第10話 裏側にあるもう一つの世界
この世界はファンタジーな世界観で出来ている。だからなのか知らんがこの世界には表の世界ともう一つ別に、裏の世界が存在するのだ。
表の世界とは今私達がいるこの世界、主に人間やエルフやドワーフと言った王道なファンタジー種族治める世界である。
「そして裏の世界はモンスターの世界です。モンスター独自の文明、生活、国があります」
「モンスターの世界って本当にそんな物が存在するの?にわかには信じられないわ」
「勿論しますよ、モンスターにだって知性や理性を合わせ持つ存在は多数います。と言うより多くはそんな連中ですよ、ただそう言ったモンスターの多くはこの表の世界に進出する事はありません」
「なんで?」
「………人間がいるからですよ、人間程他の種族が住む土地を欲し、文化と尊厳を奪う事に長けた生物はこの広い世界にもそうはいませんから」
私の言葉にアルビス船長は少し悲しそうな顔をした、海賊である彼女ならこの言葉は事実なのは理解出来るだろう。何しろ海賊だからな。
まあその話は後でいいだろう、先ずはその裏の世界に行ってみてからのお楽しみだ。
私は黒い鍵を投げる。
すると鍵が黒い石造りの円形の輪に変化した、その輪の中には青い渦が渦巻いている。
裏の世界に行ける転移門だ、あの黒い鍵を持つ者だけが使える魔法のアイテムである。
「つまりアークの作戦っていうのは……」
「はいっモンスターを海賊として雇って船も向こうの世界のを調達する。それが私の提案ですねどうです?乗りますか?」
「────良いわね、とてもスリルがあって面白そうだわ」
私はアルビス船長と共に転移門を通過した。
◇◇◇◇◇◇
そこはとてつもなく高い建造物の最上階の部屋、その窓からは都会の街が放つ光が眩しく地平線の先まで光らせていた。百万ドルの夜景ってヤツだ。
「なっ……こっこれがモンスターの街だと言うの!?」
「この世界には5つの大国があります、その1つである竜族が治める国ドラゴニアに来ました。今私達がいるのはこの世界でも5本の指に入る程に有名な世界一高い建造物、『聖塔ジグラード』の最上階の私の部屋に転移してきたんです」
まあ私の部屋と言っても鍵の持ち主を倒してくすねた鍵なのだが……無論私が持つことに文句がある者はこの世界には居ないので最早私の部屋だと言っても過言ではないだろう。
まあ人間の姿にでもならんとつかうことも出来ないサイズの部屋なのでドラゴンの姿のままゴロゴロするのが好きだった当時の私は1度もこの部屋を使わず『聖塔ジグラード』にも来ることはなかった。
しかし高いところから見てもらうのがこの裏の世界を知るには1番手っ取り早かったから連れてきたのだ。ちなみにこのジグラードは地上2千メートル以上はあるとても高い建造物だ。
形は棍棒に近い、地上付近の方が若干細く上に行くほど大きくなっていくと言うどうやって造ったのか本当に謎な建造物で…まあ魔法だが。外見は白い巨塔って感じである。
裏の世界と表の世界は同じ時間の流れなので向こうが夜ならこちらも夜だ。そしてこの夜景の美しさは人間の国の大都市でもまずお目にかかれないだろう、だからここに連れてきた。
建築様式こそパリやらフランスやらのそれに近い中世的な文明レベルの水準だが、表の世界よりもなんとこの裏の世界、モンスター達の文明の方が高いくらいなのだ。上水道下水道完備でエレベーターの類もある、車は走ってないが魔法の技術レベルも加味すれば現代社会よりも優れた点が幾つもある世界だ。
「先ずは観光がてら街を歩きましょう、後ここはドラゴニアの首都で名前はファーブニルです」
「ここ首都なのね、王都でもこんな広大な都市は見たことも聞いた事もないわ……本当にこれをモンスターが造ったなんて信じられないわ」
「人間にも優れた所があるように、モンスターと呼ばれる多種多様な種族にも優れた部分がありますからね。むしろ多様性を受け入れたこちらの世界の方が文明の発達は速いですよ」
「ふぅん?まあ海賊のわたしには難しい話はどうでもいいの、大事なのは戦力になる仲間と船よ」
確かにその通りである、それではと言う事で私はアルビス船長を連れて部屋を出た。
そして廊下にでるまさに最高級ホテル、いやっ宮殿のそれを思わせる天井も高く幅も広い廊下に出た。廊下には赤い絨毯が敷かれている。
私達以外の誰の姿もない。まあこの辺りの『聖塔ジグラード』の階はまず殆どのモンスターが立ち入る事を許されて居ないので当たり前と言えば当たり前である。
廊下を悠々と進み突き当たりに辿り着く、そこには6つのエレベーターが横に並んでいた。その1つを使って地上1階まで一気に下りよう。
まあ普通のエレベーターなら地上まで行くのも時間がかかるので実は空間魔法で時間を短縮している。魔法の仕掛けが光るエレベーターである。
そして地上に到着、ポーンというあの音がして扉が開いた。そして出ると一気にモンスターの世界らしくなる。
「………ふぅん」
「…………」
地上1階は様々な種族のモンスター達がジグラードの内部を行き来していた。
勿論全員が衣服を着ている。表の世界の裕福層の人間みたいな格好をしている者も多い。
身体は人間に近いが頭がライオンだったり昆虫だったりするのもいれば中には人間とは程遠い姿をしている者も多い、4足歩行する大きなワニが衣服を着ていたりした。
このファーブニルでも裸は普通に捕まるのである。
そしてそのまま外に出て私が戦力になりそうな連中の元に向かおうと出口に向かおうとした、すると私達に話しかけてくる輩が。
「──失礼、お客様は………もしや人間では?」
「見れば分かるのでは?」
ジグラードの職員か。ここは特定のモンスターの宿泊施設としも機能しているのでホテルマン的な者も存在する。私の返事に身体は黒のスーツ姿の頭は牛のモンスターが突然態度を変えた。
「ここは人間が来て良い場所ではありません、失礼ながらどうやって来たのか詳しく話してもらいますよ?」
「……………」
下手に変身魔法のレベルが高いとこんな事にもなるのか、ある意味勉強になるよ本当に。




