第6話 イジュースを出せ！？
見事にサンディルのイジュースは不発だった。
「これからよ！これから成長していくんだから！！」
サンディルはとってつけたように言った。
「まずはミミズ程度でも光を出すことを目標にすべきだな。」
ヘライクマーはそう言って本のページをめくった。
「ほら、イジュースの出し方について詳しく書かれている部分だ。
この部分を口に出して読んでみろ。」
「読めないわよ。私はスウェーデン語と英語しかわからないの。」
「そっか、くそ。なら読んでやる。」
ヘライクマーは音読をした。
「はい。イジュースは左側頭葉から発せられる光の魔法です。
側頭葉が発達していればいるほど、イジュースはより強く発せられます。
しかし、側頭葉が発達しているからイジュースを出せるという理論は間違っています。
………ここら辺はとばそう。」
サンディルはこの時ふと思った。
「ねぇ、ヘライクマー。私にもイジュースが使えるのよね。でも根拠は？」
「イジュース使いはイジュース使いが分かるんだ。
いずれ使えるようになっていけば、お前にも分かるようになる。
それに、練習して出なかった場合、絶対に出るようになる方法がある。」
「そんな方法があるなら最初からそれに頼ればいいじゃない！」
サンディルはやってらんないという態度で言った。
「ダメだな。危険すぎる。」
ヘライクマーはやれやれとした顔で言った。
「ポルテチオ！ポルテチオ！」
サンディルは唱えながら何度も左頭を擦ったが何も起きなかった。
…1週間後…
「ポルテチオ！ポルテチオ！」
あれから何度もイジュースを試したサンディル。
しかし、変化は何も無かった。
ヘライクマーはこれは厄介だと思っていた。
「サンディル、おそらくこのやり方だといつまでもイジュースは発現しない。」
「奥の手を使うしかないんじゃない？
一体どんな手段を使うの？？」
ヘライクマーは左頭を擦って赤いイジュースを出した。
「サンディル、恨むなよ。」
そう言うとヘライクマーは赤いイジュースで、部屋にあるタンスを思いっきりサンディルに向かって投げ飛ばした。
急にタンスが飛んできて驚いたサンディル。
「うわーーー！！ポルテチオ！！」
無意識にサンディルは「ポルテチオ」をとなえた。
すると、サンディルの左側頭部から黄色い光が飛び出したのだ。
そして光は右腕の中に吸い込まれていき、サンディルに強烈なパワーを与えた。
お陰で、タンスはサンディルの右腕でキャッチ出来てその場はおさまった。
サンディルは震えていた。
「今のが……イジュースなのね…。」
「どうだ初めてのイジュースの感想は。」
ヘライクマーは、よくやったと言わんばかりの顔をしていた。
「右腕が急に強くなったわ！
本当に自分の体の一部からこんなパワーが出せるなんて信じられない！！
とにかく……すごいってことよ！！」
ヘライクマーは、ハハハと笑っていた。
「そうか！驚いたか！！だがそれはまだイジュースのほんの一部のパワーだからな。
まだまだ出来ることは沢山ある。」
「私これ、いつでも出せるようになりたい！」
サンディルはやる気に満ち溢れていた。
「このイジュースが何時でも、そして強力にできるようになったらあのミッションを与える」
「「あの」ミッションって？」
「緑の帝王の破壊だ。」
サンディルは更に責任感にも燃えた。
「ダイアン・ダウンズの「ダ」の字にとうとう近づいてきたのね。」
「いや、まだだな。
今日はまたさよならだ。
時間が来てしまった。
明日は何時でもイジュースを出せるようになろう。
コントロールはその後だ。」
ヘライクマーは本の中に戻っていく前に一言言い残した。
「お前は若い頃のアイツにそっくりだよ。
大丈夫。お前なら成し遂げられる。」
「？」
サンディルはなんの話しをしているか全く分からなかった。
そして、ヘライクマーは本の中に帰って行った。
