店とやらを探す。
少し探すと直ぐに見つかった、店としては小さいが立派な店じゃないか。私は中に入った。
すると中には以前見たとき同様に人間の姿をしたヤドカリ少年とイソギンチャクだった女性がいた。
「こんにちは、二人とも昨日ぶりです」
「おうっ来たねそれじゃあ店の奥に行こうか、そこで話をしよう」
「……………ども」
店の奥の別室案内される、そこには向かい合うソファとその真ん中にテーブルが置かれていた。
ソファに腰を下ろすとヤドカリ少年ことモイモンが話をする。
「オイラ達の事は話だよね? ならそっちは一体何者なの?」
「私ですか? 私はただの旅の者ですよ、まあ…」
私は片手を出してドラゴンの腕に形状を変化させる。それを見てモイモンがかなり驚いた。
「その手は……こいつは驚いた。どうしてドラゴンが表の世界のそれもこんな人間の街に?」
「言ったでしょう? ただの旅好きなだけです。ちなみにあの仕事を受けたのも単なる成り行きで私にその化け物とやらをどうこうする意志はありません」
「……そうなの? まあドラゴンが興味を惹かれる話とかじゃ確かにないよね。けどならなんでオイラ達に協力しようと思うの?」
「実はこのハーマストでは錬金術師としてとある錬金術師に師事していまして、その師匠曰くこのハーマスト付近で妙な品物を集めている連中がいるとか、私は師匠に言われてそれを調べいるだけなんですよ」
「ドラゴンが、人間の錬金術師の弟子?」
信じられない? まあ殆ど気まぐれで弟子入りしたからな。信じられないと言われても仕方ない。
「私が二人に協力する理由ですが、まあ好奇心ですかね。私が興味深いと思ったので少し手を貸そうかと思っただけですね」
「そっそう……変わったドラゴンなんだね……」
やかましいよ。
私はマリスの言葉とか秘薬の材料について話してみた。モイモンは難しい表情をする。
「確かにそのレシピだと秘薬とかなら問題ない、けどもう一つ作れるアイテムの方を錬金術で生み出す気なら危険だな」
錬金術、普通なら回復ポーションとか毒消しポーションとかを作る物だ、しかしここはファンタジーな要素がある世界の錬金術。
頑張れば本当に鉄くずを黄金に出来るし若返りの薬とかも作れるのだ。だから何を生み出そうと言うのかとても気になった。
「それは一体何を生み出す気だと?」
「以前話をした化け物の封印を破壊して、眠れる災厄を起こせるかも知れない『鍵』だね。何分どんな姿をしてるのかは分からないんだ、オイラがあそこを護るようにと契約した魔術師が気をつけておくようにと言われた物の一つがそのレシピで生み出せる代物だった」
「……そうですか」
『鍵』ねぇ、しかし見た目が鍵としての形状をしてるかも分からないのか。
まあいいか、別にそんなの完成させなければいいんだからさ。
「それでは早速あのハゲの錬金術師に変身していたヤツの所に向かいましょう」
「向かいましょう? 居場所なんて分かるの?」
「ここに来る前に探索魔法をこのハーマスト全域に発動しました。するとあの錬金術師と同じ魔力を持った者がハーマストの街の一画、少し治安の悪い場所にいるみたいなんですよ」
「「………………」」
私は仕事が速い方だと自負しているドラゴンである。そもそもミリアみたいな美女の正体を追うとかってミッションならともかくハゲの正体になんて興味もないのだ。
さっさとパッパと済ませてしまおう。
私はモイモンとイプシーを連れてハゲ一味のアジトか何かに殴り込みをかけることにした。




