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(仮)  作者: キャンティー
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(仮)

「よし、出来た。」


完成した原稿が映し出されているPCのWordアプリを保存しながら、ゆっくりと残りのコーヒーを流し込む。

昨日から、徹夜をして遂に私、高柳理(たかやなぎさとる)の正真正銘の処女作が完成した。


「タイトルは…まぁまだ(仮)でいいか。」


小説を読むのは好きだ。

本を読むようになったのは社会人になってからだったが、月10冊以上はジャンルを問わず色々な作品を読み漁ってきた。

今が29歳だから、かれこれ1000冊以上は読んできたと思う。

ただ、書いたことは今までの人生で1度も無かった。


それでも、小説を書いてみようと私を奮い立たせたのは、最近よく目にするジャンル『異世界物』であった。


ジャンルを問わず、と言ったが一つだけ例外がある。

それが、『異世界物』だ。

私はこのジャンルのものを敬遠して読んでこなかった。


ただ、中には、

急に車にはねられて、神様からチート級の能力を貰い、異世界ではハーレムを築く。

や、描写としても、必要が無いように思える性的にギリギリなシーンを多く盛り込み、物語の中身より、そのようなものが好きなユーザーが喜ぶような、私から言わせれば中身の薄い作品が多く世に出回っているように思う。


『異世界』というジャンル全てを否定するつもりは無い。

良作と呼ばれるものにはしっかりテーマがあり、読者が心動かされたり、考えさせられたりするような作品がちゃんとあるのは知っている。


ただ、売上重視というか、転生前の世界できっと悲しんでいる人がいるはずなのに、そんなことにはつゆも触れず、ただただ自分重視でストーリーが進む事や


辛い現実から努力して改善していこうというスタンスではなく、新しい世界でただ可愛い女の子達に囲まれ、最初から圧倒的な力を持って労せず大団円を迎えるような物語が世に多くはびこり、それが人気を集めていることに対して理解が及ばず、


言ってしまえば『自己中心的』『現実逃避』の物語の存在を何がいいのか、何を伝えたい物なのか、全く受け入れることが出来なかったのだ。


そんな折、私は1つのアイディアを思いついた。


ーそうだ。それなら、私も異世界をテーマとした小説を書き、その中で啓蒙をすればいい、と―


そうして連日連夜少しずつ書き足し、出来上がったのが、この作品である。


恐らく、『異世界物』が好きなライトノベル読者からはかなり叩かれるんだろうなぁ。


小説を書いたことも無いが、今まで読んだ小説で使われているような技法をそれっぽく使ったり、伏線みたいなものを張ってみたり。

どれも幼稚っぽいけど、処女作にしては上手くできたんじゃないか。


簡単に物語のストーリーを述べるとこうだ。


私と同じく、短絡的な異世界物が蔓延る状況を憂いた主人公が、行きつけの古本屋に出かける。


そこで夜にしか開くことが出来ないという謎の古書と出会う。


興味本位で買い夜に開こうとしたが、結果開く事が出来ず、そのまま眠ってしまうのだが気がつくとそこは本の世界であるという冒頭から始まる。


その本の世界で主人公は本の女神と出会い、1日に1回、既に世にある本の世界に入り込み、登場人物となることが出来るという能力を手に入れる。


その能力を使い、『異世界物』の様々な本に入り込み、物語を書き換えていく。



まぁ、ホントに簡単に言うとこんなストーリーだ。


ちなみに、6部制で『令嬢転生』『異世界召喚』など、テーマによって分けて書いている。


私は、この作品を『小説家になろう』サイトにアップしてみることにした。


正直、アップしたからといって何かを望んでいる訳では無いし、何かが変わるとも思わない。


ただ、今のこの状況が我慢ならず、異世界物だけしか読まない読者がいたのであれば、目を当てて欲しい視点を、文学とはそういうものだけでは無いことを知ってもらいたいと思い、少しでも何かを考えてくれるきっかけにしてもらいたいと思ったのであった。


時刻は、AM3:30


仕事まであと少ししか寝れないけれど、

ひとつの事をやり遂げたという充足感に包まれながら、『小説家になろう』サイトにアップしようとして、タイトルをつけていなかったことを思い出す。


「あ、タイトルどうしよ。

…異世界物ってタイトル長いから、それっぽく『チートや現実逃避やハーレムだらけの異世界転生物に異議を唱える異世界転生』でいっか。」


そうして、アップロードのボタンを押すが早いか、私はまどろみの中に溶けていった…。



そして



目を覚ますと、そこには私が先程書き上げたはずの物語と全く同じイメージの世界が広がっていた。




『チートや現実逃避やハーレムだらけの異世界転生物に異議を唱える異世界転生』


第1話

『(仮)』

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