プロローグ[ストライカー]
そう遠くない未来、戦争が勃発し、殺し合いが当たり前となった世界。
人類は偉大で、最悪な発明をした。それは…。
大型二足歩行兵器[ストライカー]
戦車の数倍の速度で移動し、航空機を圧倒する対空・対地能力をもつ戦略兵器。
それがストライカー。俺はそのパイロットだ。
俺は如月銀二。日本軍ストライカー部隊、通称[第七機動歩兵中隊]所属。
ちなみに、階級は少尉。ストライカーにかけてはようやく訓練が済んだ程度の新人だ。
今俺は、愛機であるストライカー、Su-27J[舞鶴]のコクピットにいる。
周りでは砲弾が飛び交い、ストライカー同士が戦闘を繰り広げている。
<<アーチャー7、撃て!撃ちまくれ!>>味方が呼びかけてくる。
「り、了解!」操縦桿のトリガーを引く。刹那が右腕に持っている豊和工業製100ミリライフルが火を噴く。命中、敵機撃墜。
俺達の母国、日本国は現在同盟国であるアメリカ・ロシアと共に大型国際テロ組織との
対テロ戦争を繰り広げている。
近年に入って、アメリカはロシアとのいがみ合いをやめ、対テロ戦争のために同盟を組んだのであった。
そして俺達は今、戦場でテロ組織のストライカーと戦闘を繰り広げているという訳だ。
「アーチャー7、スプラッシュ1!(一機撃墜の意味)」
<<了解、攻撃を続行せよ!>>空中管制機から命令が下される。
「ラジャー!」俺はそう言い、トリガーを引く。
「うおぉぉぉぉ!」いつの間にか絶叫していた。
なぜ日本が戦争をしているのか、理由は簡単。テロ組織に攻撃されたからだ。
日本政府は憲法九条を改正し、対テロへ向けて準備をし始めた。
そして現在に至る。これが今の世界だ。
<<こちらブラボー6!レーダーが増援を確認した、これ以上の戦線維持は無理だ!後退の許可を!繰り返す、後退の…>>味方機は台詞を言い切る前に蜂の巣になった。
<<こちらアーチャー1、残っている味方機に告ぐ!撤退許可が下りた、後退しろっ!>>
アーチャー1、つまり俺達の隊長がそう告げる。
「キッド了解!」長ったらしいコールサインではなくタックネームで返答を返す。
数発ライフルを撃った後、俺は操縦桿の兵器システムをライフルからミサイルに変える。
両肩に装備した対ストライカー用ミサイルを起動させる。数機、敵をロックして、トリガーに
指を掛ける。ミサイルが発射され、敵陣に向かう。閃光、爆発。
<<撤退するぞ!ぼやぼやするなっ!>>隊長が呼びかけてくる。
「イエッサー!」舞鶴を高速移動モードに変形させる。体勢が低くなり、足の裏に付いている
タイヤが音を立てて回る。ライフルを撃ちながらバックする。
「何機残ってますか!?」無線機に叫ぶ。隊長が応える。
<<俺と、2、6、お前の四人だ!>>戦闘開始直後は12人いた中隊がいまはたったの4人だけ…?
「クソッ!冗談だろ…!」思わず罵倒を吐く。
<<怒ってる暇があったら生きろっ!>>左に隊長の舞鶴が現れる。
「畜生…!畜生ぉぉぉぉぉ!」
俺達はその後、無事に後方から来た味方機に助けられた。
けれど、同盟軍(アメリカ・ロシア・日本の三軍)の損害は大きすぎた。
今回の戦闘の死者は100名を超えている。だけど俺達は生き残った。
新人の俺でもだ…。運がいいとしか言えない。
これが、俺の初陣だった…。