表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/52

第43話 この世界を超えた法則や叡智

「行こう。エルフィ、先導を頼む」


「了解した」


 サラがみんなに号令をかける。エルフィはパーティの先頭に立って歩きだした。


「ルー君、ここからは可能な限り領域を展開し続けてくれ」


「うん、分かった」


 残った"獣"のメンバーのことを考えながら、サラの指示に返答する。


 七人……。既に三人、脱落者が出ている。誰だろう……エルフィに、いま残っている何人かの特徴を聞いてみようか?


 そこまで考えて、僕は頭を振った。


 ダメだ。余計な事に力や意識を裂くのはよそう。そもそも僕たちだって、そこまで安全に辿りつける保証はないんだ。


 僕は懐から白紙のマップを取り出し、方角とマーキングポイントを書き記していく。

 

 この白紙のマップを半日で踏破する想定でマーキングしろ。ただ確実に、帰路を示す図面に作り上げることだけを考えろ。


 領域を展開しながら、マッピングも同時に進めていく。


 僕がマップを走らせるペンの乾いた音と、時折空から聞こえてくる雷鳴だけが、僕らの耳を慰めた。



   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 移動を始めて一時間も経過しないうちに、それは空から襲ってきた。


 怪鳥ガルーダ。それも三匹!


「固まるな! 狙い撃ちにされるぞ!」



   GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!



 サラの警告と同時に、ガルーダの一匹が(いなな)いた。


 次の瞬間、曇天の空より落雷が落ちる。

 

 幸い誰かの上に落ちることはなかったけど、その衝撃で僕とアクシアが後ろへ飛ばされた。


 雷を司る空の怪鳥ガルーダ。かなり驚異のモンスターだ。それこそ、番人(ガーディアン)として配置されていてもおかしくないくらいの……。



   GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!



 最初に落雷を落としたガルーダとは、また別の怪鳥が吼える。


「そう何度も、やらせない!」


 怪鳥の咆哮に張り合うように、空に向かって僕も吼えた。

 

 吼えた怪鳥の周囲の"領域(テリトリー)"を、限界まで閉じる(・・・・・・・)

 

 その結果、落雷は発生しなかった。


 いま、怪鳥の周囲には精霊力が一切ない(・・・・・・・・)。そんなもの、僕が許可しない(・・・・・・・)



『 天空の暴君 蒼穹の断絶者 その微睡みの終焉を告げる 起きよ 目覚めよ 覚醒せよ 』



 祝詞の詠唱を開始する。


 三匹の怪鳥が旋回する、その遥か上。曇天が、より唸りを上げて閃光を(ほとばし)らせる。


 杖は置いてきた。もう、いまの僕には必要ない(・・・・・・・・・・)。詠唱を続けながら、右手を天にかざす。

 

 

『 太古より大地を撃つ閃光 聖櫃を穿つ遠雷 天地を引き裂く断空の極光を以て 支配の錫杖を振るえ 』

 

 

 いかに雷を得意とする怪鳥といえど──

 

 

『 ここ暁天の星を別つ 』

 

 

 これを受けて耐えられるか!!

 

 

『 雷帝(イヴァン)!! 』

 

 

 空が、光った。

 

 

   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 轟雷が天空に響き渡る。腹の底まで震わせる雷音が轟く。

 

 空一面が光った。この第七階層、暴風の荒野がどれだけ広いか分からない。それでも、その全域にいき亘ったのではないかと思えるほど、その光は鮮烈だった。

 

 三匹の怪鳥の姿はない。全て、消し飛んでいた。

 

「ふぅ……」

 

 とりあえず脅威が去ったことに安堵し、一息つく。

 

「ルー君……いまのって……」

 

 声がした方を見ると、驚いた表情で僕を見つめるサラがいた。

 

「いつの間にあんな……風水術かい?」


「うん。天変魔法じゃない。ただの風水術」


 ただの自然現象。特に術式による指向性は持たせていない。──まぁ、規模はかなり大きかったのと、自分たちに被害が及ばないよう別の処置(・・・・)は施したけど。


「たぶんここなら、次は祝詞なし、同威力で発現可能だと思う」

 

「しかもこの規模の威力が、魔力消費なしなのかい……」


 サラは一層その目を見開いた。

 

 この階層に満ちている風の精霊力の純度、容量なら、あの規模の"雷製"もさほど難しくない。それに──

 

「風の風水術に触っていたのと、天威無法(シャングリラ)を降ろした影響で、雷に対する適性がかなりついたのかもしれません」

 

 額に指を当てながら、少し目を回した様子でアクシアが言った。──多分彼女の耳には、あの雷音は辛かったかもしれない。

 

 風の風水術を使ってからこっち、上位元素の"雷"を生成する訓練を独自にしてきた。そして、天威無法(シャングリラ)の体験……。

 

 "雷"を操ることに関しては、大分理解(・・)できてきたと思う。

 

「それともう一つ。意図的に任意の座標にゼロ領域を展開できるようになりましたね?」


「ゼロ領域?」


「一切の精霊力を遮断した状態の事です。ガルーダの落雷を阻止した時。そして、自身の雷帝(イヴァン)を発動させた時──あれほどの雷光が、私たちのいる地上には一切届いてきませんでした」


「ああ、うん。それならやった。感覚で余波がありそうなのは分かってたので、それがみんなに届かないようにはした……けど……」


 自分で言っていて、ようやく、すごいことやってのけた自覚がでてきた。感覚的に疑問も抱かず、色々なことを実践しきった自分に、いまさらながら驚く。

 

「これって、天威無法(シャングリラ)を降ろした影響なのかい?」


「ほぼ間違いなく。天の扉を開かない限りは危険はないので大丈夫だとは思いますが、天威無法(アレ)に繋がった事により、この世界を超えた法則や叡智を無意識で知覚している……ということろでしょうか? 確証がある訳ではありませんが……」


 この世界を超えた法則や叡智……。

 

 なぜだろう……なぜか、その言葉を素直に納得できた自分がいた。

ここまでご覧いただき、ありがとうございました。

「面白い!」「続きが気になる」と思っていただけたなら幸いです。


ブックマーク登録や【☆☆☆☆☆】で評価ポイントを貰えると、より一層頑張れます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ