第四話 帰郷
埼玉に本拠地を置く、バスケットボールのクラブチーム“埼玉ブルーブレイズ”
ブルーブレイズは弱小チームに成り下がってしまい、年々収益も落ち、チーム存続の危機にさらされていた。
そこに属する八十順平という選手は、低迷するチーム事情を打開するため、幼馴染みである本条蔵之介をスタッフとして、チームへ招集した。
教授とのやり取りがあってから二週間後、本条蔵之介は原動機付自転車に乗って、仙台から埼玉県県内にある実家へと帰宅した。
「ただいま〜。」
蔵之介は家に家の中に入るとすぐさま、グロッキーな状態になり、リビングに行って椅子に腰を下ろした。
「あら、おかえりなさい…って、どうしたの?かなり疲れてるようだけど…」
帰って来た蔵之介に気付いた母親が、リビングへとやって来たが、蔵之介の様子をみて心配そうに声をかける。
「いやぁ…いくらまだ若いとはいえ、仙台から原付で16時間かけて帰って来るのは流石にこたえるよ…」
「じゅ!?なんで、新幹線で帰って来なかったの?」
「本当はそうしたかったんだけど、今回はちょっと動き回れる足が必要になりそうだからね。それに、俺が乗ってる原付は燃費が良いからかなり交通費が浮いて助かるんだ。」
「そうなの?でも、あまり無茶をするものではないわよ。」
「はいはい。」
母親と他愛のない話しているうちに、父親が仕事から帰って来た。
「ただいま…おっ、蔵之介。帰ってきてたのか。」
「うん。ついさっきね。さてと、二人とも揃ったところだし…」
蔵之介は立ち上がる。
「父さん、母さん。急で申し訳ないですが、埼玉県でインターンシップを受けることになりましたので、しばらくやっかいになります。」
蔵之介は両親へ頭を下げる。
「ここはあなたの家でもあるんだから、そういう事を一々言わなくていいのよ。」
「そうだぞ、蔵之介。俺たちは家族なんだ。そんな他人行儀をするんじゃない。」
「ごめんごめん。つい、何か言っとかないとまずいかな?って思っちゃって。」
「まったく…まぁいい。それより晩飯にしよう。お腹が空いてしまった。」
「はいはい。すぐに支度しますからね。」
「久々だなぁ。母さんの飯が食えるのは。」
そして、蔵之介は家族との食事を楽しんだ。
翌日、蔵之介は入間市内にあるショッピングモールのスポーツブランドの店へと訪れており、バスケットシューズが陳列されている棚の前に佇んでいた。
「う〜ん…」
蔵之介は棚の上に置かれたシューズを無作為に手に取って、すみずみまで見ては元の位置に戻すといった事を数回繰り返していた。
「…よし、これにするか。」
ようやく買うシューズを決めると、買い物籠に入れた。
「あと、シューズケースも買っておくか。」
シューズを入れる用のナップザックも買い物籠に入れるとレジへと進み、列の最後尾に並んだ。
(ジャージは…家にあるやつでいいか。多分、基本はスーツだろうし。)
インターンでの服装を考えていうちに、レジの順番が回ってくる。
「いらっしゃいませ。ご自宅用ですか?」
「はい。」
「かしこまりました。」
店員はシューズとナップザックのバーコードをレジに読み込ませた。
「お会計が9,350円になります。」
「じゃあコレで。」
蔵之介は、店員にクレジットカードを渡す。
「お支払い方法は?」
「一括で。」
「かしこまりました。」
そして、会計を済ませた蔵之介は店の外へ出てきた。
「ありがとうございました!」
「さて…まだまだ見なくては行けないのもがあるな。
その後もしばらく買い物が続いた。
(シャツとネクタイを新調しなくては)と思えば紳士服店に立ち寄り。
(時計もスポーツタイプに変えておくべきか)と思えば時計店に立ち寄り。
(あぁ、そういえば関係ないけど)と思えば蔵之介が好きなブランドのアパレルに立ち寄ったりと、案外エンジョイしている蔵之介であった。
そして、なんだかんだで二時間ぐらい時間が経つと、必要なものをあらかた揃えることができた。
(だいたいものか…)
いつの間にか、両手には複数の買い物袋を持っていた。
(うーん。買い過ぎたか?まぁ、いい。少し疲れたからどこかで休むか。)
蔵之介はふらっと近くにあったカフェに入り、すぐさま注文口へと近づく。
「いらっしゃいませ。」
「えーと…ハワイコナのレギュラーサイズをホットで。」
「かしこまりました。店内をご利用ですか?」
「ええ。」
「では、料金は495円になります。」
「コレで。」
カフェでもカードで支払うと、カウンターでコーヒーを受け取り、テーブル席に座った。
「ふぅ…ようやく落ち着いたな。」
しばらく、カフェでくつろいでいたが、突然スマホに着信が入る。
「ん?あぁ、八十からか。」
蔵之介は電話に出た。
「もしもし。」
『よう、蔵。埼玉に帰ってきたんだって?』
「ああ、昨日な。」
『今どこに居るんだ?』
「入間だ。」
『入間?あぁそうか、あそこのショッピングモールでシューズを買いにいってるのか。』
「まぁな。」
『そうか…ちょうどいいか。』
「ちょうどいい?何がだ?」
『なぁ、良かったから今から家へ来ないか?』
「お前ん家?あぁ、そうか…結婚してから所沢に引っ越したんだったな。」
『どうせ、帰りに所沢通るんだろ?』
「ああ…」
蔵之介は少し考える。
「…そうだな。久々に奥さんの顔も見たいから、寄らせてもらうよ。」
『よし。じゃあ、また後でな。』
「おう。」
蔵之介は通話を終了して、スマホをポケットの中にしまった。
「さて、流石に手ぶらだとまずいから何か買ってから行くか。」
そう言うと、カップの中に残っていたコーヒーを一気に飲み干し、カフェを後にすると、某有名お菓子メーカーでチョコレートを購入して、八十順平の自宅がある所沢へと向かうのであった。
いやぁ…すっげー久々に更新したな。
まぁ、誰も期待して待ってないから別にいいよね?←