第37話 守護者ヤドカリ
私は飛行魔法を発動してヤドカリと倒れた錬金術師達の間に立つ。
既に錬金術師達は皆気を失っている、荷車引きのおっさんもダッシュで逃げた。
まあ私は別に実力隠してムーブとかする気はあまりない方の異世界転生者だ、まだハーマストにいるから適当に誤魔化してはいるけど本音は別にどっちでもいいと思ってる。
そんな感じだからここは一つ派手に行こうかな。
「さてっそれでは私が相手をしますね?」
ヤドカリが鋏を振るう、その鋏に向かって私はパンチした。
粉々に吹き飛ぶヤドカリの鋏、まあ私に殴られたんだから当たり前だ。
ヤドカリなので鳴いたりはしない、しかしこちらに対して強い殺気を放つのを感じた。
ならばと私もヤドカリに向かって殺気を放つ。
すると殺気を放たれたヤドカリがビビってしまった。なんと湖の中に逃げようとしやがった。
私はヤドカリの脚を掴んで止める。
「待ちなさい、これだけ好き放題に暴れといて逃がすと思ってるんですか?」
「…………まっ」
あ? ま?
「まっまま待って! 話せば分かるからマジでーーー!」
コイツ普通に喋りやがった。雰囲気作りで無言だったなクソヤドカリめ。
「オッオイラは魔法による契約でこの湖を護っていただけなんだよ! お願いだよ~~助けてくれよ~」
「…………私達はタナード鉱石を取りに来ただけです」
「タナード鉱石? なんだよそれ、俺が護ってるのは湖の底にある物だからそんなの好きに持っていきなよ」
「持っていきなよって……そっちが問答無用で襲って来たんですよ?」
「だって契約したヤツからここに来るヤツは皆追い払えって言われてたし……」
むっ確かに錬金術師達も気絶はしてるが死んではいない。
なら少しは信じても良いかな? 取り敢えず私はパンチで吹き飛ばした鋏を回復魔法で治す。
「おぉ~~大した魔法だね」
「普通ですよ、それともう一つ。護る物があるのならここは人も来ますしどこか他の場所に行くべきじゃあ?」
「そこは契約でここって指定されてるからね、それに侵入者は洞窟内に入れば自動でオイラは分かるからさ。侵入者が来てない時間は自由時間だから裏の世界で休んでるし、労働条件は悪くないんだよ」
「……やはり貴方は裏の世界のモンスターでしたか」
通りで流暢に喋ると思った、モンスターって話が通じるヤツと全く通じないヤツがいるけど。通じるヤツは大抵裏の世界で生まれて生きてるモンスターなのである。
「それはアンタもでしょ? あの殺気。どう考えても人間のそれじゃあないよ」
「まあそれは否定しま──」
話していて気づいた、湖の傍に倒れてる錬金術師あのスキンヘッドだ。何かソイツが怪しいと。
私の視線に気づいたのか、スキンヘッドはバッとおきあがった。すると湖からバレーボール程の大きさのタコが現れて何かをそのスキンヘッドに渡す。
それは石で出来た円盤状の何かだった。
「ああーーーーーーっ! 泥棒ーーーっ!」
ヤドカリが叫ぶがスキンヘッドは無視して転移魔法を発動してタコと共に何処かに逃げてしまった。
…………マジか、どうやらこちらのリーダー格がどこかに行ってしまったぞ。
て言うか。
「今の感じだとどう見てもタナード鉱石とかが目的じゃなかったみたいですけど」
「うわ~~やられたよ。あの人間は他の錬金術師達をオイラにけしかけてるうちに使い魔を召喚して湖の中を探させていたんだ」
なるほど、あの無謀な突撃指示も単純にこのヤドカリへの目眩ましだった訳か。
もし死人が出てたら浮かばれないなんてもんじゃないぞ、一体なんなんだよあのスキンヘッド。
「その護っていた物を狙う輩に心当たりとかあります?」
「ないよ~~……けど契約した内容に万が一奪われたら取り返すか破壊するってあったから今からあのハゲを探さないと……」
するとヤドカリの身体が光に包まれる、その巨体が小さくなっていき人間サイズになった。
現れたのは小さな男の子と大人の女性だった。
小さな男の子は短い黒髪と黒い眼の少年で大きな盾を背負っている。盾職なのかな?
大人の女性は長い赤髪と眼を持つ女性でワンピースを着用している。
「人間に変身出来たんですね」
「まあね、オイラはモイモン、こっちの無口なのがあのイソギンチャクで名前はイプシー」
「……………ども」
少年がヤドカリで女性がイソギンチャクか。
私はヤドカリ少年に話をする。
「しかし探すと言っても転移魔法で逃げられたなら既に遠くに行ってしまったと思われますよ?」
「大丈夫さ、あれを狙うヤツが最終的に狙うのは知ってるから……」
「それは何か聞いても?」
「別に隠してる事でもないからいいよ。あの円盤状の石版はとある封印魔法の封印を解除する為のアイテムなんだよ」
ほうっ封印魔法ね、その手のアイテムが出て来るって事は……。
「なんかこの地ではね~その昔ヤバイ化け物が暴れてたらしくてさ、ソイツを封印を解除するのがヤツらの狙いだとオイラは思うんだ」
ふ~~んヤバイ化け物ね?
まあ封印されるくらいだから当時は倒せなかったモンスターか、まあぶっちゃけどうでもいい。
この表の世界の人間にとってはまさに災厄と呼べる代物なんだろう、しかし私にら関係ない。
しかし、そんなのが万が一現れたらハーマストが滅んでしまう可能性もある、流石にそれは可哀想でもある、特にアーニャみたいな若い女性がね。
私はこの守護者ヤドカリに協力を申し出ることにした。
「知らなかったとは言えこちらのせいですし、何か手伝える事はありますか?」
「う~~ん、それならそこにのびてる人間達を助けてあげれば?」
確かに、ここにこのまま放置はあれだな。私は魔法をつかって荷車引きが洞窟の近くに隠れてないかを探す。
するといた。
「私は彼らを運ぶ人達をここに呼んで来ます」
「そうっじゃあオイラ達は行くよ、もしも本当に力を貸してくれるなら改めてハーマストで落ち合わない?」
「分かりました、ちなみにどこにいますか?」
「オイラ達はいつもはハーマストで防具店をやってるんだ」
「分かりました、ならその防具店で落ち合いましょう時間は明日の昼前くらいになると思います」
「分かったよ。ならシェル防具店って店に着てね、バイビ~」
ヤドカリ少年が呪文を唱える、すると二人の姿が消えた。恐らく転移魔法である。
私は取り敢えず逃げた荷車引きのおっさん達を呼び戻すところから始めるとするかな。




