要塞と艦隊 6話
「……?」
目を開けると。
夢が覚めた?
などと淡い期待があったが
学校の保健室とは言わないが、なんとなく医務室めいた雰囲気の部屋だった。
もちろん俺の部屋ではない。記憶にない場所だ。
現実に立ち戻り、どっかの病院に収容されて目覚めたとかならば幸いなのだが。
室内を照らす穏やかな照明が天井部分をすべてを発光させるとかあまり現実では見たことない方式であることや、俺が横たわっているベッドと思われる物体も。なんだか見たことのないデザインだ。
俺の知らない、最先端医療とかのオチだと嬉しいのだが……。
「なんだか目覚めると、ベッドの上とか多いな……」
隣にあられもない姿の美女とかいるのなら良いのだが。
とりあず命があるだけ良しとしよう。
いったい、あれから何がどうなったのか。
ラグナロクは? 襲ってきたホブゴブリンとかは?
「うーん。体は何もないみたいだな」
見慣れないベッドの上で腕を回してみたりしたが体に不調は感じない。
それに、幸い今回はパンツ一丁ではなく。
なんだか高級ホテルのバスローブのような服を俺は身につけていた。
唐突に室内の壁の一部が開き、なぜかドヤ顔のラグナロクが入ってきた時点でもう俺は諦めた。
そう諦めた。
夢とかそういう生易しいものではなく、なにか途方もない厄介な状況に俺は陥っている……。
考え方を変えれば、得難い異世界転移のような経験をいま俺はしている。
「おはよう。マスター。気がついた?」
「……おは、よう」
……喜びは味わえなかったが。