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TRRGプレイヤーズ~恋と、青春と、TRPGと、先輩と~  作者: 鏡読み
第六章 「賽の目ブルースプリング」

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第四十話「プールに行こう」

第四十話「プールに行こう」


「あー……つー……」


俺はゾンビのような独り言を呟き、最近よく待ち合わせ場所にしているY字の歩道橋で、珍しく加美川先輩を待っていた。


結局あのあとあまり眠れず、一時間ほど目をつぶり、仮眠を取ったということにして俺は待ち合わせ場所に行くことにした。


前回、前々回と遅刻を重ね、流石にこれ以上は遅刻できないと考えたからだ。


夏の太陽は今日も殺人的で、暦の上ではあと一、二週間もすれば、秋のはずなのに、空にたたずむソイツは空気を読む気がないとばかりに今日も強火で人を、地面を焼いている。


とにかく、くらくらするほど暑かった。


あまりにも暑いので俺は、スマホの天気アプリを見て現状把握に努めることにした。


今日一日は快晴、午後から四十度を超えるそうだ。絶対バグってる。


(しかし先輩もついてないよな……)


天気アプリからアプリを切り替え、先輩からのラインを見れば、電車が止まった旨のトークと、ごめんと可愛らしいペンギンが謝罪しているスタンプ。


ニュースサイトを開けば俺と先輩が使っている電車が人身事故だか、駅構内でのトラブルがあった速報の記事があり、運悪く先輩がその影響を受けてしまったらしい。


(かと言って俺も徹夜……というかほぼ完徹だし……)


仮眠時間1時間でこの猛暑は流石に死んでしまうだろうと、俺は他人事のように現状をぼんやり考えていた。


現に地面がぐらぐら揺れている。


喉元過ぎれば熱さもまた涼しいだったか、背筋に寒気が走る。


(あ、あ、やば、これ熱中症じゃーー)


「ーーサク君、お待たせ。って!? さ、シャク君! ……サク君、大丈夫?!」


物凄く遠いところから、先輩の声が聞こえた気がしたので、俺は重たい手をなんとか持ち上げて先輩に返した。


「……へ、ヘルプです。涼しいところに……」


びっくりするほど、ゾンビのような声だった。


ゾンビというかミイラかも知れないと、飛び飛びの意識が、訳のわからないことを提示しつつ俺は膝を折った。


石畳に触れた部分がが熱かったが、いまはそんなことよりも、ここから離れないと死ぬ。


「マクドナ行きましょう。荷物持つから早く。立てる?」

「はい……」


俺は、先輩に荷物を持ってもらいマクドナへ緊急避難を開始した。


歩くこと三分、Y字の歩道橋のすぐそば、我ら学生の利用率ナンバーワン、マクドナの中はまさにオアシスであった。


俺は涼しい冷房の効いた店内に安堵し、四人がけの席を陣取り、机の上で溶けるように上半身を預けた。


「サク君、大丈夫? お茶だけど飲める」

「ありがとうございますー……」


顔を起こす気力もない。

だがせっかく先輩が買ってきてくれた水分だ。

俺は精一杯の力で体を起こしお茶に口をつけた。


どっと体から汗が噴き出す。

よく冷えたお茶は体に活力を戻してくれた。


「もう、そんなにフラフラになるまで待たなくても、連絡入れるとかあったでしょ」


先輩は口を尖らせたように怒りのセリフを並べてくる。


「はは、すみません。寝不足でうっかりしてました」


その後、お茶を補給し、九死に一生を得た俺は先輩にめちゃくちゃ怒られた。


さて、体力が比較的回復し、寒気も落ち着いたので、俺はプールに参加することにした。


バスに揺られること40分、着いたら先輩が起こしてくれるとの好意に甘えバスの中でぐっすり眠らせてもらった。


先輩に起こされ目を覚ますとバスの窓から大海原が見え、俺は海水浴とプールを間違えたか、または夢でも見ているのかと自分の頬をつねった。


痛かったので夢じゃないようだ。


「何してるのサク君」

「いや、なんか夢でも見ているんじゃないかなって」


隣の席の加美川先輩か呆れた顔になる。


今日の先輩は薄い水色のワンピースに白いサマーパーカーを羽織っている。

珍しくスカート丈が短く、膝より上もよく見える。


いや、まあ、今は水着や着替えが入っているだろう鞄を膝の上に乗せているので実際にはよく見えていないのだが。


『ーー次は終点。本日はご利用ありがとうございました』


終点を告げるバスの運転手のアナウンスに従い、俺と先輩はバスから降りた。気がつけばバスの乗客は俺たちだけだった。


「ここが待ち合わせ場所ですか?」

「……ホテルよね?」

「間違いなく、ホテルですね」


バスから降りた俺と加美川先輩は目の前の建物に唖然とし、もう一度スマホを開き、須山さんからもらった案内を確認した。


場所は合っている。

たが、ここはどう見ても、海辺が一望できる、オーシャンビューを売りにしてますと言わんばかりのホテルではないのだろうか。


見れば三階建ての白塗りの建物、学校ほどの大きさがあるだろうか、泊まるといくらになるのかわからないが、学生が来る場所ではないことはよくわかる。


蝉がどこからか、俺たちの夏は終わらないと、叫んでいる。


全世界男子に問いたい。

女性と一緒にホテルに入るってなんか緊張しませんか?

俺はします。今しています。


しかしながら今日の最高気温四十度を予測された夏の太陽は、容赦なく俺たち襲いかかる。


北風と太陽の話があるが、現代社会においては太陽でさえ、俺たちの服を脱がせることはできない。なぜなら冷房の効いている建物に逃げ込めるからだ。


(熱さのせいでだいぶ思考がバグっているな)


俺は再び膝を折る前に先輩を促し、ホテルの中に入ることにした。


「……とりあえず中に入って待ちません?」

「そうね」


俺の意を決した提示を先輩はすんなり承諾した。


二人してホテルの中に入ると、受付とラウンジ、そしてラウンジのソファに座り、浴衣姿でくつろいでいる須山さんに出会った。

城戸も一緒みたいだ。黒を基調とした服を来て、須山さんの隣で頭を抱えている。


「あ、二人とも! 待っていたわよ!」

「須山さん、その恰好は?」


加美川先輩が須山さんに疑問を投げかける。


「何って私とノボルで一泊このホテルでお泊り旅行」


須山さんはケロリとそう返した。


「お、お泊り旅行……だと……!」


流れ弾を受けた俺は恐れおののいた。

彼氏と彼女がホテルで一泊何かが起こるわけでもなく……。

俺は頭を抱えている城戸を見た。


前髪で表情が隠れているが、苦悩に満ちた雰囲気の彼を見ていると、どうやら大人の階段上られてはいなさそうだ。


大方徹夜でゲームでも遊んでいたのだろう。


そういうことにしておこう。


して、あげよう。


お知らせ】TRPGプレイヤーズ、本文10万文字突破しました!

文章書き始めてからどれだけ書いても10万文字にとどかなかった私がついに10万文字という数字に手が届いたので、嬉しい限りです。


これも読者様が読んでいただき、ブックマークや評価、感想、レビューなどを残していってくれたおかげです。とても力になっています。

ありがとうございます。


構成的にはあと20話ぐらいでしょうか。たぶんそれぐらいのつもりです。

年末までに時間が取れれば何とか書き切りたいですね。やりたいことは一応決まっているつもりです(笑

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