プロローグ
「ただいま…」
長かったバイトが終わり、やっと家にたどり着いた。
無造作に靴を脱ぎ捨て、電気を付けながら部屋の中へと入って行く。
ドサッと荷物を起きベッドにダイブするとふわふわな感触と落ち着く匂いに包まれた。
「今日も疲れた…」
学校が休みだった為朝からシフトに入っていた。
しかもお客さんからのクレームが入り、身も心もクタクタだった。
「こういう時は趣味の時間、早めに行動すべし」
そう言って起き上がるとお風呂場へ直行、そして速やかにご飯を食べるのだった。
カタカタカタ……
静寂な部屋の中、上機嫌にキーボードを打つ音が部屋に響く。
毎日の日課であるSNSの見回りだ。
慣れた手つきでフォロワーさんの書き込みを閲覧していく。
そうしている凜音の元に一通のDMが届いた。
【おつー!この後狩りに行かない?】
「さがみん!!」
さがみんとは私と1番仲のいいフォロワーさんであり毎日のように一緒にゲームしている仲だ。
とても美人でコスプレも趣味としているのである。
【勿論!行く行く!】
そう返事をするといつもの様にゲームを起動し通話を繋げる。
そこからお互いギャーギャー言いながら時間を忘れてゲームに夢中になっていた。
いい素材が手に入ったとか、あそこのエイムが悪かったとか話は尽きない。
今日も雑談に花を咲かせていると不意にさがみんが爆弾を投下したのだった。
「リンリン、来週の日曜日オフ会しない?」
お麩会?ああ、お麩って美味しいよね…ってそうじゃない。オフ会…?
「あの、リア充達がやってるキラキラしたオフ会?お互いに顔合わせしてタピオカとか飲んでSNSに載せてキャッキャウフフってするオフ会の事で御座るか?」
「左様でござるぞ、リンリンよ」
「なんと!?」
オフ会か…さがみんとは会いたい、めちゃくちゃ会いたいのだが
私なんかと会っても幻滅するだけだ。
なんせ私はネット弁慶の超超超超コミュ障なのだから。
会っても小声でこんにちは…しか言えない自信しかない。
苦渋の決断だ、断ろう…
「ごめん、実はその日予定が━━」
「ないって先週言ってたよね」
ジーザス!!先週の私吹き飛べ!!
他の断り方を無い頭で振り絞ろうとしたが相手の方が1枚上手だったようだ。
すらすらと私が口を挟む前に予定をどんどん決めていく。
「あ…う…あの…」
「よし、決まり!楽しみにしてるね!リンリン」
さがみんはそう言うとおやすみーと言葉を残し去っていった。
残された私は状況を整理するのに精一杯だった。