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イジュース・ファンタジー  作者: 辻 雄介
冬の戦士編
34/36

第34話 サンディルのひらめき!?

サンディルとターニバルはそれぞれ各々の試練を乗り越えようとした。

サンディルは赤いイジュースで、重いものを持ち上げられるように。

そしてターニバルは、より遠い距離まで情報収集が出来るように鍛錬を詰んだのであった。

「ターニバル、調子はどう??

私は10kgの物体を持ち上げられるようになったわよ。」

ターニバルは難しそうな顔をしていた。

「そうかいそれはよかったな。

こっちはせいぜい腕を伸ばしても100kmの範囲の情報収集で限界だ。

こっからどうやって範囲をひろげられるか見当もつかない。」

黒くて細い腕を延々と伸ばし、情報収集を続けるターニバル。

それを見たサンディルは何か手伝うことは出来ないかと考えた。

そしてひらめいた。

「ターニバル!!いいことを思いついたわ!!」

「なんだ?いいことって。」

サンディルのひらめきとは、サンディルが実際にターニバルの目標としている距離まで行き、サンディルが何を考えてるかターニバルが当てるというものだった。

「今の限界が100kmなら目標は120kmね。」

サンディルはやる気満々だった。

「でもまて。どうやってそこまで移動する気なんだ??歩くにしても遠すぎるだろ。」

ターニバルは疑問を投げかけた。

「心配しないで。

私たちにはカー・リッカーという移動手段があるの。」

「カー・リッカー??乗り物の名前か?」

「いえ、人の名前よ。

メンバーの中で唯一車の免許を持ってる人なの。

ターニバルはまだあったことは無いわ。」

「なるほどな。

とりあえずやってみよう。

そのひらめきとやらをな。」

それから5時間後……

サンディルはカー・リッカーを呼び、車で適当に丁度120kmの場所に行った。

「ありがとうリッカーさん。」

「いやいいんだよ。役に立てるのはこれくらいだからな。

それにしてもこんな真昼間に何をしようってんだ??」

「まぁいいからいいから。

ターニバルに連絡するわね。」

サンディルは家に電話をかけた。

「あれ?電話だ。

勝手に出てもいいかな。」

ターニバルは電話に出た。

「もしもしターニバル??今目標距離まで来てるわよ。

今からなにか考え事するから当ててね。」

「なんだサンディルか。

分かった俺が当ててやるからな。」

サンディルは呼吸を整えて手を下に前に組んだ。

そして、カー・リッカーの後頭部の白髪を見た。

「リッカーさん、白髪染めが上手くいってないのかしら。前の部分はちゃんと染ってるけど後ろの部分がちゃんと染ってないわ。」

サンディルはこのことばかりを考え始めたのだった。

「うーん……サンディルの気配は微かだが感じるな……。ただ……」

ターニバルは黒くて細い腕を空にかざしながら考え続けた。

「なんだ…?何かワードが浮かんできたぞ…。

白髪……??後頭部……??

ほんとにこの情報はサンディルの考えてる事なのか??」

一方ヘライクマーとミゲルはターニバルとサンディルの邪魔をしないように別の部屋でだべっていた。

「サンディル、リッカーさんの車に乗ってどっか行っちゃったね。」

「何かいい事でも思いついたんだろ。

好きにさせておけ。」

「……まぁ、そうだよね。」

「どうしたんだ?」

ヘライクマーは尋ねた。

「あのターニバルっての、本当に信頼できるのかな。」

ミゲルはターニバルに消極的だった。

「心配するな。信じろ。俺が保証する。」

ヘライクマーはそう断言した。

「そうか……でも彼のあの目つき……なんだか信頼に欠けるものがあるな…。」

「怖いか??裏切りそうに見えるか??」

「ヘライクマーはどう思うんだよ。」

ヘライクマーはため息をついた。

「恐らくターニバルは天涯孤独な男だったんだろう。

顔つきがそれを物語っている。

ミゲル、アイツが気に食わないかもしれないが避けようとするのをやめろ。

アイツはきっといい仲間になる。」

ミゲルはしばらく黙り込んだ。

「分かったよ。仲良くできるように努力するよ。」

ミゲルは仕方なしな感じで返事した。

一方、サンディルは……

「そろそろターニバルも分かってきたんじゃないかしら。

電話かけてみようかな……………」

カー・リッカーの白髪を見つめるのに飽きてきたのだった。

そしてターニバルは……

「この100数km先にある生命体は間違いなくサンディルだ。

集中しろ。何を考えてるか読み込ませてもらうぜ。」

ターニバルの意識は外の様々な建物をこえて、サンディルのいる位置まで張り巡らされた。

「白髪……後頭部……ここまでは出てきてるんだ…さぁ…次の情報はなんだ……?

……カー・リッカー……??」

ターニバルは次々にサンディルの考えている情報を掴んでいった。

「よし、なんとなく分かったぞ。

あとは向こうからの連絡を待つだけだ。」

10分後……

サンディルはターニバルのいるサンディル宅に電話をかけた。

「どう?何考えてるか分かった??」

ターニバルは断片的には分かったが、完璧には分かっていなかった。

しかし、ここでなんとなくしか分かりませんでしたではサンディルをわざわざ120km先へ行かせた意味がなくなる。

そう思ったターニバルは集めた情報を組んでそれなりの文章を作った。

「えっと……カー・リッカーさんの……後頭部の……白髪を見て……うわぁと思った……?」

そして沈黙が訪れた。

「ターニバル……」

サンディルは溜めた。

ターニバルは絶対間違えたと確信し、サンディルに悪いと思った。

そしてついにサンディルは溜めに溜めて口を開いた。

「ほとんど正解よ!!凄いじゃない!!」

「本当か!?合ってたのか!?」

ターニバルはホットして、自分の勘を信じてよかったと思った。

「ただ、うわぁとまでは思わなかったわね。

多分そこはあなたのアレンジだったんじゃないかしら。」

「そうだよ。お前ならそう思うと思って言ったんだよ。」

「やっぱりね。今度はまた10km進むわよ。

130kmね。

しばらく待ってて。」

「分かった。待ってるぜ。」

サンディルはまた更に10km進むことにした。

「よぉ、電話で何話してんだ??サンディルはトイレか??」

ヘライクマーとミゲルがターニバルの元へやって来た。

「いや、サンディルは今120km離れたところにいるぜ。

俺の情報収集能力向上の為にな。」

「サンディル……何やってんだアイツは。

アイツにもやるべき課題はたくさんあるってのに……。

アイツが行くくらいならミゲルを連れて行けってんだ。

いや、カー・リッカー1人でよかったろ!!」

ヘライクマーはサンディルに呆れていた。

「でも、サンディルがいつもイジュースを鍛えてる時に使ってる重りみたいなのは今ここに無いよ。

持っていってるんじゃない?」

ミゲルはそう言った。

その通りだった。

サンディルは重りを車の中に乗せて、イジュースを鍛えているのだった。

「ねぇリッカーさん、何か車の中に重りになるような物はない??」

「えぇ??あぁ、イジュースを鍛えてるのか。

トランクの中から探してみてくれ。」

サンディルとカー・リッカーは互いに自らのやるべき事をこなしていた。

「全く…馬鹿どもが。」

ヘライクマーはご立腹だった。

「誰が思いついたの?このサンディルを120km先まで連れていく作戦(?)は」

ミゲルはターニバルに尋ねた。

「サンディルだ。

全く俺としたことが…。

どうして気づけずにそういえなかったのか…。」

ターニバルは後悔していた。

1時間後……

サンディル宅にまた電話がかかってきた

「待て貸せ。俺が出る。」

ヘライクマーはターニバルから電話を奪った。

「サンディル!!お前何やってんだ!!」

「何って…ターニバルの情報収集能力の向上に貢献してるのよ!何か文句でもおありで??」

ミゲルはこれから間違いなくヘライクマーとサンディルの言い合いが始まると確信した。

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