ディア
雨が
等速終端速度
落ちて波紋を
/
ちゅー
キャラメルフラペチーノ
怠惰な日常
/
人間にしか出来ないこと
愛のプログラム、シュミレーション
母親の愛ってそんなもんだろう
我が子のためって、つまり身勝手だ
だけどそれも悪くないなと思っている
君の目には、どういう風に映っているんだろうね、
写真でも撮ってみる?
僕のプログラムは、極めてオリジナルに誠実さ。
無数にある選択肢を選び続けて生きている。
僕は今、あるはずの2020年を曲げて生きている。そのひずみは、至る所に出てくるんだよ。君が色々なことを忘れていっても、不思議じゃない。
四番目の試作品だから、ディー。
産みの親は、科学者としての成功と引き換えに人の形を失った。わかる?
人の想いって浅はかで身勝手で、悪意がないだけ扱いが難しい。君が医者なら、最愛の子を難病で失いかけている両親の涙を見れば、気持ちを想像すれば、最善を尽くしたいと思うだろう。なら、君が特殊な力を得た科学者ならどうだろう。子を亡くした親のためにコピーを提供する、恋愛で失敗した女性が自殺を企んで彼女を救う伴侶を作り出す、そういう力を持ったなら。
僕に言わせれば、それは神の領域であって人に耐えられるポジションではない。神様が全ての願いを叶えてくれないのは、それで世界の均衡が崩れるから。
願いは何かと引き換えに叶うもの。見えないようでいて、ぜんぶ釣り合いが取れてるんだ。
よくわかんないよ。ディーの言うことは難しい。
劣等感のかたまり
図書館にいく
心理学興味あるの?
思念みたいなものだからね、まあ害のない幽霊だとでも思ってくれたらいいよ。
統合失調症だと言われた。あり得ない脳の幻想だと。そう言われてしまえば、確かに彼がいたのだと自信が揺らいだ。
わかる?体温がないじゃない?僕の大元は、思考するコンピュータだ。
そうかな。ディーの手はあたたかいよ。悲しい人が目の前にいて、あたためることが出来る。私の手と、ディーの手、どうちがうの?
……そうだな。あなたはそういう人だった。忘れていた。
どんな人生も必要だから存在している。優劣や点数、ランクは後付けのもの、世間さまが勝手に考えるものだ。ランクが低いから価値がないって訳ではない。世界の均衡を保つために、全て必要。
よくわかんないよ
振り子時計わかる?
昔見たことある。おばあちゃん家にあった。
そう。あれの振り子を思い出してほしい。左右に振れるその動きね、右に行って止まる、左に向かう、止まる、右に向かう。左右端で止まった状態から真ん中に戻る時、復元力が働くんだ。元に戻そうとする力。
復元力があるから、振り子は振られ続ける。
同じようなもの。世界は絶えず有るべき中心に向かって振動する。全ての物体に復元力が働くし、それを各々何と呼ぶかは別として、誰もその原理原則からは逃れられない。
私も?
そーね。あなたも。
をあげよう。どんな使い方でも出来る。
どうしてあんな大事なこと、忘れていたんだろう。彼はいなくなった。私は最後のケンカをずっとずっと悔いていた。最後にした約束は、私の生きる理由になった。
誇りに思える自分になれたら。
そうして思い出した約束と引き換えに、私の記憶から何か静かに零れ出していくような感覚。
なんだか心が騒がしい。私はこの部屋に独りで住んでいただろうか。
でも同居人の名前すら思い出せないっておかしい。出来の良い夢を見た、砂の零れ落ちる朝のように。