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TRRGプレイヤーズ~恋と、青春と、TRPGと、先輩と~  作者: 鏡読み
第四章 続・TRPGの日 シティアドベンチャーをしよう

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第三十三話「反省会と二つの誘い」

第三十三話「反省会と二つの誘い」


時刻は17時を回っていたが、空はまだ明るい。

第二回セッションを終えた俺たちは公民館をでた。


セミなのかひぐらしなのかわからない謎の子孫繁栄に命を費やす虫の叫び声が聞こえきて、俺はぼんやり「ああ、夏なだなぁ」とジジ臭い考えに浸っていた。


そのままみんなと歩くこと十分ちょっと、前回と同じ喫茶店に入ることになった。


席に案内され、男子3、女子3にテーブルを分けて座る。各自飲み物を頼み、ワイワイと今日の話が始まっている。


俺はといえば、凹んでいた。


今日のセッションは反省点がありすぎる。

用意したルールが想定外の使い方をされ、安易に用意したキャラの能力の把握を怠る、ボス戦に至っては不意打ちであっさりまる焦げだ。


(流石にこれじゃ、楽しく遊べたかは分からないなぁ)


ため息を吐き、コーヒーを啜る。

苦味が口の中に広がり、陰鬱な気分を紛らわせる。


「佐々倉、どうした?」


向かいの席に座る宇和島先輩から声がかかる。

浮かない表情になっていたのだろう、盛り上がっている場に水をさしてはいけないと、俺は慌てて表情を直した。


「いや、今日上手くいかなかったところ多かったんでちょっと反省していただけですよ」

「そうか? 楽しかったぜ、今日のセッション」


眩しい笑顔で、真っ直ぐな言葉を繰り出してくる宇和島先輩に、俺は目が潰れそうになる。


本当に同じ人間かこの人は。


「城戸はどうだった?」


宇和島先輩は、城戸にも話を振る。


「楽しかったです。ただちょっと」

「ちょっとどうしたんだ?」

「ズルというか、話に引きずられたというか」


宇和島先輩が疑問符を浮かべる。


城戸は誰かになりきってしまうと、須山さんは言った。

確かに最後の彼のセリフはまさしく俺の考え方だった。


「別に、演劇だってそうだろ? 男女の主演が登場人物にひきづられて付き合い始めたなんて話、しょっちゅうきくぜ」


特に問題ないと返す宇和島先輩。

ただ、納得には届かないのか、曖昧に相槌を返えしている。

俺も混ざろう。


「ズルというのも、俺のシナリオの展開や内容を予測しきった話だろ? だったら気にすることはない」


目の前でやられた時はびっくりしたが、なんてことはない。俺だってダンジョン進んでいるとき、分かれ道がきたらこのクリエイターならどうするとか考えるし。

ゲーマーあるあるだ。気にしなければいいと俺は城戸に言った。


「まあ、もし、次もそうできてしまうのなら、うまいこと使って城戸が活躍すればいい話じゃないか」

「……うん、そうだね」


少し間があったあと、城戸は頷いた。


「……ちょっと、いい?」


少し離れた隣の女子卓から、黒木さんがこちらにやってきた。


「どうしたの? うわっ!?」


俺は黒木さんの方へと振り向くと、目の前に印刷された短冊を突きつけられた。


「……これ、見にきて欲しい」

「なに……チケット?」


見ればその短冊は高校演劇全国大会、夏予選と書かれたチケットであった。


「演劇にも全国大会とかあるんだ」

「……私もこの間、初めて知った」


おおい、演劇部さん?

でも舞台演劇か。最後に見たのは小学校の謎の団体から配られた「オズと魔法使い」とかいう話の奴だったけか。途中ブリキのロボから火が出た時は恐れおののいた。あのシーンだけが妙に頭にこびりついている。


それに最近漫画やアニメが原作の舞台も増えてきているし、これを機会に見聞を深めるのもいいかもしれない。


黒木さんと宇和島先輩のおかげで、我が校の演劇部の実力にも興味があるし。


「わかった。見にいく」

「……必ずきて」


俺は黒木さんからチケットをもらう。

心なしか彼女が微笑んだような気がするが気のせいだろう。


「そういえば、宇和島先輩も出るんですか?」


ふと思い俺は宇和島に聞いてみた。

先輩は珍しく目を見開いて、驚いたあと、躊躇いながら口を開いた。


「俺は……出れない。ほら、三年だし受験あるんだわ」


どこか言い澱みながら喋る先輩。

受験ならば仕方ない。趣味よりも将来のことが大切だ。


でもものすごく出たいのだろう。

先輩の言葉から、そんな雰囲気が伝わってくる。


(セッションのときも、演技している時はたのしそうだったし、よっぽど演劇が好きなんだろうな……)


好きなことが義務だのなんだのでできなくなるのは辛いと思う。


俺はせめてものと思い、先輩に声をかけた。


「でしたら、次のセッションでもまた最後のシーンみたいなシェイクステア頼んますよ」


俺の言葉に、宇和島先輩は一度目をしばたかせた後、カラカラと笑い、その眩しい笑顔のまま、俺に短く言葉を返した。


「おう、まかせとけ」


話がひと段落したところで、今度はダンと、男子組が使っているテーブルに短冊が叩きつけられた。


須山さんである。

いま、女子たちの間では短冊がブームなのだろうか?


「さて、もう直ぐ夏休みだからプール行きましょう!」


俺は状況についていけず、停止した。

宇和島先輩はカラカラと面白そうに笑った。

須山さんの彼氏の城戸ノボルくんは頭を抑えた。


「誰と誰が?」


俺の口から物凄い変な質問が出た。

事態を理解しようとした俺の脳みそが言葉を絞り出した結果だった。


須山さんは「まだ、分からないのかこのチケットの枚数をみろ」とよく聞こえる独り言を吐き出し、メガネをグイッと持ち上げ、手を軽く広げ、ワイングラスを指で挟み持つような形を作り、上から下に振り下ろし、さも大ごとのように声を張った。


「ここにいるみんなよ!」

「な、なんだってーー!?」


そのポージングを前に俺だけ叫んでしまった。

誰もこのネタについてこなかったのはとても悲しかった。


俺の声は虚しく響いた。

この小説の四コマ漫画作るのに浮気していました。すみません、自作品を盛り上げたくて、出来心でつい……。


更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

まだまだ頑張ります!

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