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11、助けにきてよ

──ギッ!


──ギィギィ


 背中には倒木、前方には中型犬位の大きさの魔物が五匹。

逃げ場はない。


 そんな絶体絶命にも関わらず、私の頭は授業で習った光景が駆け巡っていた。

この魔物は確か、ネズウサギだっけ……弱いけど群れで襲ってくるから厄介だって教わったな。

私の魔力に対してこの数では、この魔水晶があったとしてもどの道勝てないだろう。


──ギギッ!


 突然、ネズウサギが一斉に長い耳をピンと立たせた。


「どけよおらぁぁーっ!」


 ドゴンッ!


 聞き覚えのある怒号と共に爆音を響かせ、何かがネズウサギと私の間に割り込む形で飛び込んできた。

かと思えば、ブシャッと二匹のネズウサギの首がはね飛ばされる。

ちょ、グロ……っ、


「フレイム!」


 凛とした声と同時にゴアッと炎が辺りに広がり、あまりの熱風に思わず目を閉じた。

次から次へと、何事!? 救助が来たの!?

フレイムなんて中級魔法を無詠唱で発動出来るって事は、先生か騎士団の人だろうか。


──ギギッ! ギッ!


 焦げ臭い臭いが鼻をつき、残りのネズウサギが炎に驚いて逃げていく音が聞こえる。

って臭っ! え、いやほんと臭っ!


 パチパチと炎の勢いが治まるのを感じ、私は恐る恐る目を開けた。


「……ぇ、」


「よぉ、大丈夫かラズリー!」


「やっと見つけたわ。怪我はないかしら?」


 そこには剣を構えた剣五(パースパーダ)君と、同じく杖を構えた七美(フュベルダ)さんが私を見下ろしていた。

え、ちょっと待って。

凄く嬉しいんだけど予想外すぎる顔ぶれで理解が追い付かないわコレ。


「ど、どうして二人が?」


「ヘッヘー、俺らはこいつのワガママに付き合っただけだぜ!」


 よいしょ、と後ろを向いた剣五(パースパーダ)君の背中には喜六(ニコスィス)君がおぶさっていた。

居たんかい!

そう叫びたかったけど、私の口からは潰れたカエルのような声しか出なかった。


「ぅ゛ぁ、ニ゛ゴズィスぐ……」


「……んー? あー……良かったぁ、ラズリーさん見つかったんだー……元気ぃ?」


「はひ、元気でふ……」


 気の抜けた質問が彼らしくて、ただでさえ弱っていた涙腺が一気に崩壊してしまう。

大して私と変わらないだろう戦闘力のくせに、何なんだこの安心感は。


 剣五(パースパーダ)君は喜六(ニコスィス)君を抱え直しながら「こいつかなり無理したかんな。褒めてやれよー」とニヤニヤした笑みを浮かべている。

?……何かしてくれたのだろうか?


「お話は後にしましょう。今は一刻も早く皆の所に戻らないと」


 七美(フュベルダ)さんがまだ半ベソをかいている私の手を引いて立たせてくれた。

行動がイケメンな美人ってズルい。普通にときめいた。


「だな! 俺ら待機命令無視して抜け出して来ちゃったし、戻ったらラズリーも一緒に怒られようぜ!」


「えぇぇ、大丈夫なのそれ!? なんか私のせいでゴメン!」


 申し訳なくて別の意味で泣きそうだ。

謝りながら三人の後をついていくと、ガサガサと茂みの向こうから魔物の気配が近付いて来るのが分かった。

嘘でしょ、まだ来るの?


「チッ、次から次へと邪魔だおらぁー!」


 剣全体に炎を纏わせた剣五(パースパーダ)君が茂みに向かって斬りかかる。

人一人おぶってるとは思えない動きだ。

身体能力上昇の魔法でもかけているのだろう。


「悪しき魔物よ消え去りなさい、イレイサー!」


 七美(フュベルダ)さんも負けじと魔法を発動したかと思えば、茂みから飛び出てきた魔物が跡形もなく消えてしまった。

何だこのビックリ人間兄妹。

消去魔法(イレイサー)なんて上級魔法、ただの学生が使える筈がない。


「す、凄い……」


 怒涛の攻撃が炸裂し、あっという間に前方に道が開けた。


「よし、早く戻るぞ! これ以上は流石にやべぇ!」


喜六(ニコスィス)兄さん、大丈夫かしら? 死ぬ時は早めに言ってね」


 焦りを感じさせる二人の声につられて喜六(ニコスィス)君を見た私は言葉を失った。

彼の顔からは完全に血の気が失せ、玉のような汗が浮かんでいたのだ。

寝ているのではなく気を失っているのかもしれないと思う程憔悴している。


「やだ、どうしたの喜六(ニコスィス)君!?」


「…………んー…………ラズリーさんは平気ー……?」


「あれ、こんな時にも噛み合わない!?」


「……良かったねぇー……」


「いや、何が!?」と突っ込みながらドタバタと走り、皆が待機するキャンプ地を目指す。

何が何だか分からないが、どうやら剣五(パースパーダ)君達が魔法を発動すればする程、喜六(ニコスィス)君に負担がかかっているようだ。


 必死の思いで森を抜けた私達は、キャンプ地周辺を捜索していた冒険者の方々に無事保護された。

私が思っていた以上の大事になっていたらしい。


 途中から完全に意識を失っていた喜六(ニコスィス)君が別室へ運ばれていくのを横目に、私達三人は先生方から大目玉を食らってしまった。

正直、お説教の内容は覚えていない。

ただ、当時はっきりと感じたのは「私のせいで彼らをこんな目に遭わせてしまったのだ」という罪悪感であった。


いつもの補足↓↓


「やだ、どうしたの喜六(ニコスィス)君!?」→「んー(大丈夫だよ、ありがとう)ラズリーさんは平気ー……?」


「あれ、こんな時にも噛み合わない!?」→「(喋る元気あるみたいだね)良かったねぇー(安心したよー)」


こんな感じでした。

伝わる訳がない。

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